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234.立ち向かうサィード

 別に武器が無いからと言って、サィードは全く戦えない訳では無い。

 騎士団仕込みの体術と我流の体術をミックスさせた戦い方だって出来るし、ハルバード以外の武器だって使えるので、とりあえず今しがた牢屋に放り込んでおいた男の持っているロングソードを拝借して進む。

 地下牢獄の中にはさっきの男の仲間が居る可能性が高い為、サィードは用心しながら急ぐ。

 実際途中で何人かの部下とエンカウントしてしまったのだが、サィードはその度に隠れてやり過ごしたり、または相手の頭を壁にぶつけまくってノックアウトして難を逃れる。

 ここで無駄なエネルギーを消費する訳には行かなかった。

 自分にとってはここからが改めて本番だろうと思うサィード……だが。


「おい、何だおま……ぐお!!」


 さっそく内部の敵に見つかった。

 勿論サィードもはなっからバトルを覚悟していたので、援軍を呼ばれる前にさっさと男の心臓をロングソードで一突きして黙らせる。

 見つかったのであれば、もう遠慮する必要も躊躇する必要も戸惑う必要も無い訳だ。

 通路を曲がった所に居る男が彼に気づいてナイフを振り被って向かって来たので、先にそれをロングソードで弾いてから、自分の鍛えられた強靭な体躯で男の身体を持ち上げて地面に投げ落とす。


「ねえねえ、何……ぐぇ!?」


 その異変に気がついた女がそばのドアからダルそうに出て来たので、そのままダルくなっててくれとばかりに、サィードは通路側に外開きをするタイプのドアを全力で蹴ってドアに女を挟んで気絶させた。

 地下牢獄の通路はお世辞にも広いとは言えないので、前後を囲まれてしまえばそれだけで逃げ場が無くなってしまう。

 それだけは避けたいので、サィードはさっさと自分の仲間である四人の女達と私物を探し出す事を最優先に考える。


(最後に脱出する時が大変そうな気がしないでも無いんだけどな)


 脱出するまでがこのミッションの全部だ。

 ギルドから依頼された訳でも無ければ、別に金銭面での報酬がある訳でも無い。

 しかし、これはサィード自身が絶対にやり遂げなければならないミッションである事には間違い無かった。


「ふあ~ぁ……んっ……?」


 その時またもや、ダルそうに通路のそばのドアから出て来た男がサィードの行く手を阻む。

 今度はドアを蹴り飛ばす前に通路を塞いで男が立つ構図になったので、ダルそうな上に眠そうなその男の意識が回復する前に男の腹を蹴る。


「おらっ!!」

「ぐぅえ!!」


 前屈みになった男のアゴを、自分の左手を固く握って作った拳を利用して思いっ切り下から上へと殴り上げる。

 意識が一瞬飛んだその男の懐に飛び込んだサィードは、先程地面に投げつけた男と同じく大柄な自分の体格を活かして男を持ち上げる。


「うおらああああ、ああっ!!」


 通路を絶叫しながら走り抜け、突き当たりの金属製の大きなドア目掛けて男の身体をブン投げた。


「なっ、何だぁ!?」

「てめぇ……さっき連行されて来た銀髪の奴か!?」


 ドアの先にあった部屋の中では、いかにも柄の悪そうな男も女も関係無い人間が色々な作業をしていた。

 一人の男が発したセリフによると、どうやら自分がここに連行されて来た事は敵全体に知れ渡っている様だと把握する。

 その時サィードがふと壁の方を見てみると、そこには恐ろしい事実が記載された張り紙が貼ってあった。


『今月のエネルギー生成ノルマ:人間二百人分』


 それを見た瞬間、サィードの中で自分の何かがブチッと音を立てて切れる。

 何を意味しているのかは分からないが、少なくとも人間の命を奪う様な何かをしているのだと直感で分かってしまったからだ。


「てめぇ等……人間の命を何だと思ってやがるんだあああああああああああ!?」


 何かに切れてしまったサィードは、最初に向かって来た近くの女に対して思いっ切りハイキックで顔面を蹴りつけてノックアウトさせる。

 女の身体から力が一気に抜けて、後ろに向かってゆっくりと倒れ込んだ挙句に物凄い音を立てて後ろにおいてあった木箱を粉砕して気絶した。


「てっ、てんめえええええええっ!!」


 残っている男女が作業を中断して一気に襲い掛かって来た。

 それでもサィードは怯まず、次に向かって来た男に向かってジャンプしてドロップキック。

 ぶっ飛んだ男には目もくれず、右からやって来た男の顔面に右回し蹴り。

 その勢いのまま三人連続で右回し蹴りを食らわせて一人ずつノックアウトして行く。


「くっ……!!」


 女がナイフを振り被って向かって来たが、さっきと同じくロングソードを振るって弾いてから女の身体を持ち上げて、その後ろから走って向かって来ていた男に向かって投げつけて纏めて倒す。

 作業の為にテーブルや木箱等が所狭しと並べられており、それで敵の集団の移動が制限されていた事がサィードにとっては好都合だった。

 しかし、まだ他にも敵は居る。

 その証拠に部屋の奥には別の牢獄区画に続くドアが設置されており、その奥からもバタバタと慌ただしい音が聞こえて来るからだ。


(こうなったらとことんやってやんぜ!!)


 もう戻れない。後戻りする事なんて出来やしない。

 サィードはロングソードを構えつつ、そのドアの奥の通路に向かって駆け出した。

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