表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

233/875

230.連れて来られた場所

「……はっ!?」

「お目覚めかな?」


 デジャヴな光景。

 レウスが目を覚ました時、そこは全く見知らぬ場所の見慣れぬ光景だった。

 自分はあの時、腰に強い刺激を受けてそのまま地面に向かって倒れる感覚を最後に意識が吹っ飛んだ。

 そしてこうして目を覚ましてみると、四方八方から光の刺激が襲って来る。それも白ばかりだけではなく、緑やピンク等の刺激が強い色の光もある。

 一体ここは何処で、自分はどうなってしまったのだろうかととりあえず状況判断の為に起き上がってみようとしたものの、その瞬間手首と足首がガチッと誰かに押さえつけられる違和感を覚えた。


「ん!?」

「勝手に動かれたら困るんでね。ちょっとばかし拘束させて貰ったよ」

「お、おい何だこれは!?」


 何とか動かせる胸から上で周りの状況を見てみれば、手首と足首のそれぞれ両側に金属製の輪をつけられている。

 しかも鎖で何処かから伸びている輪ではなく、自分が寝ている寝台の上に下半分を埋め込まれているので引きちぎる事も出来なさそうである。

 この部屋の中はレウスがまるで見た事の無い設備ばかりであり、何処かの風景が映し出されている箱の様な物があったり、変な突起が沢山ついている小物があったりと分からない事だらけである。

 しかしそれ以上に訳の分からない事は、自分が寝ている寝台の周りに居る人物達の顔ぶれだ。


「やっぱりお前達が絡んでいたのか、セバクターにヴェラルにヨハンナ……」

「……」

「最初から俺達はこっち側の人間なんだよ」

「そうよ。私達は貴方の力が必要なの。この国に協力すれば今までに見た事の無い程の報酬が貰えるのよ。だからその為に貴方をここまで連れて来たって訳」


 セバクターは元の性格もあるのだろうが、黙ったまま何も言葉を発しない。

 それに対してヴェラルとヨハンナの赤毛コンビは、レウスをここまで連れて来た理由を簡潔に説明した。

 そしてここに居るのはこの三人だけでは無く、今まで見慣れた人物と見知らぬ人物達が他にも揃っている。

 まず、自分達のパーティーに入りたいと頼み込んで実技試験を受けさせたものの結局不合格になってしまった、サィードから二枚舌と呼ばれ続けていた傭兵のコラード。

 それから緑髪で体格が大きな、黒いローブ姿の魔術師らしき大男。その隣には銀髪を逆立てている細身で背が高めの男。どちらも若い。

 最後に、何とあの転移した先で出会った黒髪の魔術師もここに居るではないか!


「くそっ、お前達……俺をここにこうやって連れて来て、一体何をさせるつもりなんだ!?」

「色々だよ、色々」

「だからその色々の中身が分かんないのが不安なんだよ! 何をどうするつもりなんだ!!」

「そんなに教えて欲しいか? だったら僕よりもこっちのドミンゴの方が説明上手いから教えてやってよ」

「かしこまりました」 


 拘束されたままギャアギャアと喚き散らすレウスに対し、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら黒髪の魔術師が、隣に立っている緑髪の大男に指示を出す。


「まずは私達の自己紹介をしておかねばならんな。私はこのカシュラーゼで魔術師をしているドミンゴだ。それからこっちの銀髪の彼は王国騎士団員のライマンド。そしてこちらの黒髪の方は、我等魔術王国カシュラーゼの筆頭魔術師のディルク様だ」

「……知らないな。で、その筆頭魔術師が率いるお前達は、俺に何をさせるつもりだ?」

「それをこれから説明する。まずはこれを見てくれ」


 そう言いつつコラードに向かって顎をしゃくったドミンゴ。

 それに反応したコラードが、近くのデスクの上にある大きな透明の箱をドミンゴに渡す。

 その中には綺麗に保管されている何かの欠片が入っているのだが、パッと見ただけではそれが何かは分からない。

 赤サビ色の生物なまもののそれを見つめつつ、続けて自分を見やるレウスに気が付いたドミンゴはその箱の中身の説明を始める。


「これはお前の方が知っているだろう?」

「え?」

「何だ……覚えていないのか? ならば思い出させてやろう。これは今から五百年以上前、アークトゥルスだったお前が当時の仲間であるトリストラム、ライオネル、ガラハッド、エレインの四人の勇者達と共に倒した、魔竜エヴィル・ワンの身体の欠片だよ」

「あ……!!」


 今まで散々色々な事があって、自分の本来の目的を忘れていたレウスはその説明を聞いて一気に驚愕の表情になる。


「そうか、思い出したぞ……エヴィル・ワンの欠片を使って、この時代にその魔竜を復活させる為の儀式を行なうのがお前達の目的だろう!」

「そうだ。地上世界はその復活させたエヴィル・ワンに任せて破壊し尽くして貰い、その間にこちらはこの地下世界から世界中に領土を広げるんだ。そしてタイミングを見計らって地下から攻め込めば、地上世界は全て我々のものになると言う事だ」


 誇らしげにそう暴露するドミンゴだが、未だ拘束されたままのレウスは首を横に振った。


「いや、無理無理無理」

「何だと?」

「あのドラゴンは危険過ぎる。この世に復活したら地上世界は元より、地下世界も破壊し尽くされてしまう。止めるなら今の内だぞ。俺達だって止めるのに散々苦労したし、あの当時だって世界中に大きな被害が出たんだ。歴史を学んだのであれば、それを知らない筈が無いだろう!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ