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226.魔の手

 次々と捕縛されて行くパーティーメンバー達。その魔の手は残るアレットとエルザにも及んでいた。

 その二人は一通り街中を歩き回った後、街外れにある小さな空き家にやって来ていた。

 ここでまず今まで集めた情報を纏めてから他のメンバーと合流しに行こうと思ったのだが、どうやらそうも行かなくなってしまった様である。


「……しまった、どうやら私達は尾行されていたらしいな」

「えっ?」

「気付くのが遅かった。私の失態だ……ここでしばらく息を潜めて尾行している奴が通り過ぎたらさっさと逃げるぞ」


 アレットは気が付いていなかったのだが、どうやらずっと尾行している人間が居たらしいのに気付いたエルザが舌打ちをする。

 しかしまだ状況が上手く呑み込めていないアレットは、息を潜めつつエルザに対して色々と聞いてみる。


「誰が私達を尾行していたの?」

「さっきの……あの緑髪の男だ。私達に酒場での話を教えてくれたあの男だよ」


 その簡単な説明を聞き、アレットは先程自分達の赤毛の二人組の情報を教えてくれたあのガタイの良い男の事を思い出していた。

 しかし自分は特にあの男について怪しいとは思っていないので、楽観的に重ねて尋ねてみる。


「ああ……さっきのあの人? そう言えばさっきもエルザはあの人の事とを怪しいとかって言っていたけど、だったらその人は何で今まで私達を尾行していたの?」

「私が知るか! 大体、貴様はもっと危機感を持て! とにかくさっきから私達を尾行していたんだよ、あの男がな!」


 目的は分からないが、恐らくあの赤毛の二人の事を聞いたからなのかも知れない。

 はたまた、この裏のカシュラーゼにやって来た自分達の事がただ単に気になって追い掛けて来ただけなのかも知れないが、後者だった場合は普通に声を掛ければ済む事なので可能性は薄いだろう。

 ならばやはり前者か……と考えていた矢先、潜んでいる平屋の空き家の出入り口のドアがギィィ……と開いて、エルザが口に出した通りの男が中に入って来た。


「貴方は……!!」

「……こんな所で誰かと待ち合わせか?」

「ああ、まあそんな所だ。しかし貴様も良くない趣味を持っているな。私達をさっきから尾行していただろう?」

「まあな」


 緑髪の男はエルザの問いに対して、あっさりとその事実を認める。

 黒いインナーを着込んでいるその上に白い上着、薄い金色のズボンと言う簡素な出で立ちに、青いマントを巻いている。

 足は黒い革靴を履いており、手にも同じく革の黒い手袋をはめている。

 その手にはハルバード……かと思いきや、良く見てみるとハルバードではなくトライデントを握っている。

 大柄な彼に見合った武器の様だが、果たしてその長い武器をこんな家の中で振り回せるのか? と他人事ながら心配になってしまうアレット。

 そんな事を彼女が考えているとは思ってもいない大柄な緑髪の男は、更にエルザとの会話を続ける。


「何故私達を尾行していたんだ?」

「ん……まあ、私に与えられた任務だからだ」

「任務だと?」

「そうだ。お前達を捕らえて城に連れて来る様にと言われているのでね。だから一緒に城まで来て貰うぞ」

「……嫌だと言ったら?」

「その時は力づくで一緒に来て貰う。お前達が暴れなければこちらだって危害を加えるつもりは無いからな」


 そう言われてはい、そうですかと行ける筈も無いエルザは、黙ってバトルアックスを構えた。


「断る。何の目的があって私達を尾行していたのか良く分からない相手に、そう簡単に着いて行ける訳がないからな」

「ふむ、お前達は抵抗する気の様だな。ならば私も丁度良かった。今回はこちらの武器を使わせて貰うとしよう」


 そう言いながら男がズボンのポケットから取り出したのは、黒くて細長い物体。

 その細長い物体は一見すると何の変哲も無い筒でしか無いが、その筒の部分についているボタンをカチッと押してみると、次の瞬間ブオンッと音を立てて鋭い光の刃が現れた。

 まるで血の様に真っ赤に染まっているその刃を見つめ、緑髪の男は口元に緩い笑みを浮かべる。


「外からやって来たお前達に対してもこれが絶大な効果を発揮するのかどうかを試してみる、絶好の機会だ。これは持ち運びも便利だし、非常に使いやすくて助かる。まあ、私が開発した物なんだがな」

「な、何よそれ? かなり魔力が強いみたいだけど……」


 魔術師のアレットの分析に対し、どうやらこの道具の仕組みが分かっている様じゃないかと緑髪の男は感心した表情になる。


「流石に噂で聞いていただけの事はある。魔術師のお前ならやっぱり分かるのか。このビームサーベルの事が」

「ビームサーベル?」

「そうだ。実際に戦ってみれば嫌でも思い知ると思うぞ、このカシュラーゼが開発した武器の恐ろしさをな」


 初めて耳にする単語に首を傾げるアレットに対し、自分が開発した最新の魔術技術の結晶を手にした緑髪の男はそれだけ言うと、トライデントを床に置いてビームサーベルを振りかざして向かって来る。

 当然アレットもエルザも迎撃態勢を取るが、ハッキリ言って相手の実力もビームサーベルとやらの性能も全く分からないので油断は出来ない。

 その得体の知れない武器を相手にして、地下都市の空き家の中でのバトルが幕を開けた。

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