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224.断った理由

 そのまま緑髪の男の元を離れたエルザの後を追って、アレットは抗議する。


「ちょ、ちょっとお……何であの人に着いて行かなかったのよ? お店の場所を教えてくれるって言ってたじゃない! 大体待ち合わせの時間まではまだかなりある筈だから、ここは案内して貰っても良かったんじゃないの?」


 しかし、その抗議を聞いたエルザは冷ややかな顔つきである。

 そして冷静な口調でこう言ったのだ。


「少しは考えてみろ、アレット。あの男が話していた内容を」

「え……?」

「あの男はこう言っていただろう。「あいつ等がなかなか来ないんだよなあ」とかって話していたのも聞こえて来た……とな。普通、そんなのしっかり覚えていると思うか?」

「うーん、あの二人がこの国の人間じゃないって可能性もあるかも知れないわよ。だから珍しくて、ついつい聞き耳を立ててしまったんじゃないの?」

「それもあるかも知れんが……あの男の言っている内容がやけに具体的だった気がする。何にせよ、あの男をまた見掛けても近寄らない方が賢明かも知れないぞ……」


 あの緑髪の男には余り近寄らない方が良いだろう、と判断したエルザに対して不服そうな表情を浮かべるアレットだったが、まだ捜さなければならない人間がいる事を思い出した。


「そうだ、セバクターを捜さないといけないわね」

「そうだな。あの男もあいつ等の手先だとしたら間違い無くここに来ている筈だからな」


 レウスとギルベルトが新しいウェイスの町で彼に遭遇し、そして逃げられてしまった話からも、彼が何か良からぬ事を企んでいるのは間違い無い。

 だからそのセバクターを捜すべく再び聞き込みを始めた二人から遠く離れた場所で、その張本人に遭遇している二人が居た。



 ◇



「ようやく来たか」

「やっぱりお前はこのカシュラーゼと関わりを持っていたらしいな。今度ばかりは逃がす訳にはいかない」


 目の前に立つセバクターに対して既に臨戦態勢のレウスが槍を構えるが、彼よりもセバクターはサィードの方が気になるらしい。


「まあ落ち着け。ところであんたは?」

「俺はサィードってんだ。お前と同じマウデル騎士学院の卒業生だよ。個人的に恨みはねえけど、カシュラーゼに加担してるって言うのであれば俺の敵と見なして対立する事になるけどなぁ!」


 サィードもハルバードを構えてそう宣言するものの、臨戦態勢の二人を見つめるセバクターの目は冷ややかである。


「あんたも落ち着け。ちょっと色々あって、敵対せざるを得なくなってしまったのは謝る。だが、ここで俺達が争うよりもしっかりとこっちの言い分も聞いて欲しいと思う」

「言い分だと?」

「お前にどんな言い分があるのかは知らねえけどよぉ、レウスから聞いたぜ。お前はコソコソと色々やってるらしいじゃねえか。しかもお前一人じゃなくて色々と仲間まで集めてよお?」


 サィードはレウスから聞いただけなのでその時の状況は知らないが、レウスはあの夜にセバクターとその仲間達にウェイスの町で出会い、そして何かを企んでいるのを確かに見た。

 少なくともそれが何なのかを知るまでは、ここで出会ったセバクターに逃げられる訳にはいかないのだが、セバクター自身は逃げるなんて事はしなかった。

 むしろ、自分に着いて来いと言い出したのだ。


「その話を知りたいんだったら俺に着いて来い。ここから先は俺が案内をする。あの時一緒だった女達もここに来ているんだろうから、その女達も連れて来れば良い」

「何処に連れて行く気なんだ?」

「この国の王様が居る城だ。そこで色々と説明をする」


 罠かも知れない。

 自分達は今、確実に敵地の中に飛び込んでいるのは間違いないので、ここは着いて行かない方が良いのだろうかと考えるレウス。

 彼を信用出来なくなったのはかなり前からなので、罠だと判断してその誘いを断ろうとした……のだが。


「……いや、俺が案内するまでも無かったみたいだな」

「何だと?」

「その二人が案内してくれるらしい」

「えっ、誰……だ?」


 セバクターが自分達の背後を指差すので、その指の先にあるものを確認する為に振り返ったレウスとサィード。

 そこには何と、セバクター以上にレウスと因縁のある二人の姿があった。


「ようやく来たのか。遅かったじゃないか」

「人をあんまり待たせないで欲しいわね。何があったか知らないけど、こっちは待ちくたびれたわよ」

「お、お前達は……!」


 レウスが向ける槍の矛先が変わったのも無理は無い。

 何故なら自分達の背後には、多数の部下を抱えたあの赤毛の二人……ヴェラルとヨハンナのコンビが居たからである。


「こいつ等の移送は俺達に任せて、そっちはそっちで頼んでおいた事をしておいてくれ、セバクター」

「分かった。ちなみにこの二人は何処に運ぶ予定だ?」

「とりあえず地下牢にでも入れておくわよ。それからやっぱりあの女達もここに来ているみたいだから、あの人達に頼んで捕まえて貰って、同じ様に地下牢に運ぶ予定よ」

「ああ、それでは後を頼むぞ」


 そのまま踵を返してセバクターが去って行こうとするので、レウスは咄嗟に彼に向かって槍を投げつけるべく投擲のモーションに入る。

 しかしその瞬間、腰の辺りからバチバチバチッと言う変な音と共に全身が痺れる衝撃を受けるレウス。


「ぐおあああああっ!?」

「れ、レウス……ぐがああああっ!?」


 続けてサィードもレウスと同じ衝撃を腰の辺りに受け、そのまま意識を失って倒れ込んでしまった。

 その二人を見下ろしつつ、赤毛の二人は手で部下達に合図を出し、気絶した二人を城に運ぶ様に命じたのである。

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