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220.認証システム

 その設備には何やら四角い凹みがあり、その部分だけツルツルしている。

 しかもツルツルしている部分が奇妙な形で光を放っており、何かがあるのは間違い無さそうだが、レウスを含めた六人はこんな物を見るのは初めてなのでさっぱり分からない。


「うーん、これって何かをすれば良いとは思うんだけど……」

「そうねえ。この光の形にも何かの意味がある筈よね」


 アレットとサイカが首を傾げる横で、ジーッとその光を見ていたソランジュがふと何かに気が付いた。


「なぁ、その光の形って……指の形じゃないか?」

「指?」

「ああ、ほら……ここに人差し指をこうやって置いてみると……ほらな?」


 ソランジュが右手の人差し指を、そのツルツルした部分で光っている部分に置いてみるとスッポリ見事に当てはまった。

 だが次の瞬間、光がスーッと指全体を包み込み出したかと思うとそのツルツルした部分がいきなり赤く光り、トンネル内にけたたましい警報が響き渡ったのである!


「な、何だ?」

「えっ……何だこれ、どう言うこった!?」


 ピヨピヨピヨピヨと鳴り響き続ける警報に反応したのか、魔術防壁の向こうからワラワラと沢山の敵が現れた!

 何がどうなっているのかさっぱり分からないが、これは非常にまずいのだけは良く分かったので、六人は再びそれぞれ武器を構えて迎撃態勢に入る。

 だが、その向かって来た敵の先頭に居る人間の男が魔術防壁を挟んだ反対側にある同じ形の設備の、ソランジュが指を置いた場所に同じく自分の指を置く。

 すると魔術防壁が消え去り、行き来が出来る様になったのだ!

 それでもワラワラと出て来た多数の敵を倒さなければならないので、先程と同じく魔術が通用しないこの敵達を相手に第三ラウンドが幕を開ける。


「私達に何度も同じ手が通用すると思うなよ!!」

「こいつ等は普通の敵と変わらない! なるべく急所を狙って仕留めるんだ!」


 しかしこうして三回目ともなれば流石に手馴れて来た一行は、ソランジュとエルザを中心にして魔術が通用しない相手なりの対処法を見つけ出していた。

 この戦力差では時間を掛ければ掛けるだけ六人の方が不利になるので、エルザの言う通りなるべく急所を狙って敵を仕留める。

 その一方で敵に対して魔術が役に立たないアレットだけは、全員の回復役に徹してサポートに回る役割分担でこの窮地を乗り切る事に成功した。

 そして敵を全員倒し終わった頃には既に警報もストップしており、トンネル内には元の静けさが戻っていた。


「ふう……これで全部みたいだな」

「そうらしいわね。でもどうして、ソランジュがあそこに指を置いたらいきなり警報が鳴り始めたのかしら?」

「それは分からないな。ただ、こっちに向かって来た敵がこっちのこの場所に指を置いたら魔術防壁が消えたのを私はハッキリ見たから、もしかしたら部外者が指を置いたら警報が発動するのかも……」


 ソランジュがそう言う横で、アレットがうんうんと頷いて納得する。


「そうなると、これは一種のセキュリティって事になるのかしらね」

「そうだな。でもこれはかなり画期的な発明だと思うぞ。私や貴様が指を置いたら警報が鳴るが、ちゃんと許可がある者が指を置けば魔術防壁を解除出来る……カシュラーゼはこんな物まで開発していたのか」


 そう考えると、どうやらカシュラーゼ国内は数歩先の文明を走っているらしい。

 この先でまたこう言うシステムがあった場合には、同じ様にわざと警報を発動させて敵を出現させて倒すか、それとも既に倒した敵の指を使って魔術防壁を消して安全に通り過ぎるかの二択だろう。

 今はそれしか考えが思いつかない一行は、とりあえず危機も去った事だし……と再び先に進み始めるのだった。



 ◇



 地下で警報が鳴り響いていたのを、地上に居る複数の人間達は既にキャッチしていた。


「へぇ、今話題のあのレウスとかって奴が既にこっちに来てるって訳か?」

「どうもそうらしい。だが、幾らあの有名な男でもこっちのシステムを掻い潜る事は出来なかった様だな」

「はっ……そりゃそーだろうな。だってこんなシステム、まだカシュラーゼ以外じゃあ実用化されてねえんだからよぉ」


 モニターが沢山並んだ部屋で、トンネル内部の映像を見ながら緑色の髪の毛を持っている大男と銀髪の細身の男がそれぞれ話し込んでいる。

 先程の警報によって何かあったのかをと急いでこの部屋に来たのだが、そこに映っているのが事前に連絡を受けていたレウスとその仲間達の姿だったのを確認し、ふぅんと感心した様子を見せる。


「でもまあ、実験の成果はちゃんと出ているみたいで良かったな」

「そうだろう、そうだろう。私達が何回もテストにテストを重ねて開発したこの防犯システムの効果は抜群だ。それが今こうして証明された訳だが、わざわざあの二人組と……それからこちらについてくれたあの連中がこの連中をここまで呼んだって言うんだから、ここは大人しくここまで来るのを見守っておこうじゃないか」

「何だ、あんたはやけに自信満々だな?」

「自信満々……と言うよりも、私は楽しいのだよ。あのレウスとか言う男の正体が、本当に五百年前の勇者アークトゥルスなのかを確かめられるのがな」

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