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218.予想外の出来事

 とりあえず、今はコラードが怪しいとかギルベルトにも自分達の行動をカシュラーゼ側に流すだけの時間の余裕があるとか、そう言う事よりもまずはこのトンネルの先をもっと調べなければならない。

 しかし、今の様に探査魔術に反応しない敵が居るとなるとかなり危険な状況なので、気を引き締めて先に進まなければ何処から襲われてもおかしくない状況だ。


「とにかく先に進むぞ。俺達はもうここまで来てしまった以上、引き返せないんだからな」

「ええ、そうね」


 再び一行は歩き始めたが、その空気は明らかに今の異質な人間が襲い掛かって来た時よりも重い。

 誰も口を開こうとせず、重苦しい緊張感とピリピリとしたムードばかりが漂っている。

 やはり、魔力に反応しない異質な存在がこうして認められたと言う事で警戒心を強めるのは当たり前だった。

 このトンネルの先が何処まで続いているのかも分からないまま進むのは怖いが、それよりももっと怖い存在が次の瞬間に現われる。

 それは、横の岩壁をいきなり爆音と共にブチ破って一行の前に姿を見せた。


「うおうおうおっ!?」

「こ、今度は何ぃ!?」

「うわっ、これは大きいぞ!!」


 次に姿を見せたのは狼獣人の大男。

 しかしその大男は身体が異様に筋骨隆々の状態に発達しているにも関わらず、首から上だけがかなりアンバランスで異様に小さい。

 これも人体実験の被害者の一人なのだろうとすぐに察しがついた一行だったが、だからと言ってこのままやられてしまう訳にはいかない。


「グオオオオオッ!!」

「くっ!」


 一撃で骨どころか内臓までダメージが大きそうな横殴りが、一行に対して襲い掛かる。

 それをなるべく散開しつつ回避し、的を絞らせない様に戦うレウス達。

 空振ったその右手は岩の壁にぶつかり、壁の一部を抉り取った。

 空色の肌を持っているその狼獣人には既に理性と言うものは無さそうなので、ここは一思いに楽にしてやるべきだろうと判断するレウスだが、なかなかそれは厳しい。


「さっきの奴もそうだったが、こいつからも魔力を感じない。って事はこいつの体内には魔力が無いから、魔術で攻撃してもその魔術が体内の魔力に反応して効果を生み出さないって事になるんだ!!」

「ええっ、それじゃ私はお荷物って事!?」

「魔術しか使えないなら貴様はそうなる。だがその杖でこいつを殴る事位は出来るだろう!?」

「う……分かったわ!!」


 攻撃魔術と言うものは、魔力がある相手に対してその魔力の塊である魔術をぶつける事で、相手の中にある魔力に反応してダメージを生み出す。

 相手を毒状態にする魔術だって、毒を持つ魔術の魔力が相手の中にある魔力と反応して初めて効果を発揮する。

 しかし、今回の相手も前回の相手も魔力を持たない存在だと言う事は、アレットの攻撃魔術は勿論の事、レウスのエネルギーボールも闇属性の魔術も光属性の魔術も、全てが無意味だと言う事だ。

 魔術防壁を始めとする防御魔術は自分の体内にある魔力に反応させるので、自分の中に魔力があれば相手に魔力があろうが無かろうが関係無い。

 ……筈だったのだが、それを見事に覆される事態がこの後に起こった。


「グワオオオウウウウッ!!」

「ごはっ!?」

「レウス!?」


 狼獣人の前蹴りを食らってしまったレウス。

 しかし、この状況で食らってしまう事がレウスにとっては全くの予想外だった。

 何故ならレウスは、自分を含めたメンバー達を狼獣人の攻撃から守る為に魔術防壁を展開して迎撃に当たっていたのだが、狼獣人の大きな足が何とその魔術防壁を貫通して、レウスの腹を蹴る事に成功したのである!

 当然魔術防壁が防いでくれるものだとばかり考えていたレウスは、まともにガードも出来ずにその前蹴りを腹に受けてしまい、少し宙に浮いてからゴロゴロと後ろに転がってしまった。


「お、おい大丈夫かレウス!!」

「俺なら大丈夫だが……くそっまさかこいつは魔術防壁すら貫通してしまうってのか!?」


 完全に予想外の出来事。

 何故魔術防壁を貫通して自分に攻撃が当たったのかは分からないが、もしかするとこれも既に相手の体内に魔力が無いからこそ、魔力の塊である防壁にも物理攻撃として反応されなかったのではないか、と自分の腹に回復魔術を掛けながらレウスは頭の中で分析する。

 魔術攻撃は効かず、魔術防壁もダメだと言う事は、これはもしかしたら本当に未知の存在であり恐怖以外の何者でも無い。

 だったら残る手立ては、こちらも物理攻撃のみで立ち向かうしか無いのだ!!


「うおらあああっ!!」

「ぬん!」


 攻撃力に優れているサィードが中心となり、サイカも狼獣人の足を狙って対処する。

 本来であれば頭を徹底的に狙って一気にカタをつけたい所なのだが、普通の狼獣人と違ってかなりアンバランスな体型なので、その小さな頭部を狙うのはなかなか難しい。

 なのでまずは両足に集中攻撃を掛け、狼獣人の体勢をグラリ崩す一行。


「ガ……?」

「おりゃあああっ!」


 体勢が崩れた狼獣人は片膝をついて荒い息を吐く。

 そこに向かって駆け出したサイカが、その立ち膝状態になっている狼獣人の左足を踏み台にして大きくジャンプし、その小さな頭部目掛けてシャムシールを垂直に突き立てた。

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