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216.カシュラーゼとはどんな国?

 風の吹き抜ける音がトンネル内に反響して、まるで悪魔の唸り声の様にも聞こえる。

 そんな不気味なトンネルの中を、足音を立てながら一行は奥に奥にと進んで行く。

 レウスは最小限の魔力を使い続けながら、自分達が進む先の状況を探査魔術でサーチして進む。

 今の所は人の気配も魔物の気配もしないものの、とにかく何が出て来てもおかしくない状況なので用心して進むに越した事は無い。

 その黙って進む一行の中で、最初に声を上げたのがサイカだった。


「何か、やけに静か過ぎると思わない?」

「えっ、そうかな?」

「そりゃーそうだよ。だって人の気配も魔物の気配もしないんだから静かなのは当然だ」


 魔力を使い続けているレウスは自分の探査魔術に何か反応があればすぐに分かる。

 魔力が反応したら自分の身体にビリビリと痺れる様な感覚があるので、今の所でそれが無いと言う事になれば大丈夫だと知っているのだ。

 なので、そのサイカを始めとする現代の若者五人に対して、レウスはカシュラーゼと言う国がどんな国なのかを改めて聞いてみる。

 それに対して真っ先に反応したのはアレットだった。


「カシュラーゼは、私達魔術師にとってはまさに聖地って言っても過言では無いわ」

「聖地か……それはこの世界の魔術の中心地だからか?」

「うん。魔術師を志す人だったら人生の中で絶対に一度は訪れたい国のナンバーワンって言われているのよ。実際に私も旅行でならここに来た事があるんだけど、リーフォセリアでは到底手に入らない様な魔術書だったり、高性能のロッドがあったり魔道具だって凄いものばっかりだからね」


 だけどその分、どうしても値段が張ってしまうのは仕方が無い。

 事実、その旅行でアレットは何も買う事が出来ずに悔しい思いをしたのがまだ記憶に強く残っている。

 しかしながら今回は旅行でも何でも無い……と言うよりもカシュラーゼから見ると明らかに不法入国となる為、犯罪行為を犯してでの潜入となる。

 それに、今までの騒動に殆んど全てにカシュラーゼが絡んでいるとなると、今回はかなり複雑な感情の中での入国となるだろうとアレットは口走る。


「確かに魔術の技術は確かにこの世界の中ではトップクラスだと思うわ。でもねえ……マウデル騎士学院を襲ったあのドラゴンの生物兵器がカシュラーゼで生み出されたって聞いた時は驚いたわよ」

「それは私もアレットに同意見だ。この男と私は一緒に学院でその生物兵器と戦ったし、この穴の上でだってドラゴン達を率いてその新たな生物兵器がやって来たから、恐らく意思の様なものを生物兵器に持たせる事が出来たりするのかも」

「意思だって?」


 不思議そうにソランジュが聞けば、アレットとエルザは同時に頷いた。


「うん、確かにそれは私も同じ事を考えていたわ。だって意思も無しに野生のドラゴンを……それも四匹いっぺんに操る事なんて出来ないと思うわ」

「そうだよな。それぞれで打ち倒したドラゴン達はあの生物兵器の意思の元で動いていたと言っても過言では無いな。まあ、元々このイーディクト帝国の北の地そのものがドラゴンと関わりが深いって言う事も一つの原因だとは思うが」


 それに……とアレットはカシュラーゼに纏わるおぞましい噂話を思い出した。


「そうそう、そう言えば私達が今こうして向かっているカシュラーゼで、魔術の人体実験が行なわれているらしいのよ」

「うわっ、その話なら俺も聞いた事があんぜ」

「サィードも?」


 隊列の後ろで話を聞いていたサィードが、明らかに嫌そうな顔をしてそう言ったので、レウスを除く一行の視線が彼に集まる。

 自分に向けられる多数の視線に多少引き気味になりつつも、サィードはその聞いた噂の内容について話し始めた。


「ああ。つっても俺の傭兵仲間から聞いた話だから何処まで正しいかは分かんねえけどよ。カシュラーゼの中では日々色々と魔術の研究をしているんだけど、その魔術を試す為の相手がなかなか居ないらしい。魔物に関してはカシュラーゼの実験の為に片っ端から捕まって実験の道具にされたって話だったぜ」

「えっ、それじゃあ今カシュラーゼの中に居るのは人間と獣人だけ?」


 しかし、そのサイカの確認にサィードは首を横に振って否定した。


「いいや、噂によれば魔術の実験で改造された魔物が沢山生息しているらしい。どんなのが居るかは俺もそいつから聞いてないし、そもそもそいつも知らないらしいから俺も知らねーぞ」

「あれっ、改造生物って事は魔物相手に実験をしているって事でしょ?」

「ちげえよ。生物って俺等人間とかあのトラのおっさんみてえな獣人も含まれるだろうが。だから人間も獣人もそうやってどんどん人体実験の材料にされているらしい」

「うーん……いまいちピンと来ない……」

「ピンと来てくれよ、頼むからよぉ」


 サィードからそう説明されても良く分かっていないサイカを始めとする一行の目の前に、突然異変が起こったのはまさにその時である。

 そしてそれは、今までの魔術の概念を覆すレベルでレウス達に対して襲い掛かって来たのだった。

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