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211.何でお前がついて来るの?

 結局、コラードは実技試験でも不合格となってしまい、カシュラーゼには五人で向かう事になった。

 ……筈なのだが、何故かサィードも一緒にカシュラーゼに着いて行くと言い出したのである。


「いやちょっと待て、何でお前まで一緒に着いて来るんだ?」

「そうよねえ、それは不思議だわ」


 レウスもアレットも、勿論他のメンバーもサィードの発言には驚くしか無い。

 そもそもこの男はコラードと違って志願した訳でも無いのに、今更になって急に着いて来ると言い出したのである。

 だが、サィードにも彼なりの言い分がきちんとあるらしい。


「確かにお前等から見りゃー不思議かも知れねえな。けどよぉ、俺は元々お前達に出会わなくてもカシュラーゼに向かう予定だったんだわ」

「ど、どう言う事?」

「どう言う事も何も、そう言う事だよ。俺はカシュラーゼに向かう為に、隣国であるこの国で色々と仕事をしていたのさ。お前等に出会ったあの地下闘技場の用心棒の仕事だってそうだし、砂漠の魔物退治だって依頼をこなすと同時に魔物の素材を売って資金を集めて、それでたんまり稼がせて貰ったからな。旅を続けるにゃー金が要るんだよ」

「それは分かるけど……私達がお主に聞きたいのはそう言う事じゃなくて、何でカシュラーゼに行く必要があるんだと言う話なんだ」


 そう問われると、サィードは神妙な顔つきになった。


「俺は追い掛けている奴が居るんだ。俺の国を滅ぼした、ふざけたあの野郎をな」

「国を滅ぼした?」

「ああ。……お前等も多分そいつに会ったんだろ? あの……黒髪の魔術師にさ」

「え? それって……」

「まさかあの魔法陣の先で俺達が出会った、こんなに長い髪の毛で赤い目をしていて紫色の上着を着ている……」

「そいつだよ」


 今までに無い位のシリアスな表情をしているサィードは、ギルベルトの確認に即答する。

 滅んだ国どうのこうのと言っていたのは覚えているが、滅ぼされた国と言うのはもしかたら……とギルベルトのみならず、ゴーシュやファラリア、それから見送りに出る為に一行が集まっている城のエントランスにやって来ていたシャロットにも心当たりがある。


「もしかすると君は、ヴァーンイレス王国の出身なのか?」

「そうっすよ。既に滅ぼされて長い事経ちますけどね。まだガキの頃にヴァーンイレス王国にあいつがやって来て、暴虐の限りを尽くして去って行ったんです」

「ん……ん? ちょっと待ってくれ。確かヴァーンイレス王国を滅ぼしたのはカシュラーゼでは無かったのか?」

「そうっすよ。それからカシュラーゼに物資とか兵力とかを援助していたあんた達だってそうですよ、陛下。けどな、本当に滅ぼしたのはあいつなんだよ。あの……何だっけ、名前忘れちまった」

「はい?」


 おいちょっと待て、そこが一番大事な所なんじゃないのか?

 まさか自分の国を滅ぼした魔術師の名前を忘れるなんて、一体どう言う事なんだ? とギルベルトがサィードに詰め寄る。

 だが、彼は当たり前の様に答えた。


「ちょっと……ド忘れしちまった」

「そんなバカな話があるか。君の国を滅ぼした相手の話なんだろう?」

「っても本当なんですよ、これがさ」

「忘れてんのかお前、ふざけんなよおい、俺だったらぜってえ忘れねえぞ!! 絶対忘れねえかんな!!」

「ちょちょちょ、ちょっとギルベルト騎士団長……何で貴方がそんなに熱くなっているんですか。少し落ち着いて下さいよ。シャロット陛下もいらっしゃるんですから」

「あ……」


 ファラリアに宥められ、まさかのド忘れを起こしてしまったサィードに対してヒートアップしていた自分に気が付いたギルベルトは一気にトーンダウンする。


「申し訳ございません陛下、お見苦しい所をお見せ致しました」

「い、いや儂は別に構わないのだが……そのカシュラーゼに滅ぼされたヴァーンイレス王国の出身だと言うのであれば、何故その魔術師とやらが王国を滅ぼした事を知っているのかな?」


 ギルベルトに謝罪されたシャロットは、サィードに改めてそう聞いてみる。

 すると、サィードは何処か遠い目をしながらこう答えた。


「俺の親父から聞いたんですよ。俺のお袋とか親戚とか、友達とか……国が滅んだのは、カシュラーゼに加担していた黒い長髪の若い魔術師のせいだってね。そいつは幾つかは知らないですけど、かなり若い奴だって言ってました。王国騎士団に所属していた親父は、戦場でそいつの姿を見た事があるらしいんです。限界まで近づけた時に見たその顔つきからすると、恐らく十代後半から二十代前半だったって話ですけどね」

「そうか……そうなると、カシュラーゼに事実確認をする必要があるかな。君がそんな過去を抱えていたなんて儂は知らなかったからな」


 しかし、その言い方にカチンと来たサィードの目つきが一気に鋭くなる。


「そりゃーそうでしょうね。俺の過去を話すのなんてここじゃー初めてですから。それと何か他人事みたいに言ってますけど、自分達だってカシュラーゼに加担していたっての忘れてません? 俺にとっちゃーカシュラーゼは勿論、そのカシュラーゼに協力していた国々だって同類でしかねえんだからな!」

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