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205.皇帝からの要請

 変にテンションが上がってしまったサィードを見て、これはますますサィードを風呂場に向かわせる訳にはいかないと判断する残りの男三人。

 ギルベルトにとっては自分の騎士団の団員として将来活躍する予定の若者が、ゴーシュとレウスのアーヴィン親子にとっては自分の妻であり母のファラリアが風呂場に居るので、この男を風呂場に向かわせたら何をされるか分からない。


「おい……どうしても風呂場を覗きに行きたいって言うんであれば俺達を倒してから行くんだな。幾らそっちの腕が立つとしても、俺達三人相手には限度があるだろうからな」

「へへへ……下心のパワーを舐めて貰っちゃ困るんだよ、お三方……」

「そんなパワーがあってたまっかよ。おいゴーシュ、出入り口を抑えるんだ」

「はっ!」


 ギルベルトの指示により、部屋のドアの前にゴーシュが立つ。

 何故ここまで人間の欲望が彼を動かしているのかは分からないが、覗きは立派な犯罪行為である。

 なので絶対に行かせてはならない、とサィードを止めに掛かる三人だったが、そんな一触即発(?)の四人の元に思わぬ協力者が現われた。


「失礼します。皆様にシャロット陛下から魔術通信が入っております」

「え……俺達にですか?」

「はい。通信先でお待ちですので何方かご対応をお願い致します」


 使用人の女の一人がそんな状況の四人の元にやって来て、シャロットから連絡が入っていると告げる。

 流石にシャロットからの通信を無視してこのやり取りを続ける訳にはいかないので、ここは誰か一人が代表して向かうのではなく、四人全員で通話に応答する事を決める。

 誰か一人でもサィードから目を離したらすぐに残り二人の包囲網を突破して風呂場に向かってしまいそうだし、ここは四人の中で最も体格が大きなギルベルトがサィードを拘束して見張っておく事で風呂場に行かせない様にも出来るからだ。


 と言う訳で四人は屋敷のエントランスの片隅にある通話スポットへとやって来たのだが、そのシャロットからの通信内容は風呂がどうのこうのと言っていられないものだった。


「はい、レウスですが」

『ああ、レウス君? すまないね急に呼び出したりして』

「いえ、俺は大丈夫ですけど……何かあったんですか?」

『いやあそれがね……儂が紹介したコラードって傭兵が居ただろう? ほらあの……君達が一緒に行くのを断った』

「ああ、はいそうですね。彼が何か……?」


 通話の内容は、サィードからもたらされたエピソードによって同行を拒否する結果になった、あのくすんだ金髪の傭兵コラードの話だった。

 その男との話はもうとっくに終わった筈なのに、今頃になってどうしたのだろう? と首を傾げるレウスとその会話を聞いていた残りの三人の耳に、とんでもない話が通信先のシャロットから聞こえて来た。


「あの男はどうしても諦めきれないらしくて、せめて自分の実技だけでも何とか見て貰えないかって聞かないんだ」

「え……って言われましても……」

「君達があの男に対して実力を示せば何とか分かってくれると思うんだ。だから非常に申し訳無いんだが、彼を諦めさせる為に今から城に来られないか?」

「い……今からですか!? 明日じゃ駄目なんですか?」

『出来れば今が良いんだ。明日は彼も用事があるとかでな……』


 もう風呂にまで入っている訳だし、食事の用意も進めて貰っているのに今からまたセンレイブ城に行かなければならないとなると、正直言って気が乗らないのだ。

 だがシャロットの方も譲ってくれないので、とりあえずレウスは彼の話を聞きにセンレイブ城に向かう事となった。

 ……のだが、シャロットからの要請は彼だけでは無かった。


「うー……分かりました。それだったら俺が今からそちらへ行きます」

『いや、あの……実は君達全員で来て欲しいんだ』

「はぁ!?」

「陛下、レウスの父のゴーシュですが……何故息子だけではいけないのですか? あのコラードと言う男はただの傭兵なのですよね? それでしたらそちらで実技試験を受けさせられないのですか? 何故私達が彼の為に、全員揃ってそちらに向かう必要があるのですか?」


 何で他のメンバーも全員連れて行かなければならないんだ、と意味が分からなくて戸惑ってしまうレウスの横から、流石に聞きかねたゴーシュが通話に割り込んで来た。

 実技試験を受けさせるのであれば、パーティーメンバーのレウスだけが向かって彼の実力を見せれば良いだけの話なのに。

 それがどうして、全員揃ってセンレイブ城まで出向かなければならないのか真面目に意味が分からないからだ。

 それについて、通話先のシャロットはまたもや申し訳無い声で頼み始める。


『恥ずかしい話だが、実技試験を受けさせる為の人員が足りないんだ』

「足りない? それはおかしくないですか?」

『ああ、確かにおかしい。だがそれは通常時の話だ。今は北の方に向かわせた騎士団員達と魔術師達をまだ現地に残して色々と調査を進めて貰っているから人数が足りない。それにこの実技試験はただの実技試験じゃなくて、彼の潜入能力を試す為の実技試験だからそれなりに戦える人員と、囚われの身となっている設定の人員が必要なんだ。……頼む、これが儂からの最後の要請だ』

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