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204.恨まれてなんかいない

203話(前話)、区切りが悪かったので少し加筆修正しました。

評価、ブックマーク、感想もありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。

「まあそこに掛けてくれ。後で使用人達に夕食を持って来させるからな」

「それは助かるんだが……貴様は恨まれていないのか?」

「えっ、私がか?」

(オイオイ本気かこの女……俺が疑問に思っている事を真っ先に聞き始めやがったぞ!?)


 一旦リビングに案内された一行の中で、多分同じ事を考えていたのであろうエルザがストレートにそう聞いたのを目にしたレウスが、余り表情を変えない様にしているものの驚きの表情になる。

 そんな聞き難い事をズバッと聞くなんてちょっと失礼じゃないかと思ってしまうのだが、ソランジュは特にそう思っていないらしく普通のテンションでエルザの質問に答え始めた。


「恨まれていると言うか、家を飛び出したから憎まれていると言う方が正しいのかも知れない。だけど、お主達が思っている様な関係では無いぞ」

「えっ、親と仲が悪いって訳じゃないの?」

「仲が悪いって言うか、既に商家の跡取りとして育てられるのを諦められたと言うかな……実はたまにここには戻って来ているんだ。本当にたまにだがな」

「うん、それは良いんだけど……あのメイドさん達も別に貴方を除け者にする様な感じじゃなかったから気になってね、多分私だけじゃなくてさっきの質問をしたエルザとか、サイカとかレウスも気になっていると思うわよ」

(ちょ、ちょっと待てアレット……俺までサラッと巻き込むな!!)


 何故かこの場に居る全員がソランジュの家庭事情を気にしているのだと言う前提で話を進めるアレットに対して、心の中でそう突っ込むレウス。

 しかし、その話の流れを止める事無くソランジュは回答し始める。


「父と母は忙しくて余りこの家に居ないんだよ。だけど使用人達はこの屋敷に常駐していて家のメンテナンスをしてくれているからな。使用人達から前聞いたんだが、どうやら私がたまに帰って来てくれるのが嬉しいらしい。私がまだまだ子供の頃からの付き合いだからな、あの使用人達は」

「あ、そうなの……」


 別にソランジュが冒険者稼業に出たからと言っても、使用人達にとっては彼女がこの家の娘だと言うのは変わらないからこそ、今でも変わらないままで迎えてくれるらしいのだ。

 その答えでレウスの心の中に引っ掛かっていたものがスッと消えたのと同時に、今まで黙っていたサィードが口を開いた。


「家族関係の話は分かったからよお、風呂に入らせてくれねえかな?」

「お、風呂か……そうだな、それでは早速用意させよう。ただし、あいにく私の屋敷は風呂が一つしか無いから、男と女で分かれて入る事にしよう。男と女、どちらが先に入る?」

「俺は別にどっちでも良いよ」

「俺もレウスと同じでどちらでも構わねーぜ」

「女から先に入ったらどうだろう?」

「んー、そーだな。じゃあゴーシュのおっさんの言う通り女達から先に入れよ」


 順番は気にしないレウスとギルベルトに対し、ゴーシュとサィードは女達から先に入浴を済ませてしまえば……と提案する。

 なのでレウス、ゴーシュ、ギルベルト、そしてサィードの四人を除いた残りの五人の女達は先に風呂場へと向かい、残りの男達四人はそれぞれ荷物の運搬係を担当する。

 だが、ここは今まで眠っていた家や外の空間とは違い、使用人の居る屋敷の中。

 当然、客の荷物を運ぶのもその使用人達の仕事なので使用人達に荷物を渡したレウス達は、ソランジュに走り書きされて渡された紙に書かれているそれぞれの部屋に案内して貰った。


「はー、やっとこれでこの国での話も終わりそうだな」

「そうかなぁ……俺はもうちょっと何かありそうな気がするんだけどよぉ」

「何も無いのが一番なんだよ、サィード君」

「そうだぜー。今はしばしの休息でしか無いが、俺達はこの時間を大切にしないといけねえんだぞ」


 これまでに起こった事を思い返しつつ安堵するレウスに対し、まだまだ戦いは終わらないだろうと考えるサィード。

 そしてそれを見て、平和な日常の大切さを実感しているゴーシュとギルベルト。

 変わらない日常がどれだけ幸せなのかを、このサィードはまだ良く分かっていないらしい。

 しかもこのサィードは荷物を置いた後にどうやら良からぬ事を考えていたらしく、早速それを実行に移すべく部屋の外へ向かう。


「おい、何処行くんだよ?」

「えっ、あんた達こそ行かねえのかよ?」

「何処に?」

「何処にって……風呂覗きに行くに決まってんじゃねえかよ」

「はっ?」

「な、何だって?」

「だぁーかぁーらぁー、風呂覗きに行くんだよ。今は女達が入ってんだろ? だったら興奮すんじゃねえかよ」


 全く悪びれる事も無しに、抜け抜けとそう言ってのけるサィードに三人は言葉を失う。

 その中でも特に、自分が覗き関係の話で酷い目に遭っているレウスの表情が段々と青ざめて行く。


「おい、悪い事は言わないから止めておけ。後悔するぞ」

「えーっ? 裸を見たって別に減るもんじゃねえだろーが。それとも三人は女の裸に興奮しねえのかよ?」

「いや、する。するけどな、それとこれとは話が違うだろうサィード君。私の妻だって一緒に入っているんだ。君のやろうとしている事は犯罪だよ?」

「ふーん、ああそう。……だったら余計に興奮するじゃねえかよおおおおっ!!」

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