202.サィードからの情報
登場人物紹介にコラード・モラッティを追加。
https://ncode.syosetu.com/n0050fz/2/
とりあえず今までの実績に関してはこの書類に書いてある通りで分かったので、後は彼のその潜入能力と戦闘能力がどれ程のものなのかをテストさせて貰うのが手っ取り早い。
しかし、戦闘能力はレウスなりギルベルトなりが相手になって戦えば良いと思うのだが、潜入能力に関してはなかなかその試験が難しい。
何処かの犯罪組織に潜り込んで壊滅して貰う訳にもいかず、かと言ってその実力を計らずに一緒にカシュラーゼに向かうのも不安なままだ。
結局、その答えが出ないままにコラードの面接は終了となったのでシャロットの元に向かうレウスとギルベルトだが、何故か後からサィードが着いて来た。
「おい、おめーが何で着いて来てんだよ。あの部屋に居ろよ」
「それがそうもいかないんすよ団長さん。俺ね、あのコラードっておっさんの傭兵をどっかで見た覚えがあんですよ」
「そうなのか?」
あの部屋でコラードを目の前にして話せない内容だからこそ、こうやって着いて来たと言うサィード。
考えてみれば二十歳の時にリーフォセリア王国騎士団を去って、それから六年の傭兵経験があるので彼もなかなか長い期間活動している部類の傭兵ではある。
しかし、年数で言えばまだまだ中堅レベルだとギルベルトは考えていた。
何事においても丸一年を経験するまでは素人扱い。その一年を過ぎて丸五年までの間が初心者として扱われ、五年から丸十年になると中堅。十年から十五年の間がベテランとなり、十五年から二十年の間で玄人。そして丸二十年以上で達人と呼ばれる域になる。
勿論、それに見合った知識と技術が無ければただ年数を重ねているだけになってしまうのだが。
それを言えば、五百年の時を超えて活動しているレウスは前世での冒険の活動をプラスすれば伝説レベルであるし、自分は十六歳の時に実技試験を突破して学院には通わないスタイルで騎士団に入って活動して来たのでもうちょっとで達人だよな、と考えるギルベルト。
そのギルベルトから見たらまだまだの経験年数でしか無いサィードが、コラードに対しての気になる話を二人に伝えるべく追って来たらしい。
「俺、あのおっさんと一緒に仕事をした事は無いんですけどぉ……あのおっさんは結構金にがめついらしいんですよ」
「そうなのか?」
「ああ。アークトゥルスのお前はあのおっさんに会うのが初めてだから分からなくて当然だと思うが、自分が契約した依頼主が自分の不利になると分かったら、すぐに他の依頼主についちまうらしいんだ。……こうやって話してて思い出したんだけどよぉ、俺……あのおっさんに裏切られて殺された依頼主に会った事もあるわ、そーいやー」
「そう言えば誰かが言ってたな、傭兵と言うのは自分の利益になるかならないかで動く生き物だと。そして金の切れ目が縁の切れ目だと」
「そ、そこまで言っていたか?」
前に誰かが言っていた事を思い出してそう呟くレウスにギルベルトが戸惑うものの、そんなエピソードがあの男にあると言うのであれば何時裏切られてもおかしくない。
初対面の相手をハナっから疑うのも良くないが、彼の事を少しでも知っているサィードの話を聞いている分にはイマイチ信用ならないと言うのがコラードに対しての評価だった。
それでも断るに当たって余り上手い言い訳も思い付かないレウス達は、どうやって断ろうかを考えている内にシャロットが執務を行なっている皇帝の執務室に辿り着いた。
「じゃー、俺はここで待ってっから後は二人でよろしくな」
「ってか、おめーはもう応接室に戻ってろよ」
「いやー、それは出来ねーですわ。一緒にここまで来ちまった以上、俺だけ早めに戻って来たらちょっと変かも知れねえじゃないですか」
「……分かったよ。だったらここで好きにしていろ」
妙にムカつく態度だが、有益な情報を教えてくれた事もあって何処か憎めないサィードをその場に残して、レウスとギルベルトはシャロットの待つ執務室へと入った。
その部屋の中でもそもそと書類整理に追われていたシャロットは、整理する手を止めて二人からの報告を聞く。
一応サィードからの報告も交えて伝えてみた所、シャロットは渋い顔になった。
「そうか……丁度この国に来ている傭兵の情報を冒険者ギルドに頼んで集めて貰ったんだが、傭兵と言う職業柄の話を儂は見落としていた様だな」
「ええ。なのでせっかく提案して頂いてなんですけど……」
「いいや、別に気にする事は無い。これは儂が勝手にした事だからな。だが……確かにどうやって断るかは問題だな。そこは儂の方で何とか上手くごまかそう。君達はあのコラードと言う男を呼んで来てくれ。儂から話そう」
「しかし、それでは……」
「心配するな。言っただろう、これは儂が勝手にした事だからな。だから責任を取るのも儂だ。君達は何も気にする必要は無い」
「……分かりました。それでは後は宜しくお願い致します、陛下」
そこまで言われると仕方が無いので、レウスもギルベルトも諦めて後はシャロットの方で何とかして貰う事を決めた。