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197.こんなになる?

 非常に重苦しい空気の中、聞きづらいとは分かっていてもギルベルトがレウスに質問をする。


「なあ、お前ってそんなにドラゴン討伐パーティーの連中から恨まれていたのか?」

「え、いや……俺はそんな態度をとっていたつもりは無いんだがな」

「ならどうして、あの黒髪の奴はお前を後ろからぶっ刺してたんだよ? 普通に考えてああまでされんのっておかしいだろうし、あいつが言ってたじゃねえかよ、お前の態度が気に食わねえって」

「……確かに、うん、そうよね……」


 アレットも同調し始めたのを見て、レウスは心当たりも無いので必死に否定する。


「おいおいおい、アレットまで何を言い出すんだよ……俺が今までお前達に対して、そんな反感を食らう様な言動をして来た記憶があるか?」

「覚えている限りでは無いな。だが、これから先でそうなる可能性もある」

「そうよねー。馬鹿は死ななきゃ治らないって言うけど、死んでも治らないんだったらどうしようもないわよね」

「……」


 まさかあの水晶の光景が切っ掛けとなって、ソランジュとサイカにまでこんな事を言われるなんて。

 今まで無事にここまで一緒に旅を続けて来たパーティーメンバー達が、自分に対して疑いの目を向けているこの現状に対して、レウスはますますリアクションに困ってしまった。


「……こんなになる?」

「はぁ?」

「こんなになるか、普通……あの過去の光景が切っ掛けで、今までのこれからの戦いに向けてさあ行こうって決意していたムードが、あれが切っ掛けでここまでなる?」

「まぁ……気の毒だとは思うけどよぉ、ガラハッドって勇者仲間がああ言っているんだから正しいんじゃねえのか?」

「そうだな。私達は現代に生まれたんだから、貴様の時代を知らないし勇者達の関係も書物でしか知らないし、何よりガラハッドの事を一番良く知っているのが貴様だろうし」

「そうよねえ。そしてガラハッドに刺されて死んじゃってこの世界に転生したって事なら、それ相応の理由で殺されたんでしょう……ああ言っていたんだし、こんな空気になるのも当然と言えば当然よね」


 ギルベルト、エルザ、サイカが言う様な事が過去にあったのであれば、自分の事を殺したいと思うまでにガラハッドが恨んでいたとなる。

 騎士団の隊長や魔術師部隊の隊長に、この水晶が見つかった他に何か手紙とかのメッセージが無かったかどうかを確認してみるが、この水晶以外に何も見つかっていないらしい。


 そうなると、カシュラーゼに向かった後にそのままリーフォセリアに帰る訳にはいかないレウスは、自分を殺したガラハッドがドラゴン討伐から帰還してどうしたのかを現代の人物達に聞いてみる。

 すると、顔を見合わせたパーティーメンバーからこんな話が出て来た。


「ガラハッドって言えば、今のエスヴァリーク帝国を建国した人間だよな」

「そうそう。今では大小様々な国を支配下に置いている、世界でもトップクラスの軍事大国よね」

「あいつはその国の建国者だって言うのか?」

「ええそうよ。私もソランジュも冒険者として行った事があるけど、本気になればソルイール帝国なんて一週間で壊滅させられる程の量と質を兼ね備えた戦力を有しているわ」


 あのガラハッドが、まさかのエスヴァリーク帝国を建国した人間だったなんて。

 それを聞いたレウスは、カシュラーゼの後に時間を取ってエスヴァリーク帝国へと向かう事を決意した。


「だったらそのエスヴァリーク帝国に行ってみよう。今だから言えるが、あいつは結構話を作るタイプだったからな。何でも大げさに物事を捉えがちな所もあって、暴走する事も何度もあったんだ。……と言ってもお前達はあいつの事を歴史で語られて来た以外では知らないだろうから、またこの水晶みたいにあいつの記憶を記録した何かが見つかるかも知れないから、そう言うのがあったらそれで判断して貰おう。俺も言われっ放しってのは気分が悪くてしょうがない」


 そもそもその言動にムカついていたのであれば、少しブン殴って注意すれば良いだけの話では無いだろうか?

 背後から一思いに一突きで殺される様なレベルの話だったのだろうか?

 レウスにとっては、その辺りがどうも引っ掛かって仕方が無いのである。

 いずれにしても、まずは皇帝シャロットの待っているこのイーディクト帝国の帝都グラディシラに戻らなければならないので、報告を済ませてから今後の予定をもっと練る事にした。



 ◇



「良く戻ったぞ、儂は無事に君達が帰って来られて嬉しい」


 跪くレウス達一行の前で、皇帝のシャロットが謁見の間に喜びの言葉を響かせた。

 しかし、まだまだやらなければならない事は山積みである。


「本当であれば君達に全員儂の国で仕えて貰いたいのだが、君達はそうもいかないだろうからな。……カシュラーゼに向かうのだろう?」

「その予定です。陛下」


 エスヴァリークに向かう前に、まず目指すは南の隣国カシュラーゼ。

 そこで今までの話や因縁に決着をつけて、それから更に南のエスヴァリークに向かっても遅くは無いだろう。

 しかし、この報告の中でシャロットから意外な提案が飛び出した。

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