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196.あいつからのメッセージ

 だが、戻る前にもう一つやる事が出来た。

 それはこのウェイスの町を調べていた騎士団部隊の隊長と、魔術師部隊の隊長からの報告によって、町長の家で気になる水晶を発見したとの話から始まった。

 その水晶にはどうやら魔術によって何か封印が施されているらしいのだが、どうやればその封印を解く事が出来るのかさっぱり分からなかったので一緒に見て欲しいと懇願されたのだ。


「で、問題の水晶ってなぁこれか?」

「見た目的には普通の水晶みたいだけど……」


 ギルベルトの大きな両手に乗る程のサイズであるその水晶は、ほんのりと緑色に光っている。

 普通に触っても害は無いらしいのだが、この水晶に施されている封印を解く事で何かが起こるのかも知れない。


「おいアレット、これ分かるか?」

「ううーん、何かの封印って事しか分からないわね。魔術師部隊の隊長さんにも分からないんだから、私に聞かれても分からないわ」


 ソランジュに聞かれてもどうしようも無いアレットを横目で見ていたレウスが「それ貸してくれ」と水晶を受け取った。

 丸い水晶なので手から落とさない様に気を付けながら、しげしげとその水晶玉を眺めてある事に気が付いたレウスは、もしかして……とその手にエネルギーボールを生み出した。


「これって外部からの魔力に反応するんじゃないかな。だからこうして魔力の塊を当ててやれば……おっ、やったぞ!」

「えっ、どうなったんだ?」

「封印が解けたんだ。どうやら昔の光景を記録しておける水晶らしいな」


 一番興味深そうなソランジュを先頭にして、一同が自分の周りに集まって来た。

 なのでレウスは自分の手の上に水晶玉を乗せたまま地面に座り込み、ゆっくりとその水晶玉に映し出される光景を見てみる事にする。

 その見え始めた光景が、かなり恐ろしくてショッキングなものだと言う事に気が付くのがこの後すぐだと言うのも分からないままに……。


「おっ、見え始めたんじゃねえか?」

「これって……何処かの戦場らしいわね?」


 ギルベルトもサイカも、その水晶の中に見え始めたのが何処かの戦場で誰かが見ている光景だと気が付いた。

 この水晶の持ち主の視点らしく、ぼんやりとした景色が徐々に鮮明になって来るにつれてレウスの表情に段々と変化が生まれて行く。

 そして、彼は水晶の中身の光景が何なのかに気が付いてしまった。


「おいちょっと待て、これってもしかして、俺がアークトゥルスとして活動していた頃の光景じゃないか?」

「そうなのか?」

「ああ……間違い無い。しかもこの景色も見覚えがある。これは……俺がまさにエヴィル・ワンを討伐したすぐ後の景色だ!」

「ええええええっ!?」


 レウスの断言に対してエルザもアレットも驚きを隠せない。だが、本当に驚きを隠せないのはこれから先の光景を見てからだった。

 水晶の中では赤錆色のドラゴンが地面に倒れ伏し、戦いが終わった事が分かった。

 そこまではレウスも覚えている光景なのだが、問題はこの後である。

 何せそこから先の記憶がブッツリと途切れてしまっているのを、この水晶を見続ける事によってそれが分かるかも知れない。

 だが、それこそがかなりショッキングな内容であった。

 水晶の中でドラゴンを見つめている金髪の後ろ姿の男の後ろから、黒髪の男が手に持っているロングソードを一思いに金髪の男の背中目掛けて突き刺したのだ!


「なっ、ガラハッド……!?」

「えっ、この人がガラハッド?」

「ああ、俺の相棒的な存在の奴だったよ。こいつに俺は刺されたのか……!?」


 刺された金髪の男は無言でそのまま脱力し、地面に向かってうつ伏せに倒れ込む。

 一方で彼――アークトゥルス――を刺した黒髪の男ガラハッドは、アークトゥルスを見据えたまま口を開いたらしく声が聞こえて来た。


『良し、これで手柄は俺達のもんだな?』

『でもこれで本当に良かったの?』

『何言ってるんだよ今更。こいつにバレない様に今までずーっと俺達が話し合って来たんだろ? こいつが英雄だのなんだのって呼ばれて天狗になって、色々横柄な態度を取る様になっていたからムカついてたのは俺達全員変わらなかっただろうに、ここに来て後悔するなんて許さねえからな?』

『うん……それもそうね』

『それで、こいつの死体は埋めちまうか? それとも燃やしちまうか?』

『いや、こいつの死体を持って帰ってこのドラゴンと相打ちになったって事にしてやれば良いんだよ。そうしたら世間では英雄が自分の命と引き換えに相打ちになって、仲間とこの世界を救ったって事で俺達が殺したなんてバレないだろ? あーっと、それからトリストラムもこんなシーンを記録してるんじゃねえよ。後でそれ捨てておけよ』

『え……あ、うん……』


 そこで水晶の中の光景は終わってしまった。

 そのショッキングな光景を最後まで見てしまった一同の間には、何時の間にか重苦しい空気が流れていた。


「……」

「……」

「……ええと、どう反応すれば良いのか……」

「いや、無理して反応して貰わなくても良いぞ。俺が一番ショックで反応に困ってるんだからさ」


 エルザもソランジュもサイカも反応に困っているが、本人が言っている通りこの光景に最も反応しづらいのはレウスだった。

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