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194.ここは何処であいつは誰?

「あいつは一体何だったんだ?」

「私に聞かれても困る。ただ一つだけ確実なのは、あの男は私達にとっての敵だって事だな」

「そーだな。しかしレウスが手も足も出ないなんて、あいつはそんなに強かったのかよ?」


 魔法陣の転送先である謎の場所で出会った、謎の魔術師。その魔術師に対して、レウスは彼に指一本も触れる事が出来なかった。

 今まではあの誘拐犯のウォレスの様に苦戦する事はあっても、何とか近づいて攻撃を食らわせていたものだが、最初から最後まで指一本も触れる事が出来なかったのはこの前のセバクターとの再会以来かも知れない。

 いや……セバクターとは前に二回も戦っていて、その戦いの時に格闘戦にも発展しているのでセバクターには触れた事がある。

 あの魔術師の男にはまだ触った事もないので、あの男の実力はかなり高いと見るべきだろう……とレウスは考えていた。


「強いだろうな。もっと真っ向から長い時間やり合えば分からないが、あんな魔物が出て来る魔法陣をすぐに作れるなんて普通の人間じゃない事は確かだ」

「確かにな。貴様の言う通り、あの男は詠唱も無しに杖を地面にかざしただけで魔法陣を作り出したんだからな。王国の魔術師達でも出来るかどうか……」


 そう言いつつギルベルトをチラリと見るエルザに対し、トラ獣人の騎士団長は苦笑いを浮かべつつ答える。


「俺は魔術には疎いからあんまり良く分からねえが、王国の中でもあんな魔法陣を一瞬で作れる奴なんてなぁ……居ねえんじゃねえかな」

「すると、彼は何処かの国に属している魔術師って事になるんですかね?」

「カシュラーゼと繋がりがあるみてーな事も抜かしてやがったし、恐らくあいつはカシュラーゼの魔術師じゃねえのかな。そう考えると辻褄は合うぜ」


 いずれ、あの男とカシュラーゼの関係を暴く時が来るだろうと考えるレウス達だが、あの男がサラッと口走っていたセリフをレウスが思い出した。


「そう言えばあの男、こんな事もチラッと言っていたな。この滅亡した国にこんな物が……って」

「滅亡した国……となれば思い当たるのは一つしかねーじゃねーか?」

「ヴァーンイレス王国……か?」

「そうだな。それしか無いだろうな」


 ギルベルトの確認をレウスは肯定する。

 ここに来る為に乗った魔法陣の転送可能距離を始め、あの男が口走った内容と過去のこの世界の出来事を照らし合わせてみると、どう考えてもその滅亡した国と言うのはギルベルトの言う通り、南東にあったヴァーンイレス王国しか思い当たらない。


 つまり、ここはヴァーンイレス王国の何処かと言う事になる筈だが、それを確認する為に部屋の外に出ようと思っても魔術で閉ざされているあのドアしか出入り口が見当たらないので外に出られないのだ。


「なあ、貴様の魔術であのドアの痺れをどうにか出来ないのか?」

「んん……一応やってみようか?」

「ああ、頼むぜ」


 ここまで一緒にやって来た二人からの要請を受けて、レウスはまず扉に向かってエネルギーボールを当ててみる。

 しかし扉はビクともしないどころか、エネルギーボールがバチバチと音を立てて飛散してしまった。


「これじゃあダメか。だったら次は光属性の魔術と闇属性の魔術を当ててみてどうなるか……」


 扉に掛かっている魔術が何属性なのかも良く分からない以上、とりあえず使える属性の魔術をそれぞれ一つずつ当ててみるレウス。

 しかし、それでもやっぱり扉はうんともすんとも言わない。

 こうなると本当に完全なプロテクトが掛かってしまっているらしいので、あの男を追い掛けるのは諦めるしか無かった。

 事実、業を煮やしたギルベルトが力任せに扉を開けようとして、レウスと同じ目に遭ったのだから……。


「おいおっさん、無理するなよ」

「うー……」

「蹴破ろうとしてもビクともしないって事は、どうやらこっち側からだとあの取っ手を引っ張らないとダメらしいな。だが引っ張る為の取っ手はあんな状態だし、何かロープみたいな物も無いから諦めるしか無さそうだ」


 レウスがギルベルトに回復魔術を掛けている間、自分のコートでバッサバッサとそのギルベルトを仰いで痺れのショックを少しでも軽減させようとエルザも奮闘する。

 ならばせめて、あの男が研究していると言っていたこの壁画から何かヒントが得られないかどうか確かめてみようとするものの、みた感じは普通の壁画らしいので何もヒントが得られそうに無い。


「何か壁画の裏にあるんじゃねえのか?」

「んー……いや、何も無いですね」

「そうか。それにしてもこれって何の壁画なんだ?」

「さっぱり分からないな。俺は芸術には疎いしおっさんもそうだろうし……エルザは?」

「私も疎い。とにかくここはもう一旦ウェイスの町に戻って、ここに来てから今までの出来事を全て報告した方が良いだろう。ここで三人でこうして悩んでいたって、まるで話は進みそうに無いからな」

「それもそうだな。それじゃさっさと戻ろうぜ」


 あの魔術師の男の事は気になるし、彼を逃がしてしまったのはかなり悔しい三人。

 特にレウスは自分が手も足も出なかっただけあって、これまでの旅の中で二番目に大きな屈辱を受けていた。


(あのバスティアンの野郎に色々されたのも悔しいが、今回の件もなかなか悔しいな……)


 しかし、過ぎた事を悔やんだって仕方が無い。

 あの魔術師とはこの先、また何処かで会える時が来るかも知れないので、今はとりあえず魔法陣の転移先がヴァーンイレス王国の何処かだと分かっただけでも大きな収穫だ……と思いながら三人は再び魔法陣の上に乗って転移した。

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