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191.説得

登場人物紹介にファラリア・アーヴィンを追加。

https://ncode.syosetu.com/n0050fz/2/

「それじゃあ誰が行くかって事だけど……ここは最小限の人数に絞った方が良いと思うんだ。この魔法陣の先に何があるか分からない以上、何人かはここに残った方が良い」

「それは分かるけど……誰にするの? それから残った方はどうするの?」


 レウスの提案にサイカが疑問を投げかけるが、その辺りも彼はきちんと考えている。

 戦力的な面、それから安全面、知識面等を考えた結果、全部で三人が行く事になった。


「俺と、ギルベルト団長と、それからエルザ。この三人がこの魔法陣の向こう側へ向かう。残りのメンバーは研究所の中を再び捜索しつつ、俺達が三時間経っても魔法陣の先から戻って来なかった場合、シャロット陛下に頼んで帝都から増援を呼んで貰う。そして俺達からの連絡があるまでここで待機していてくれ」


 残るメンバーに向けてそう頼んだレウスだが、そこで手を挙げてソランジュが質問をする。

 その顔はかなり強張っている。


「……向こうから何もお主達の連絡が無かったら、その時はどうする?」

「その時は、非常に申し訳無いがこの世界全土を探し回ってくれ。人員的な問題、地理的な問題はあると思うが……一日経っても戻って来なかった場合の措置だ」


 正直な話、レウスは出来れば自分一人だけで行きたかった。

 だが、この先に何があるか分からない上にバックアップ要員は必要なので、実力のある順番にメンバーを並べた結果、ギルベルトとエルザを一緒に連れて行く事を決めたのだ。

 しかし、それに対してアレットとサイカが反発する。


「嫌よ……何があるか分からないんだったら、むしろ全員一緒に行くべきだと思うわ!!」

「そうよ。この町の上で戦ったドラゴンだって全員で役割分担して倒したんだし、今までこうやってみんなで協力して危機を乗り越えて来たんじゃないのよ!?」


 あくまでも、全員が一緒に行くべきだと主張するアレットとサイカ。

 しかし、その二人に対して落ち着く様に声をかけたのはギルベルトだった。


「おいお前等、良く聞け」

「何ですか?」

「この先に何があるか分からないって言うんだったら、少なくとも俺達全員が一緒に行くのは得策じゃねえと思う。もし魔法陣の先に魔物の大群が居たとしたら? そいつ等がとんでもなく強かったとしたら? それを考えると、俺達だけでこの先に向かって何があるのかを調べて来た方が良いだろう。それにさっきレウスが言った通り、俺達が戻って来なかった場合の連絡係を置いておいた方が、少なくともこの魔法陣の先の状況を誰かが伝えられるだろ?」


 言葉の端々に荒々しい口調は残っているものの、すぐに熱くなる性格の彼にしてはかなり低いトーンで諭している。

 今までに無い口調のギルベルトを見て、アレットとサイカは顔を見合わせて頷いた。


「……分かりました」

「そう……それなら私達は連絡係として残った方が良いわね」


 一応納得はしてくれた様だが、その顔は二人とも寂しそうである。

 そんな二人に対してレウスが声を掛けた。


「そんな顔するな。俺達はこの魔法陣の先に何があるのかを調べて、それで戻って来る。それだけだからな」

「分かったわ。でも、絶対に戻って来てよね」

「勿論だ」


 少しだけ笑顔を見せたアレットにそう返したレウスは、改めてギルベルトとエルザと共に魔法陣に向き直る。

 そこには淡い緑色の光を放っている円形の魔法陣が鎮座しているが、流石にこれだけの大きさの魔法陣に魔力を注ぎ込んだレウスは疲弊している。

 その様子に気が付いたエルザから、レウスを心配する声が上がった。


「おい、何か顔色が悪くないか?」

「ああ……ちょっと魔力を使い過ぎたかな。だけどまだ平気だから行くならさっさと行こう」

「幾ら使ったんだ、貴様の魔力全体で……」

「えーと、恐らくこの疲弊具合だと全体の四割って所かな」

「四割!?」

「おいおい、そりゃあ幾らなんでも使いすぎなんじゃねえのか?」


 水分を失った身体が上手く動かなくなるのと同じ様に、この世界に生きている生物は魔力を失うと身体がなかなか上手く動かなくなってしまう。

 それにレウスの場合、戦う時の様にコマ切れに魔力を消費するのでは無くずーっと魔力をこの魔法陣に向かって注ぎ込んでいた事もあって、一時的な魔力不足……脱水症状と同じ様な感覚に陥っているのだ。


「だったら少し休んでからこの先に行くか? それとも貴様が行くのを止めて別の誰かに頼むか?

「いや……大丈夫だ。俺の魔力の回復具合は常人より速いんだ。それにこの魔法陣が何時また起動しなくなるか分からない以上、さっさとこの先に向かってそこで休める場所があったら休む様にしよう」

「貴様がそれで良いなら、私はこれ以上は止めないが……」


 そう言いつつギルベルトの方に目をやるエルザだが、リーフォセリアの騎士団長であるトラ獣人は何とも言えない表情だ。


「……まぁ、こいつがこう言ってんだったら別に構わねーんじゃねーのか? ただ、この先に行って体調を崩されたら俺達が困るんだがよぉ」

「だから大丈夫だって。さっさと行くぞ……」


 本当に大丈夫なのか? とエルザもギルベルトも思いながら、魔法陣に向かって歩き出す意志の固いレウスの後ろに着いて行くしか無かった。

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