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190.魔力の注入と推測

「じゃあ、今から魔力を送り込むから少し待っていてくれ」

「ああ、頼んだぜ」


 一人だけ連れて来られたレウスは、研究所の中の探索を続ける様に他のメンバーに通達を出しつつ自分は魔法陣に向かって魔力を注ぎ始める。

 部屋一杯に広がる位の大きさの魔法陣なだけあって、かなりの時間が掛かりそうだった。

 アレットの分析によれば、この魔法陣の劣化具合からすると随分前に作られたらしい。


「でも……これって多分この町が埋められた後に造られたものじゃないかしらね?」

「そこまで分かるのか?」

「うん。この文字の掠れ具合とか、書き足し具合とか見てるとそこまで昔って程でも無いと思うわよ。それからこっちに描かれている図式はつい最近発表されたものだけど、こっちに描かれているのは五十年以上昔のものだから、今でもこの魔法陣は現役で使われているわね」

「凄いな、そこまで分かるのか」


 ギルベルトを始めとして、魔術に疎い他のメンバーにとってはそこまで深く突っ込んだ魔術の話は出来ないので、こう言う場面で魔術師のメンバーが居るのは非常に助かる。

 その後も、レウスが魔力を注ぎ込んでいる横で魔術師達数名による魔法陣の分析が続けられる。

 描かれている術式からすると、この転送陣はかなり長い距離を移動出来る様にセットアップされてここに配置されている様だ。

 元々はそこまで長い距離を移動する様なものでは無かったらしいのが、描き足されている術式の下にうっすらと残ってしまっている事も見て分かるらしく、どうやら短い距離を移動する為の魔法陣を長い距離の移動用に作り直したらしい。


「するってえと、どれ位の距離がこれで移動出来んだ?」

「ええと……分析の結果によると、この魔法陣で移動出来るのはヴァーンイレス王国とか、もっと長い距離で言えばエスヴァリーク帝国とかその辺りですって……」

「何だってえ? そーなると、この世界のほぼ端から端までじゃねえかよ!? そうなると魔力の消費も激しいんじゃねえのか?」

「ええ……そうなりますね。だからこうしてレウスが魔力を注ぎ込み続けているのも、それだけの魔力が必要だからって事でしょう」


 そこでギルベルトがふと思いついたのが、その昔……ヴァーンイレス王国に攻め込むカシュラーゼの軍事関係の武器や物資の支援をしていた、このイーディクト帝国のバックアップ体制だった。

 カシュラーゼには魔術関係でたんまりと儲けた潤沢な資金があり、イーディクト帝国に対してそのバックアップを金で頼んだからこそ、ヴァーンイレス王国との戦争に勝利出来たとも言える。

 実際には他の国からもバックアップをして貰っていたのもあるが、商工に秀でているこのイーディクト帝国だからこそのバックアップの分野もあった。


「だからよぉ、俺はこう考えたんだよ。それだけの長い距離を移動できる魔法陣だってーんなら、ここから移動して一気にヴァーンイレス王国に攻め込んで行ったんじゃないかって。だってここ、元々埋められた町なんだからカシュラーゼが色々と動いていたって分かんねえだろ?」

「確かに、物理的に表には出ませんからね」


 学院トップのエルザも戦術面の事を考えれば、ヴァーンイレス王国に対してすぐに攻め込めたり、すぐに退却出来たりする事が可能なこの魔法陣があれば圧倒的にカシュラーゼが有利になるだろう、とその成績の良さからすぐに思いついた。

 それに加えて、地元民であるソランジュからはこんな情報が。


「それからカシュラーゼが有利なのは、この魔法陣を使った部分だけでは無いと思います。カシュラーゼの東の海を使えば、海を通ってこの北の町までやって来る事だって可能です」

「そりゃー確かにそうかも知れねえが、そんなに自由に使えるルートなんてあんのかよ?」

「はい、あるんです。このイーディクト帝国はカシュラーゼとのバックアップをするに当たって、このウェイスの町からもっと先に行った所に突貫工事で港を造ったんです。既にその頃にはこの町は埋められていましたが、わざわざ陸地を通ってこの町に来るよりも遥かに楽ですからね」


 陸地に魔物や盗賊や山賊が出る様に、海にだって海の魔物が居たり海賊が出たりする危険性はある。

 しかし陸地を通れば山を越えたり谷を越えたり、魔物が沢山居る平原を越えたりしなければならないリスクが生まれるのに対し、海を通るのであれば魔物と海賊と天気と船のトラブルにだけ気を付ければ良いので、陸地を通って疲労するよりも遥かにリスクが低くなる。

 だからこそ、カシュラーゼから増援を要請するに当たってどんどんこの北の町に船を使って送り込み、そして魔法陣で一気に移動して攻め込めば、ヴァーンイレス王国側としては何の前触れも無く突然攻め込まれてもそのルートの特定が難しくなってしまう。


「カシュラーゼの奴等め……ここでドラゴン復活の研究をするに飽き足らず、やる事がいちいちずる賢いって言うか……」

「おい、もうそろそろ魔力を流し込むのが終わるぞ」


 カシュラーゼへの憎しみを募らせるギルベルトに、レウスからそんな声が掛かる。

 今までの話は全て推測にしか過ぎないし、この魔法陣で移動した先もまだ分からないので、とりあえず移動先がどうなっているのかを確かめなければならないのだ。

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