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186.謎の兵器

「……ん?」


 ガガ、ギギッと何か錆び付いた金属が擦れ合わさる様な音が横の通路から聞こえて来たので、二人はそちらに目を向けてみる。

 すると、そこには明らかに招かれざる客が居た。


「げっ、何だあれは!?」

「何あれ……!?」


 レウスもソランジュも思わず驚きの声を上げてしまう。

 その通路の先からは、四足歩行でボディカラーが黄色と白に塗り分けられている、まるで狼の様なフォルムをしている金属の塊……背中の部分には得体のしれない換気口の様な部分が鎮座している不思議な物体である。

 レウスとソランジュのみならず、二人に着いて来ていた騎士団員と魔術師達もそれぞれ武器や杖を構えて迎撃準備をする。

 だが、その金属の塊の額の部分についている赤い突起が妖しく光ったかと思うと、物凄い轟音と共に後ろの換気口の様な部分から光が溢れ出る。


(ま、まずい!!)

「えっ、ちょ……っと、何……!?」


 瞬間、嫌な予感がしたレウスはソランジュの手を引いて全速力で駆け出す。

 ソランジュが驚きの声を上げた次の瞬間、今まで二人が立っていた廊下の交差部分に向かって、恐ろしい勢いでその金属の塊が突っ込んで来た。

 どうやら後ろの部分についているのは、自分の身体を加速させる為の装置らしい。


「うおっ!?」


 止まれないその金属の塊はそのまま騎士団員と魔術師達の何人かを跳ね飛ばしながら壁に突っ込んでしまったが、さしたるダメージも無い様だ。

 更に壁の被害が小破程度で済んでいるので、恐らくは加速装置のコントロールをしたのだろうとレウスは判断。

 それなりの知能は持ち合わせているらしいが、これは生き物ではなくあのドラゴンの生物兵器の様に人工的に作られた物だと判断した。

 とにかく今は、金属の塊の居る通路とは違う方向へと向かって全速力で逃げるしか無い。


「あれは一体何なんだ!? お主の時代にはあんな兵器は無かったのか!?」

「俺に聞かれても困る! 少なくとも五百年前には見た事が無い!! とにかく今はあいつに敵として認定されてしまったみたいだから、俺達は逃げるしか無さそうだ!」


 今まではギローヴァスやサンドワーム、ワイバーンと言った大型の魔物から始まって、この穴の中に落ちて来る前に戦ったドラゴンも大型の魔物だった。

 最後に戦った黒いドラゴンは生物兵器ではあったものの、生物の感情を持っていたのである程度は相手のその感情を逆手にとって戦う事も出来た。

 しかし今回の相手である金属の塊は、普通の生物と違って感情を持っていない敵である事には間違い無い。

 繋いでいた手を離し、レウスとソランジュは直角コーナーになっているこの通路の曲がり角を利用して、あの金属の塊の追撃から逃れる為に走り始めた。


 金属の塊の追撃から逃れるべく、二人は右へ左へと直角コーナーを曲がって逃げ続ける。

 だが、後ろの金属の塊もかなりしつこくレウスとソランジュに追いすがって来るので、このままではいずれ追い付かれてしまう。

 二人がそんな諦めの感情を抱いたその時、唐突にこのチェイスシーンの幕が下ろされる。

 ……と言っても、良い方の意味で幕が下ろされた訳では無かった。


「……げぇっ!?」

「い、行き止まりだ!」


 後ろをなるべく振り向かずにガムシャラに逃げ続けた結果、何と通路の行き止まりに出てしまった。

 正確には行き止まりでは無く、ボタンを押す事で魔力が伝わって作動するエレベーターが二台ある、エレベーターホールだった。


「くっそぉ!!」


 レウスは二つあるエレベーターの横についているボタンを、それぞれ半ば半狂乱状態でバンバンと押してみるが、どちらのエレベーターもやって来そうな雰囲気は無かった。

 むしろやって来たのは……。


「来たぞ!!」

「……」


 ソランジュのその声にレウスが後ろを振り向けば、ついに金属の塊が自分達を追い詰めてしまった事が分かった。

 レウスはその光景を見て、ゆっくりと金属の塊の方に向き直る。勿論ソランジュもだ。

 だが、金属の塊にはさっきと違う部分がある。

 その金属の塊の周りには、小型の金属の塊が二~三体うごめいている。

 大きさは小型犬位だろうか。

 どうやらこの金属の塊は、侵入者対策の警備用に造られた物ではないか? とレウスは推測した。


(親玉らしきあれを取り巻くあの小さいのは、おおかた警備のサポート役の金属の塊って所か? ……くそ、あのでかいのに魔術が通用するのか!?)


 金属の塊の突進攻撃はかなり強力なのが怖いので、レウスはどうするか頭を悩ませる。

 流石にこんなのを相手にするのは、五百年前の勇者でも初めてだからだ。

 レウスと金属の塊のその様子を横で交互に見ていたソランジュは、レウスの顔色が悪い事に気がついて声をかける。


「……どうしたの?」

「あの大きいのに立ち向かうのは俺じゃあ無理かも知れない。槍であの金属の塊を貫けるかも分からないからな。周りの小さいのなら何とか出来ると思うが……」


 それを聞き、ソランジュが自分のロングソードを見つめて小さく頷き決意する。


「分かった。だったらここは私がやってみよう」

「本当か? だったら今言った通り小さいのは俺でも行けると思うから、あの小さいのを別の場所に引き付ける。この大きいのは任せるぞ!!」

「ああ。お主も気を付けるんだぞ、レウス!!」

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