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185.研究所

ブックマーク200件、PV20万、500ポイント突破しました。

感謝感謝でございます。これからもよろしくお願いします。

 目の前にそびえ立つ、外壁が所々剥げたり少し崩れたりしている大きな建物。

 それこそが、レウスとソランジュが参加している火属性のチームがやって来た東の研究所である。

 その研究所に近づくにつれ、レウスが険しい表情になって行くのを隣を歩いているソランジュが気が付いた。


「どうしたんだ? さっきから段々お主、怖い顔になっているが……」

「そりゃそうだ。この中から何か得体の知れない気配を感じるんだよ」

「え……?」


 いきなり不穏な事を言い出したレウスに対して、ソランジュも周りの騎士団員も魔術師達も怪訝な表情になる。

 しかもそのレウスのセリフに続く形で魔術師達から、研究所の内部から不可解な魔力の流れがあるのだと教えてくれた。

 自分も魔術は使えるとは言え、魔術の専門家では無いソランジュにとっては良く分からない話なので、そこはレウスにもっと詳しく説明して貰う事にする。


「得体の知れない気配とか、すさまじい気配がするとか、不可解な魔力の流れとかって言っているけど……一体何が何なのかさっぱりだ。なるべく私の様な者にも分かる説明をしてくれないか?」

「まぁ、良いけど……率直に言えば今言った通りで、複数の魔力が入り混じっているんだよ。この研究所の中から、人間や獣人以外の魔力が研究所の外にまで出て来ているから、それが混ざって変な魔力の流れを生み出しているんだ」

「うん……やっぱり分からんな。それでは質問を変えよう。どんな魔力を感じるんだ?」


 ソランジュの質問に、研究所の入り口前で足を止めたレウスは建物を見上げつつこう答える。


「俺でも感じた事の無い種類の魔力だ。少なくとも、五百年前の俺はこんな種類の魔力は感じた事が無い。人間でも獣人でも無く、かと言って魔物でも無い」

「植物とかじゃないのか?」

「それも違う。本当に分からないんだ。俺が最初にこの古代都市ウェイスの全体を魔力で探査してみた時には、この町中には人間と獣人の魔力しか感じられなかった。だが、この建物の中から感じる魔力までは探査出来ていなかったとしたらこの得体の知れなさも分かる」


 レウスの言っている魔力探査は、建物の中と言う閉鎖空間までは感知するのが難しい。

 曲がり角の先に居る人間や獣人の魔力を感知する事は可能であっても、建物の中と言う限られた空間では壁や天井に完全に守られているので、その分魔力が外に漏れ出す可能性も限りなく低くなる。

 しかも対象物から離れるに従って探査の制度も低くなるので、正確な位置までは掴めない。


「この建物の中を探査しても無駄だって事か?」

「ああ。残念だが、直接この足で踏み込んで自分の目で確かめてみるしか無さそうだ」

「そうか……」


 レウスが残念そうにかぶりを振るその横で、ソランジュが自分の武器のロングソードを抜いた。

 それに呼応して後ろの騎士団員達や魔術師達も戦闘モードに切り替えてから、一同の準備が整ったのを確認したレウスを先頭に研究所の中に踏み込んで行く。

 この建物の中に入った事は無いレウスだが、中で何が行なわれていたのかと言うのは知っている。

 五百年前から変わっていないとすれば、この研究所が町ごと埋め立てられる時まで魔術の実験場として様々な魔道具の研究開発、新しい魔術の研究等が行なわれていた場所だった筈だ。

 そして、その五百年のギャップを研究所の中でレウスは目の当たりにする事になる。


「五百年前とは何もかもが違い過ぎるな。あの設備は一体何なんだ?」

「あれ? あれはええと……ああ、研究所の中だけで使える通信装置らしい」

「じゃあこれは?」

「これは全て自動で室内の温度をコントロールしてくれる装置だな」

「へぇ~~そうなんだ、五百年も経っているとやっぱり色々と違うもんだな」


 まるで少年の様に目を輝かせるレウスに対して、ソランジュがこんな突っ込みを入れてみる。


「へぇーって驚いているが、お主は過去からこの世界に生まれ変わって……ええと、何年だったっけ?」

「俺? 俺は今年で十七年になる」

「十七年か。その十七年の間にこうした設備を見る機会は幾らでもあったんじゃないのか? 今の一般家庭にも普及している設備ばかりなんだが、お主のその反応はちょっと変じゃないか?」


 しかし、レウスは当たり前の様な口調でこう答えた。


「だって俺、地元の田舎町から出たのが両手で数える位の記憶しか無いから、こんな設備は全然見た事無かったもん」

「お主の通っていると言う騎士学院にも、こんな設備は無かったのか?」

「そんな設備まで気にした事は無かったよ。そもそも望んで入学した訳でも無いからなあ。それに入学してから誘拐されるまでの期間も短かったから学院内部の設備とかあんまり覚えちゃいないんだ。覚えているのは学院内部の施設の場所とか、訓練場の場所とかだけかな」

「……そうか」


 そこまで言われてしまったら、知らないのも無理は無いか……と諦めの表情を浮かべるソランジュ。

 だが、そんな彼女とレウスが先導して進んでいた研究所の廊下の奥から、不可解な音が聞こえて来たのはその時だった。

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