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180.まさかの展開

 しかし、そのドラゴンが倒れた事によって予想外の事態が起きた。

 古代穴全体を覆っていた黒い霧が消え去り、無事に女達四人を含む討伐部隊のメンバー達と合流出来たレウスとギルベルトの後ろで、その古代穴がゴゴゴ……と地響きを立て始めたのである。


「えっ……な、何?」

「おい、あれを見てみろ!」


 突然の地響きに驚くアレットに対し、エルザが古代穴の方を指差して叫ぶ。

 その指の先では、ドラゴンの生物兵器が落下した古代穴の場所からミシ、ミシッと妙な音が聞こえる。

 それと同時に古代穴の至る所に亀裂が入り始めて、討伐部隊のメンバー達に冷や汗が流れ始めた。

 そして、ギルベルトが最悪な知識を披露し始める。


「まずい……この音からすると、この穴を中心としたこの辺りが崩れるぞっ!!」

「何だと!?」

「おい、全員退避するんだ!!」


 しかし、ギルベルトの声に従って一目散に退避し始めた一行を追い掛ける様に地面の至る所に亀裂が入り始めたのだ。

 その亀裂の入るスピードは予想以上に速く、古代穴の中心から放射状に大きく広がって行く。

 そして穴の中心が崩れ始めたのに従って、周りの地面もその穴の中心に向かって傾き始めた。


「うわわわわっ!?」

「な、何だこれ……!!」

「嫌だあああっ、私はまだ死にたくないいいいいいいっ!!」

「くっ、これは厳しいぞ!!

「くっそ、どうにかならねえのかよぉ!?」


 アレットもエルザもサイカもソランジュも、そしてこの音から危険を察知したギルベルトでさえも成す術無く他の討伐部隊のメンバーと一緒に穴の中心に向かって滑って行ってしまう。

 まるで流砂にハマってしまったかの様な状況に、レウスは今の自分の魔力を一旦全て使い切る覚悟を決めて叫んだ。


「おいみんな、俺が魔術防壁を張るから何とか近付けるだけ近付いて来てくれっ!!」

「ど、どーすんだよ!?」

「このまま落ちて行くだけなら、少しでも全員が無事に助かる方法を考えてこれしか無いって思ってな!!」


 レウスの声に従って、討伐部隊のメンバー達が彼の周囲にどんどん近付いて来る。

 その近寄って来たメンバーを見てタイミングを計りつつ、レウスは魔術防壁をドーム状に展開。

 メンバー全員を包み込んで、これから崩れて行く穴の中に落下した時の衝撃に耐えるのだ。


「ねえちょっと、本当に大丈夫なのこれ!?」

「全てはお主にかかっているのだぞ!!」

「俺だって何も考えずにこんな事をした訳じゃない。この穴が崩れると言う事は、この下に旧い方のウェイスの町がある筈なんだ。そこを研究出来るチャンスだと俺は思っているんだよ!」

「なっ、そんな事の為にこんな無茶な事をしている訳なのか貴様は!?」

「どのみち亀裂からは逃げ切れなかったんだ。だったらさっき言った通り、ちょっとでも生存率が高い方法を考えた結果がこれだ。研究はあくまでも二の次って事だけは忘れるなよ!!」


 魔術防壁の内側でそんなやり取りをするレウス達の目の前で、まずは黒いドラゴンが古代穴の中央に到達。

 その重みで穴の中心部がボゴォッと大きく広がり、更に一回り大きな穴が開いてドラゴンが古代穴の中に落ちて行ってしまった。

 それを追って穴の中心部に到達した討伐メンバー達もまた、真っ逆さまに穴の中へと落ちて阿鼻叫喚の様相を見せていた。


 だが、穴の底までは意外とすぐだった。

 時間にしておよそ五秒の空中浮遊を終え、先に落ちて行ったドラゴンの亡骸をクッションにして魔術防壁の袋ごと着地した一行は、その魔術防壁が消えた後の光景に思わず開いた口が塞がらなかった。


「ここが……本来のウェイスの町なのか?」

「地中に埋まっていたにしては、妙に綺麗な状態じゃないか?」


 エルザとソランジュがそんなセリフを言うのも無理は無い程、地中に埋まっていたにしてはかなりの綺麗さが保たれているウェイスの町。

 家も地面も、砂や土だらけではあるものの何故かほぼ無傷のままになっているのがかなり不思議である。

 だが、それ以上に不思議なのはその地面にまだ新しめの足跡が残っている事である。

 長い間、カシュラーゼの手によって埋められていたとすれば、こんなに新しめの足跡が残っている事自体かなりおかしいのだ。


「妙だと思わねえか、レウス?」

「ああ。俺もそう思っているよ。ここって確かカシュラーゼの連中が埋めたって話だったよな……それにしては妙に綺麗だし、こんな足跡が綺麗に残ってるのも変だし、そもそも埋め方があんな上の天井部分だけくっつけて埋めているのがおかしいし……」

「地下に埋まっていたのにこんなに明るいのも変よね」


 話に割り込んで来たサイカの言う通り、地下に埋められていた町の筈なのに太陽が照りつける昼の様な明るさがあるのだ。

 先程ドラゴンが開けたあの天井部分の穴からの光だけでは、到底こんな広い町中を照らし出す事なんて不可能である。

 これはどうやら徹底的な調査が必要な様だ。

 とりあえず、この町の内部構造を少しでも知っているレウスが町の案内をする事にして探索が幕を開けたのだが、そこには誰もが予想していない現実が待ち受けていたのである。

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