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178.襲来! 生物兵器のドラゴン

 突然古代穴の周囲に現われた、四属性のドラゴン達はそれぞれ一匹ずつ自分の苦手な属性の魔物討伐部隊のメンバーに倒されて地面に倒れ伏した。

 しかし何故こうして突然ドラゴンが、それも複数体同時に現われたのだろうか?

 しかも自分達がこの古代穴のそばまで来た時に、恐ろしい程に良いタイミングで現れたのは果たして偶然と言えるのだろうか?

 レウス達の疑問は当然そこに行き着くのだが、この「旧」ウェイスの町がドラゴンと関係が深い場所だったとしても今回の戦いは腑に落ちない。


「何か、この展開って出来過ぎてない?」

「うん、それはサイカと同じ気持ちよ。多分エルザもソランジュも同じ気持ちなんじゃないかしら?」

「まあ……貴様達の言う通り、このタイミングが気に入らない。何故こうやってドラゴンが出て来るんだ?」

「それも何匹もってなると、この古代穴の周辺で目撃されているって言う例のドラゴンと何か関係があるんだろうな」


 それぞれのドラゴンの討伐を別々に担当していた女達が考察を進めている一方で、レウスとギルベルトは不穏な空気を感じ取っていた。


「空がざわめいている……これってもしかして、何か良くない事の前兆なんじゃねえのか?」

「だろうな。だがそれよりも俺は、向こう側からかなりの魔力を持っている生物が向かって来るのが魔力の強さで分かるよ」

「分かんのかよ!?」

「ああ。魔力探知の術を俺の身体に掛けておいたからな」


 何て高性能なんだ……と羨むギルベルトの横で、レウスは明後日の方角を指差している。

 ギルベルトがそのレウスの指の先を見てみると、遠くの空にポツンと黒い点が見えて来た。

 ここに来た目的、それから今までの会話の内容とここで討伐した四匹のドラゴンの情報を全て頭の中で整理した結果、近づいて来る黒い点の正体に気が付いた。


「おいお前等、休みは終わりだ……本命の敵のお出ましだぞ!!」

「何ですって!?」

「何だとっ!?」

「戦闘準備だ。今度の奴は恐らく今までのドラゴンとは比べ物にならないレベルの強さだろうから、全員油断するなよ!!」


 ギルベルトの呼び掛けに驚くサイカとソランジュにレウスがそう忠告しながら、自らも槍を構えて空を見据える。

 その間にも黒い点はどんどん大きくなって確実に討伐メンバー達に近づいて来ているだけでなくなるバサバサと羽ばたく音も段々と大きくなって聞こえて来た。

 恐らく、自分の配下として襲わせた四匹のドラゴンが倒されてしまったのでその敵討ちにやって来たのだろう、とレウスが推測する黒い点の正体は、その四匹のドラゴンよりも更に一回り大きな身体を持っている真っ黒なドラゴンだったのだ!!


「こいつが……あの時マウデル騎士学院を襲撃して来た奴と同じ、カシュラーゼが生み出した生物兵器のドラゴンだってのか!?」

「そうだよ。だから油断は出来ない。俺達全員で掛かってもやられてしまう確率は、今までのドラゴンよりも高いぞ!!」


 ギルベルトのセリフにそう答えるレウスの反応に、討伐部隊のメンバー一同は気を引き締める。

 この黒いドラゴンから魔力は感じるが生物としての生気を感じないのは、その赤い瞳に光が宿っていないせいもあるだろうが、普通のドラゴンからはまず感じられない程の魔力の多さが一番の原因だろう。

 生物兵器としてドラゴンの死骸を使っていると言う説が本当だとすれば、肉体の中に恐ろしい量の魔力を溜め込んでいるに違いない。


 そのレウスの予想が、早速最悪の形で当たってしまったのはこのすぐ後の事だった。


『ギャハアアアアアアッ!!』

「はっ……?」

「な、何だとっ!?」


 黒いドラゴンが雄叫びを上げて地面にその身体を叩き付けたその瞬間、レウスとギルベルトの周りを取り囲む様に控えていた女達四人を始めとする討伐部隊のメンバー達の目の前に、黒い霧が壁となって現われたのだ!


「ちょ、ちょっと何よこれ!?」

「くっ、駄目だ、物理攻撃がまるで効かない!!」

「魔術も駄目よ!」

「まさか……このドラゴンも魔術防壁を使うのか!?」


 あたふたするサイカ、ロングソードを突き刺して霧を破れないかを試みるソランジュ、魔術をぶつけて霧をどうにか出来ないか試してみるアレット、そして何かに気が付いたエルザ。

 この四人の女達の目の前に現れた黒い霧の向こう側には、レウスとギルベルトと黒いドラゴンだけが取り残されてしまった。

 霧は一部分だけで無く、古代穴の全てをスッポリと覆う形で出現した為にレウスとギルベルトだけでこのドラゴンの相手をしなければならなくなったらしい。


「まさかこのドラゴンってよぉ、俺達がこの討伐部隊のリーダー格だって思ってんじゃねーのか?」

「それは分からないが、何にしてもこのドラゴンを倒して霧から抜け出さなければ話が進まないってのだけは分かる」

「ああ、そうだな。もうこうなったら俺達だけでこの黒いデカブツをブッ倒してやるしかねえよなぁ!!」

『ガアアアアアアアアアッ!!』


 四属性のドラゴン達よりも、更にハスキーボイスの雄叫びを上げた黒いドラゴンの生物兵器に立ち向かう五百年前の勇者とリーフォセリア王国の騎士団長のバトルが今、幕を開けた。

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