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167.何処から来たの?

「ねえ、そう言えばずーっと気になってたんだけど、セバクターさんってリーフォセリアの人間じゃなかったの?」


 アレットのその一言が切っ掛けになり、セバクターが何故騎士学院に入学したのか、そして騎士団に入団せずに何故傭兵として生計を立てているのかが話の中心になった。

 前にちょっとだけ理由を聞いた様な、聞いていない様なで記憶が定かでは無いが、今回改めて考察するのも良いかも知れないだろう。


「さぁ……騎士学院に入学する人間や獣人の考えなんて人それぞれだからな。私達がズカズカと踏み込んで聞いて良い事でも無いし。でも、確かにそう考えるとあの男の生い立ちには謎が多いもんだ」


 前にも少し話題になった記憶があるが、あの男はそもそも無口なので自分の生い立ち云々はおろか、周囲の学生達とも挨拶程度でほぼ会話をしていなかったのは簡単にイメージ出来る。

 実際の話、レウスとセバクターが戦ったあの風呂場覗き見事件の後にエルザがセバクターについてもう少し詳しく知りたい、と思ってエドガーに話を聞いた。

 しかし、彼の個人情報が記載されている書類は幾ら親戚だとしても見せられない、と当たり前の話で閲覧許可が降りず、本人も既に学院を卒業して何処に住んでいるのかも定かでは無い上に、単独行動を好むタイプなので全くと言って良い程に彼と遭遇する機会も無かった。

 だからセバクターの動きについては全然掴めないまま、こうしてリーフォセリアの外に連れ出されて世界中を巡る冒険をしているのだ。


「何故かソルイール帝国にも居たし、あの男は本当に行動原理が分からないわよね。ギルベルト団長は何か知りませんか?」

「いーや、全然。騎士学院の事はエドガーから話が上がって来るのを聞いたりしているだけで、経営はあいつに任せているからな」

「そうですか……」


 騎士団長のギルベルトなら、もしかしたらセバクターの事について何か知っているかも知れない。

 その期待を込めて聞いてみたサイカだったが、返って来た答えがこれだったので現実は厳しかった。

 だが、そこで詰め寄ったのはレウスだった。


「ちょっと待ってくれよギルベルト。俺達が追い掛けているのはあの赤毛の二人の仲間かも知れない男だぞ? 今回の事件でその個人情報とやらもエドガーに許可を貰って見せて貰わなきゃ、捜査の役に立たないんじゃないのか? それに何より、あの男の過去を知っているだけであいつの行きそうな所の見当もつくと思うから、騎士団長のあんたがそんな初歩的な捜査をしない訳が無いだろう?」


 あれだけの大事件を起こして、今もまだ世界中の何処かを逃亡しているセバクターを捕まえようと言う気迫があんまり伝わって来ないギルベルトに対し、落ち着いた口調ながらも一気にレウスが詰め寄った。

 それを聞き、ギルベルトは気まずそうな顔をした後に顔を伏せてはぁーっと溜め息を吐いた。


「分かったよ……俺は確かにあいつの資料をエドガーの奴に見せて貰ったよ。アークトゥルスの言う通り、あいつの行動しそうな場所とかを絞り込むのには必要だからな。ただし、これはまだここだけの秘密だ。まだあいつが騎士学院の爆破事件の犯人だと決まった訳じゃないからな」

「ああ、それは承知の上だ。で……資料の内容は?」


 根負けしたギルベルトにレウスが更に質問すると、彼はまず去年の出来事を思い出してそれを話し始めた。

「俺がセバクターを最初に見たのは、あいつが去年騎士団の入団試験に来た時だ。入団試験を受けるに当たってこっちも大まかなプロフィールは把握しておかなければいけないから、あいつの入団用に提出された書類を見たんだよ」

「そこまでの経緯はどうでも良い。肝心なのはその内容だ。生い立ちが少しは書いてあったんだろ?」


 しかし、ギルベルトは更に気まずそうな顔になる。


「書いてあった。書いてあったけど……試験の後で調べたらその書類の一部が偽造だったんだよ」

「偽造?」

「偽造ってどういう事ですか? そんな事をする人間なんて、騎士団に入学出来ないのでは?」

「そうなんだよ。だけどな……」


 横から割って入って来たエルザの言う通り、書類の偽造は騎士団に嘘をつく事になるのでその時点で不合格の理由になる。

 ギルベルト曰く、セバクターは知識面では約八割程度でテストに合格していたのだが、それ以上に乗馬や剣術、弓術等の実技試験の成績が群を抜いて良かったのでかなり印象に残っていたのだ。

 騎士団としてもそんな優秀な人間を迎え入れない訳には行かないので、情けない話ではあるがちょっとの偽造には目をつぶってセバクターにはぜひ入学して貰いたいと思っていた。


「でも、あいつの方から騎士団への入学を辞退した。書類の偽造がバレるのを恐れたのか、それとも他の理由があったのかは分からないが、辞退するのも個人の自由だからな」

「で、偽造していた部分は何処だったんだよ?」

「あいつの実家の住所。記載上ではリーフォセリア王国の中にある辺境の村の出身って事になってたんだが、入団試験の後に調べてみるとそんな村は無いって分かったんだ。もう滅んだ村なのかと思ったんだが、全くの架空の村だった。そこが偽造箇所だよ」

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