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166.海を越えての再会

 外交的な事は何となくしか分からないメンバーだが、その中でソランジュは元々商家の出身だけあって理解が早かった。


「確かに団長様の言い分も分かります。国外からの声に耳を傾けない訳には行きませんからね。しかし、事件の当事者となっているこの二人、それからレウスの立場の配慮もお願いします」

「勿論分かってるさ。だからこそ、俺がここであのセバクターの野郎を取っ捕まえれば問題の半分は解決すると思ってんだよ」


 しかし、まだまだ問題は山積みなのでそう簡単には行かないのが現実だ。

 ともかくまずはレウスと合流しなければ……と思っていたその矢先、何かに気が付いた様子のサイカが声を上げた。


「ね、ねえ……ちょっとあれって……」

「えっ、あの薄汚れたヒヨコみたいな色の髪の毛は……」

「レウスっ!?」


 まるで何事も無かったかの様に、槍を肩に担いで全員が居る場所に向かって歩いて来る一人の黒いコートを着た男。

 それは間違い無く、レウス・アーヴィンだった。

 ただ、そのコートの至る所に飛び散っているシミの数々を見てみると、彼が決して何事も無くここまで下山して来たとは到底思えないのが良く分かる。

 そしてレウスは、本来であればここに居る筈の無いギルベルトの姿を発見して意外そうな表情になった。


「あれっ、ギルベルト騎士団長? どうしてここに……」

「久し振りじゃねえかアークトゥルス。俺の事は後で話すから、先にどうやってここまで下りて来られたのか話して貰えねえかな?」

「えっ? いや……普通に下りて来ただけだけど」


 あっけらかんとした口調でそう話すレウスに対して、アークトゥルス呼ばわりしたギルベルトの目は一切笑っていない。

 何故なら、槍を持っていない彼の左手は大事そうにワイバーンの尻尾を抱えているからだ。


「普通に? だったらその服のシミと左手のでっかい尻尾の一部は何なんだ? この女達から聞いた限りだと魔物の大群に襲われたって話だったけど、まさかそれ全部倒して来たんじゃないだろうな?」

「あー違う違う。全部じゃないよ。七割位倒したけどさ」

「……そうか」


 流石のギルベルトも、事前にどんな魔物が居たのかを四人の女達から聞いていただけにリアクションに困ってしまう。

 レウスが言うには、あのワイバーンを倒した後に頂上からなるべく一直線に下りられるルートを探して森や林の中を突っ切って、崖の緩い場所を下って一気に下山したらしい。

 そしてレウスもギルベルトが何故ここに居るのかを聞き、納得した表情になった。


「そっちの事情は分かった。だけど、エドガーさんの様子がおかしいのは確かに気になるな」

「だな。俺達もそこについては気になってんだよ。お前がここに来るまでの間に色々話していてさ」


 ウェイスの町まではここから歩いて十分程なので、そこまで歩きながらレウスとギルベルトは話し込む。

 段々と話が複雑になってきたが、今の自分達が解決しなければならないのはまずこの地に現れたドラゴンの生物兵器の話なので、一旦それ以外の話は忘れる事にした。

 だが、それに付随して気になるのはセバクターの行方である。

 北に向かったと言う情報が確かに出ている以上、砂漠の手前までしか来ていなかったあの傭兵のサィードはともかくとして、こっちの方で出会ったギルベルトがセバクターの姿を見ていない事に違和感を覚えていた。

 何か隠しているのか? と最初は思ったレウスだったが、ギルベルトの様子を見ると本当にセバクターとは出会っていないらしい。


「だとしたらセバクターの野郎は何処に行っちまいやがったんだ? ウェイスの町の先にあるのはそのでっかい穴だけって俺は聞いているんだけど、お前等と一緒にそこに行ってみてそこにも居なかったとしたら誰かと見間違えた可能性もあるんじゃねえのか?」

「それは確かにそうだろうな。でもさ、あんなピンク色の髪の毛の人間ってそうそう居ないと思うんだが……」


 バサバサ、ボサボサの金髪ヘアースタイルからも分かる様に、ファッションには無頓着のレウス。

 かつてリーフォセリアで自分に色々と情報を教えてくれた、私服姿のアンリとは正反対の人間である。

 五百年前に旅をした時も、ピンク色の髪の人間は居ない事は無かったが余り見かけた記憶が無い。

 最近であったピンク色の髪の人間と言えば、ソルイール帝国の騎士団長セレイザ位だろうか?

 そこでファッションの事を良く分かっていそうな女達四人に髪の色について尋ねてみると、サイカが心当たりがあるらしい。


「あー、そうそう……確かピンク色の髪の人間が生まれやすい土地があるって聞いた事があるわ」

「そうなのか?」

「ええ。確か南の方に行くに連れてそうした人間が生まれやすいって。地理で言えばエスヴァリーク帝国とか、それから今はもう戦争で無くなっちゃったヴァーンイレス王国とか、そっちの方が遺伝的な意味でピンク色の髪の人間が生まれやすいって」

「へ~、そうなんだ。そっちの方までは私も出かけた事が無いから知らなかったわ。せいぜいアイクアル王国の東部くらいまでだったからなあ」


 しみじみと思い出を語るエルザを横目に、セバクターの行方についての話から段々と彼の生い立ちについての話に切り替わって行く。

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