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162.エスケープの作戦

「あーもう、しつっこいのよ!!」


 躍り掛かって来る小型の魔物をシャムシールで一刀両断し、サイカは舌打ちをしながら山を下りる。

 隣ではなく先程の魔物の襲撃で負傷してしまった部分に自分で回復魔術を掛けながら、魔物達の追撃をかわして下山するアレットの姿が。

 相手の数が多過ぎる上に、地元住民でも無いので土地勘が全くのゼロな以上、先導している騎士団の部隊長と魔術師部隊の隊長の道案内で逃げるしか無いのである。

 だが、同じく魔物と戦いつつ一緒に逃げているエルザがハッとした表情になる。


「……おい、そう言えばレウスを見なかったか!?」

「え、いや……見ていないぞ?」

「何だって!?」


 魔物達から逃げるのに精一杯の現状では、正直言って他のメンバーの安否確認をする余裕なんて無い。

 追撃を受けている事もあって、頂上からかなりのペースで下りて来た女達四人は、ここに来てようやくレウスが着いて来ていないのに気が付いた。


「先に行っちゃったのかしら!?」

「いや、確かレウスは私達を手で誘導していたから、私達よりも後に下りている筈よ!!」

「おい待て、貴様達を含めた私達は確か……騎士団の団員や魔術師達に続く形で一番最後に下りて来た筈だぞ。つまり私達の後ろにはレウスしか居ない筈なんだ」

「何だと……お主の言っている事が本当なら、レウスの姿が見当たらないのは確かに変だな」


 アレット、サイカ、エルザ、ソランジュそれぞれのレウスの行動分析が終了し、彼がまだこの上に取り残されていると結論が出た。

 となればここで引き返してレウスを探しに行くべきなのかも知れないが、あいにく今の状況は魔物達に追撃されている真っ最中で、四方八方からその魔物達が襲い掛かって来ている。

 しかも凶暴なワイルドボアや、大きな色とりどりのトカゲ等が山の上……つまり彼女達の後ろから追い掛けて来ているので、ここで引き返そうものなら自分達がやられてしまいかねないのだ。

 それに自分達とは違うルートでレウスが下山している可能性も無きにしもあらずなので、ここは彼の無事を祈りつつ自分達が下山するのが彼女達四人にとっての最優先事項なのである。


(魔物討伐が余りにも進んでいない……と言うよりも、魔物って確かに単独行動を好まず群れて行動するのが当たり前だが、ここまでチームワークが抜群なのか!?)


 所詮魔物だ、と心の何処かでタカをくくっていたかも知れない自分を恥じつつ、ソランジュはロングソードで行く手を阻むトカゲを突き刺して一撃で仕留める。

 だが追っ手の魔物は他にもまだまだ居るので、これでは倒しても倒してもキリが無い。

 それに無事に麓まで辿り着いたからと言って、魔物達がそこで追撃を諦めてくれるかどうかも分からない以上、この魔物達をどうにかして一気に叩き潰せないかどうかを考え始めるソランジュ。


 それは他の三人も同じ思いだったらしく、何か使えそうな場所や物が無いかを、周りをキョロキョロと見渡しながら確認する。

 すると真っ先に「それ」が目に入ったのが先頭を走っているアレットだった。


「ねえちょっと、あそこってどうにか出来ないかしら!?」

「えっ、何処?」

「ほらあそこよ、あの土砂崩れが起こっている崖!」

「あそこがどうかしたのか?」

「あそこを魔術で崩して、道を完全に塞げば後ろからの追っ手もこれ以上は私達を追って来られなくなると思うわ!!」


 受け答えをしていたサイカとエルザがハッとした表情になるが、ソランジュは冷静に物事を見る。


「崩すのは良いがどうやって崩すんだ?」

「それは……ええと、魔術よ!」

「魔術って言っても私達はレウスの様に大きな魔術は使えないし、土砂崩れを起こそうにも上手く行くか分からんぞ?」


 だが、そう言われても今はこんな方法しかアレットは思いつかなかった。


「とにかくやるだけやってみて、失敗したらまた次の手を考えれば良いと思うわ!」

「……分かったよ。それでお主の考える魔術は?」

「水の魔術を大量に土砂崩れにぶつけて、崖崩れを引き起こすの。下の方に大きな穴が開いてえぐれているから、あそこを集中的に狙うわよ!!」


 しかし、後ろから追って来る魔物達に追いつかれる危険性も高いので勝負は一回きりである。

 それでもこの圧倒的な戦力差を覆す為には、何とかしなければならないのだ。

 四人はそれぞれ使える水系統の魔術を、山を下りながら詠唱する。

 特にアレットは風属性の強化を施した武器と防具を装備しているので、強化する前よりも詠唱のスピードが速い。

 一本道の両側に切り立っている崖を崩せばひとたまりも無いだろうと考えつつ、まずはそのアレットが特大のウォーターボールを全力で崖の穴目掛けて投擲。

 それに続いてサイカ、ソランジュ、そしてエルザも水の魔術を崖に向かってぶつける。

 だが……。


「くそっ、惜しいな!!」

「もう……ちょっとなのに!!」


 水を含んだ事で脆くなった分、崖が崩れそうで崩れてくれない。

 これじゃダメだ……と諦めつつ再び逃げるべく足に力を込めたアレット、エルザ、サイカの三人だったが、エルザはバトルアックスを大きく振りかぶってジャンプ。

 そして岩壁が脆くなっている所に思いっ切り、限界ギリギリまで魔力を乗せた一撃をぶつけた。

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