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161.頂上の襲撃

 そして予想通りと言うべきか、はたまた最初からここで両陣営が激突する様に魔物達に仕向けられていたと言うべきか。

 頂上の広場に差し掛かった一行に四方八方の林の中から、ワラワラと大小の魔物が一斉に襲い掛かって来た。

 この展開を予想していたレウスは、あらかじめ大型の魔術をすぐに発動出来る様にしていたのだ。

 それはかつて、マウデル騎士学院でエルザに目撃されてしまったアークトゥルス時代の必殺技の一つである「クレイジー・アルカディア」。

 この世界に存在している魔力の四属性全ての大小様々なエネルギーボールを、武器から出る衝撃波によって縦横無尽に四方八方目掛けて乱射する、広範囲かつ超強力な範囲魔術攻撃。

 かなり魔力の消耗も激しいのだが、常人の十倍の魔力を持っているレウスにとってはなんて事は無い。

 だが長さのある武器で無ければ、エネルギーボールを撃ち出す為の遠心力が弱くなるのでその威力が半減してしまう。


 魔力を注ぎ込んでいる事により、鉄製の部分がその魔力によって内側から焼け始めているので槍全体から白い煙が立ち上っている。

 もう一つの欠点の、魔力を注ぎ込んでいる途中で敵から攻撃を受けると準備を中断せざるを得なくなってなかなか魔力がたまらないので、どうしても隙が大きくなってしまう。

 しかし今回は既に魔力を注ぎ終えている上に、最低限の魔力しか使っていない。

 幾ら強力な魔術を習得していても、魔力切れで使えなければ何も意味が無いのだ。


 レウスは低く身構え、自分達に防壁魔術が掛かっているのを今一度目視で確認してからなるべく水平に槍を薙ぎ払った。

 するとその瞬間、火属性の赤、水属性の青、土属性の黄、風属性の緑のそれぞれの色を纏ったエネルギーボールが、衝撃波となって形を変えつつレウスを中心とする四方八方に向かって飛んで行く。

 自分達に向かって来ていた大小様々な魔物達がそのままエネルギーボールのターゲットになった。


 火属性のボールが当たった魔物は一気に燃え上がって焼死し、水属性のボールが当たった魔物はボールが爆散した力で溺死し、土属性のボールが当たった魔物は土の重さで圧死し、風属性のボールが当たった瞬間にその風の刃で魔物の全身を八つ裂きにする。

 これで一気に三十体の魔物を倒す事に成功したが、まだまだ第二次攻勢、第三次攻勢と魔物達のバックアップが控えているので、とにかく今は一か所に固まらずに山から下りる様に手を大きく動かして討伐メンバー達に合図をする。


「早く向こう側のルートでウェイス方面へ抜けるんだ! 無駄な戦いは避けて、とにかく山を下りるのに専念しろ!!」


 運動能力が低めの魔術師達が攻撃魔術を中心に魔物達に攻撃しつつ、魔術が不得意な騎士団員達が魔術師達の下山を援護する形で全員が山を下り始める。

 しかしこれで諦める魔物達だとはレウスも思っていないので、ここは全員が逃げるのを確認しつつ山道というシチュエーションを利用した逃走方法を考える。

 と言っても麓まで一気に駆け下りる事の出来るルートは無い。

 だからと言って、わざわざ正規のルートを外れて林の中に入り込んで逃げる様な真似はその林の中からやって来ている魔物達に囲まれてしまう危険性が高いのでそれも駄目である。

 ならどうするか、と全員が逃げたのを確認して自分も頂上部分から下りようと走り出した……その時だった。


「……ん!?」


 バサッ、バサッと何処からか翼がはためく音が聞こえて来る。

 これはまさか……と思いながらも今は気にせず、とにかく下山する為の道の方に進む為に足を止めないでいたレウスの目の前に、ズゥゥン!! と地響きと大きな音を立てて何かが降り立った。

 それもまた、レウスが予想していた通りの……。


「……邪魔するつもりか……この俺を……」


 特有の低い姿勢でレウスの目の前に降り立ったのは、レウスがこの状況で一番出会いたくない相手……この頂上部分で自分達を襲撃する様に魔物達に指示を出していた……のかどうかは分からないが、少なくとも魔物達を束ねている存在なのは間違い無い存在。

 ここに来るまでに何回か話で聞いていた、赤サビ色の身体を持っているワイバーンである。

 しかも不思議な事に、周囲を見てみるとあれだけ自分達に襲い掛かって来ていた魔物達が今は一匹も見当たらなくなってしまった。

 もしかすると、このワイバーンはレウスがこうやって討伐部隊のメンバーを先に行かせて自分が最後に下りようとするのを見抜いていたのかも知れない。

 それかもしくはレウスが逃げ遅れたので、彼だけでも仕留めようかと思ってこうして下りて来たのかも知れない。

 どちらにしても、この状況では自分とワイバーンが頂上の広場で一対一のタイマン勝負をしなければならなくなったのをレウスは察して、これまで何回も魔物を相手に戦って来ていたストレスもあって頭の中で何かが切れてしまった彼は、ワイバーンに向かって槍を構えながら叫んだ。


「そうか……だったら今だけはもう戦いが嫌だなんて言ってられないな。敵に回した事を後悔させてやるよ。この俺、レウス・アークトゥルス・アーヴィンをなあっ!!」

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