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158.意外な乱入者

 ハンマーを避けて反撃しても、このままではイタズラにスタミナを消耗するだけだ。


(くそ、ファラリアだけでも何とか逃がしてやれたのは良いけど……)


 これじゃあジリ貧だぜと思った瞬間、ゴーシュの目の前に迫っていた若い男の足に矢が突き刺さった。


「ぐぅあああっ!?」

「えっ!?」


 突然の出来事に、矢を射られた若い男はともかくゴーシュも動きが止まる。

 若い男が取り落としたハンマーがカランカランと音を立てて床を転がり、自分の目の前まで転がって来たので咄嗟にそれを拾って構えるゴーシュ。

 まだ戦いは終わった訳では無いので、最後まで油断は出来ない。若い男が完全にギブアップするまでが戦いだ。

 その時、片膝をついて荒い息を吐く若い男を厳しい目つきで見据えるゴーシュの耳に、足音が複数聞こえて来る。

 そちらの方に目を向けてみれば、どうやらファラリアに呼ばれた騎士団員達が騒ぎを聞きつけてやって来た様なのでこれで一安心出来る……とゴーシュは息を吐く。

 だが、やって来たのは騎士団員だけでは無かった。


「おいおい、ホルガーの奴はまたやらかしたのかあ?」

「え?」

「な、何であんたがここに……!?」


 黒髪の若い男が驚愕の声を上げた、騎士団員と共に倉庫の中に突入して来た相手。

 銀髪をオールバックにして、その前髪がちょっと垂れているこちらも若い男。筋骨隆々な体躯にゴーシュと同じ位の背の高さがあり、手にはロングバトルアックス……いや、斧の部分が大きなハルバードを握っている。

 その傍らにはファラリアの姿もあるが、彼も騎士団員なのだろうか……と疑問に思うゴーシュ。

 そんな彼の目の前で銀髪の男は黒髪の若い男を素早く拘束し始め、強引に立たせて騎士団に引き渡した。


「あんた、あのハンマー使いの男と知り合いなのか?」

「俺? あーそうだよ。と言ってもそんなに長い付き合いでも無いし深く知っている訳でもねーけどさ。でもまさかビックリしたぜ。いきなりこの女の人に「私の夫が危険なんです、騎士団に連絡して助けて下さい」って言われたんだからさ」


 どうやらファラリアはまずこの男に助けを求めて、それから騎士団に連絡が行って全員で一緒にここに駆け付けたらしい。


「本当か、ファラリア?」

「そうよ。この人が居なかったら私も貴方も一体どうなっていたか……本当に感謝しなきゃいけないわね。助けてくれてどうもありがとうございました!」

「私からも礼を言わせて貰いたい。私と、それから妻を助けてくれて本当にありがとう。もし良かったら名前を教えてくれないか?」

「俺? 俺はサィードってんだ」

「サィード君だな。君はこのグラディシラの住人なのか?」

「ああ、今はそうだよ。だけどこの国から離れてまた世界中を旅しに行こうと思っててさ」

「旅……?」

「もしかして、貴方も冒険者なんですか?」


 旅をすると聞いて反応したゴーシュとファラリアに対し、サィードと名乗った男は軽く頷いた。


「まぁな。冒険者って言うか俺は傭兵やっててよぉ。この国では色々と稼がせて貰ったからまた他の国に行ってみようって考えてんだ」

「そうなんですね。……それじゃ、さっきのハンマー使いの男と余り知り合いじゃないって言ってたのも頷けますわ」

「確かにそうだな。でも確かサィード君はさっき、あの男に対して「またやらかした」とかって言ってた気がするんだが、あの男はもしかしてこれ以前にも何か問題を起こしていたのか?」


 だとしたらかなりタチの悪い男を相手にしていたらしいと考えるゴーシュだが、サィードの発言でその予想を遥かに上回るあの男のタチの悪さが判明した。


「まぁな。あいつは表向きは便利屋なんだけど、裏ではかなり犯罪に手を染めていてさ。俺がこの国に来たのは少し前なんだが、来てすぐにあの男には気をつけろって闘技場の奴等に警告されたんだよ。何でも詐欺をやって捕まったとか言ってたけどさ、今回は……ええと、ああそうそう……リーフォセリアからやって来た冒険者とトラブルを起こして捕まったらしいんだよ」

「え?」

「リーフォセリアからの冒険者ってまさか……こんなボサボサの金髪の黒いコートの男?」

「あれ、あんた等もそいつの事知ってんのか? マウデル騎士学院の連中だろ、あの黒いコートの制服ってさ」


 まさか……いや、そうだとしたら間違い無い。

 この瞬間ゴーシュとファラリアの頭の中で、その金髪の男が誰なのかが一瞬で判明した。


「あの……それ多分、私達の息子です」

「え……そうなの?」

「うん……多分間違い無いと思う。マウデル騎士学院の制服でボサボサの金髪で、もしかして女と一緒じゃなかったか?」

「ああ、そう言えば四人位の女を連れていたな。俺が最初に会ったのは地下闘技場だったんだけど、その時から既にハーレム状態だったよ。でもまさか両親までこの国に来ているなんて思いもしなかった」

「こっちこそ、まさか自分達の息子と面識がある人と出会えるなんて思ってもみなかった……って、あれ?」


 そこでふと、ゴーシュはこの男のセリフの違和感に気が付いた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。マウデル騎士学院の制服が黒いコートだって何で知っているんだ?」

「え? だって俺もマウデル騎士学院の卒業生だからだよ」

「ええ~っ!?」


 これはもう少し、色々と話を詳しく聞く必要がありそうだ。

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