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155.忍び寄る危機

「だけどな、ああ言ったワイバーンとかドラゴンとかを相手にする上で最も厄介なのは、あいつ等が空を飛ぶ事なんだよ」

「あー……」

「実際さ、俺と一緒に学院でドラゴンの生物兵器と戦った時もそうだったろう? あの生物兵器だって空を飛んで俺達に体当たりして来たり、俺達の攻撃が届かない所まで逃げていたりとかなりフラストレーションが溜まりまくっていたよな」


 そう、そうなのだ。

 レウスが一番主張したいのは、空を自由に飛び回れる存在が今度のメインターゲットだと言う事である。

 空中戦に持ち込まれれば一気に不利になってしまう。

 魔術で幾ら脚力を強化してジャンプ出来ようが、そのジャンプで届く距離にも限界がある。

 広範囲に発動出来る魔術が使えようが、その魔術の発動範囲に入っていなければまったく意味をなさない。

 槍だってバトルアックスだって、まずは攻撃が当たらなければただの鉄の塊にしか過ぎないので、まともに攻撃出来るのは弓か魔術しか無い。

 鳥の獣人であれば翼を持っているので追従出来るが、そうではない獣人や人間は飛ばれたら一気に不利になってしまう。


「自分の攻撃が届かない範囲からチマチマと攻撃されるのって物凄くストレスが溜まるんだよ」

「へー、貴様でもストレスを溜め込む事ってあるんだな」

「……だから、攻撃の届く範囲に居る時に一気に攻撃して仕留めないと長期戦になるから気を付けないとな」

(エルザの奴、綺麗にスルーされた……)


 その二人のやり取りを見ていたソランジュが呆れ顔になったが、彼女もまたドラゴンやワイバーンとの戦闘経験があるのでレウスの言っている内容には同意している。


(騎乗用のワイバーンとかがあれば乗って戦えるのだが、見た所こっちには馬しか無いし、鳥人も居ないから対抗するのはかなり難しいだろうな。私が思い付く限りで考えられる対抗策は後……狭い場所に誘い込む位かな)


 以前冒険者として活動していた時、ドラゴンを相手にしていたソランジュはその相手が空を飛べない場所に誘い込んで倒した事がある。

 その経験から、幾ら相手が空を飛べるからってその場所が無ければ飛べないので誘い込んでしまえば良いと考えたのだが、この山に入るのは実は初めてなので正直どうなっているのか見当が付かない。

 そんな場所があれば良いのだがな、と思いつつソランジュはその対策法を補足情報としてエルザ達にも伝え始めた。



 ◇



 そんな会話をしつつレウス達が進軍している頃、イーディクト帝国の帝都グラディシラではとある事件が巻き起ころうとしていた。


「今日は何処へ行くの?」

「そうだな……商人の一人から聞いたんだが、何でもこのグラディシラには地下に闘技場があるらしいんだ。その辺りに向かってみようと思って」

「ええー、そこって確かレウス達が捕まっちゃったって言ってた場所でしょ。危なくない?」

「近くから場所を確認するだけだよ。その闘技場の周辺をリサーチしておけば、また何かビジネスチャンスが生まれるかも知れないからな」


 宿屋で朝食を終えたゴーシュはそう言って、ファラリアを連れ立って闘技場へと向かい始める。

 しかし、闘技場から離れているメインストリートから一本脇に入った路地裏で、それは突然起こった。


「……えっ?」

「ね、ねえあれって……」


 何か物音が聞こえたのでふと覗いてみた路地裏に、何と人が倒れている。

 それもかなり重傷らしく、傷を負ってピクリとも動かないライオンの獣人だ。

 反射的に駆け寄ってその獣人の容体を確認するゴーシュとファラリアだが、これが罠だったと知るのはすぐ後の事だった。


「おい君っ、しっかりしろ!!」

「大丈夫……えっ?」


 獣人に呼び掛ける二人の上に、バッと影が広がる。

 その影に気が付いた時にはもう遅く、ゴーシュとファラリアは避けられない状態で上から降って来た大型の網の中に入ってしまった。


「ぶほっ!?」

「なっ、何よこれぇ!?」


 突然の事であたふたしながらも何とか脱出しようと試みる二人の目の前で、重傷を負っている筈のライオン獣人がのそりと起き上がった。

 そして腕組みをしながら二人を見下ろし、高笑いを上げる。


「はははははっ、まさかこんな古い手に引っ掛かるなんて思ってもみなかったぜ!」

「な、何だと?」

「何よそれ、どう言う意味!?」

「どう言う意味も何もそのままの意味だよ。お前達を捕獲しろってリーダーからの命令なんでね。ほら……そっちに居るだろ」

「えっ?」


 ライオン獣人が毛むくじゃらの腕で指し示した方向を見てみると、そこには何時の間にか多数の武装した男女の人間や獣人が路地を塞ぐ形で立っている。

 その集団の先頭に立っているのは、赤い袖無しの上着を着ている黒髪の若い男である。


「なあリーダー、こいつ等で間違い無いんだろうな?」

「ああ、合ってるよ。こいつ等を人質にすればあいつだって俺の怖さが少しは分かるだろうからな。これは俺の復讐なんだよ。あんた達に直接の恨みは無いけど、ちょっとばかし俺達を手伝って貰わなきゃな」


 あいつ? 復讐? 手伝って貰う?

 話が飛躍し過ぎて全然ついて行けていないゴーシュとファラリアは、ライオン獣人と赤い上着の男に大きな袋に詰め込まれ、更に木箱に入れられてフタをされた状態でその場から連れ去られてしまった。

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