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151.実力の片鱗

登場人物紹介にセレイザ・ジアラルン・アーシェイドを追加。

https://ncode.syosetu.com/n0050fz/2/

 自信家な一面を覗かせるサィードは仲間になってくれないらしく、クルリと踵を返して歩き始めた。

 そんな彼に対し、ソランジュが一つ聞きたい事があるので呼び止める。


「ちょっと待ってくれ」

「あ~ん、何だぁ?」

「お主、確か雑魚を全て倒したって言っていたが……この辺りでピンク色の髪の毛を持っている若い男の傭兵を見なかったか?」

「いいや、俺は見ていないぜそんな奴。こっちに来た奴なのか?」

「ああ、その話を聞いて会いたい男なんだが……そうか、見ていないか」


 もしかしたら一緒に雑魚敵を討伐していたのかも知れないが、サィードがこの時点で嘘をつく必要も無いと思うので一応信じておく。

 ただ、このサィードと言う男はなかなか掴み難い人物なのでもう一つだけ質問をするソランジュ。


「ならもう一つ聞かせてくれ。本当にお主だけなのか? その雑魚敵を一掃したのは」

「ああ、俺だけでやったよ。何だよ姉ちゃん、俺の実力がそんなに信用出来ねえってのか?」

「んん……どんな男かも分からないしな。仲間が大勢居たっておかしくは無いだろう」

「はっ、それならこの先に行って自分の目で確かめてみりゃあ良いんじゃねえのか? 俺がそんな仲間が居るだなんてバレバレの嘘つく訳ねえだろうが。それでもまだ怪しいってんなら俺のこの斧が作り上げた屍の山を見てみりゃ良い。大きな斧の部分でつけられた傷と、槍の部分で突き刺された傷の魔物の屍だらけだからよお。それに見ての通り、俺の服はこうやって魔物の返り血で沢山だ。……そいじゃ俺は急ぐんでね。あばよ」


 すぐそばに待機させていた自分の馬に乗って、まるで風の様に去って行ってしまったサィードを見て思わずサイカが一言。


「何よあの男……スカしちゃって。レウスがアークトゥルスだって知ったらびっくりすると思うわよ」

「おいおい、俺頼みか?」

「もしかしたら私達でも勝てる可能性があるのかも知れないけど、でも前に感じた通りあの男はかなり強いと思うわ。レウスは今改めてこうして向かい合って話してみて、どう思った訳?」

「俺もサイカとは同じ意見だ。あの男は強いだろうな」


 だが、あんなスカしているんだか飄々としているんだか分かり難い性格のサィードとは、いずれにせよきちんと戦う時が来るかも知れない。

 漠然とそう思いながら再び進軍を開始した魔物討伐部隊の一行だが、サィードが自分で言っていた通りの光景がもう少し進んだ場所に広がっていた。


「なっ……何だこれは……!?」

「うっそ、こんなのってちょっとやり過ぎじゃない!!」

「酷過ぎる……まるで嵐が直撃した後の街中みたいな感じね!」


 レウスもアレットもエルザも、余りの惨さに絶句する。

 そこ等中に魔物の屍が転がっているだけでなく、その一つ一つが完膚なきまでに叩き潰され、絶対に起き上がって来ないだろうと断言出来る位に切断されていた。

 あのサィードの背負っていた麻袋に切断された先の部分が詰め込まれていたのだろうと思うと、彼が自分一人で全てこれを討伐したと言う話はどうやら本当らしい。

 もしかしたらサィードは、今の皇帝シャロットと肩を並べる位の実力者なのだろう……と思っている一行だが、自分達がここでビビっている訳にはいかない。

 何故なら、自分達が本当にビビらなければならない相手はこの先の砂漠地帯の中に居るからだ。


 結局、その日は確かに魔物の集団とそれ以上エンカウントする事も無く、今までの戦いの頻度がまるで嘘だったかの様に快適に進軍をする事が出来たのだ。

 逆に戦わなさ過ぎて手持ち無沙汰な気がしないでも無かったが、こうやってスムーズに北に向かえるのは間違い無くサィードのおかげである。

 あの男は自分達の味方にはなってくれなかったが、かと言って敵として自分達の前に現れた訳でも無いので依然として油断出来ない存在である。


「あの男は自分の事を傭兵だって言っていたけど、便利屋のホルガーが話していたのは地下闘技場の用心棒として活動していて、その前の話については全く不明って話だったな」

「ああ。あの男のせいで助かった事もあるし、逆にあの男のせいで私とお主がホルガーに殺され掛けた事もあったし……本当に敵なのか味方なのか分からない存在だ」


 レウスとソランジュは、あの便利屋のホルガー絡みのエピソードと今回の魔物討伐部隊の進軍を助けてくれたエピソードの対比で、サィードと言う男についてますます興味を持つ様になっていた。

 彼は傭兵としての仕事をキッチリこなしているだけなのだろうが、あのスカした性格がサイカは気に入らない。


「確かに凄い男なんだろうけど、あの性格って軽すぎてどうも好きになれないわねー、私は」

「自分だって軽く見えるって言われる事は無い?」

「え? 私は言われた事無いわよ。明るい性格だって言われた事は何回もあるけどね」


 アレットに尋ねられたサイカは自分の過去の話を持ち出してそう返答したが、今はそれよりもサィードの正体についてだ。

 この魔物討伐案件が終わってグラディシラに戻ったら、文字通り手土産の一つでも持ってサィードの元に行ってやろうと五人は近いながらその日は眠りについた。

 最初の魔物ラッシュの疲れを感じつつ……。

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