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140.繋がらない

 武器の強化については約半日掛かると言われたので、その間はまた各自図書館に行って調べ物をしたり、北の地について調べたり、城下町を散策しに行ったりと自由行動を取るレウス達五人。

 その中で、レウスは少し早い様な気もするがリーフォセリアの実家に通話魔術で連絡を入れておく事にする。

 イーディクトまでやって来ると言うのであればそれなりの時間が掛かるだろうから、もしこの地で再会する事になったらその間は北に向かわずに待たせて貰った方が良いであろう。


(父さんがまさかこっちまで来るとか言い出すとか思って無かったけど、とりあえず約束通りに連絡は入れておかなきゃな……)


 以前、この帝都グラディシラに来た時に使った通話スポットに再度出向いたレウスは、再度係の人に頼んでリーフォセリアまで通話を開始する。

 だが、その通話が繋がらないのだ。


(あれ? 出ないな……)


 商人としてリーフォセリアの各地を回って忙しいゴーシュはともかく、母のファラリアは大体家に居る事が多いので大抵は出てくれる筈なのだが、呼び出し音が鳴り続けるだけで二人とも出る気配が無い。

 幾ら五百年前の勇者アークトゥルスだったとしても、流石に通話魔術の向こう側の状況を把握するのは無理なのでここは一旦諦めてまた後で通話をしてみる事にする。

 もしかしたらタイミング悪くファラリアも買い物か何かに出かけているだけかも知れないので、時間を置いて再度かけ直す方が良いだろうと思ったからだ。


 なので一度センレイブ城に戻り、武器の強化はどの様な感じで行われているのかを見せて貰う事にする。

 こういう時でも無ければなかなか強化の現場を見せて貰う事は出来ないので、魔術にも鍛冶にも疎い自分の勉強にはピッタリである。


「あれをああしてあの魔術で組み込めば、今よりも数段上の強度を期待出来るんですよ」

「へぇーっ、五百年前じゃ考えられない進化だな」

「そうですね。この二百年余りでかなり進化しましたから」


 シャロットのおかげ(?)で、既に自分が五百年前ま勇者アークトゥルスの生まれ変わりだと知っている魔術師の人間や獣人に教えて貰いながら、レウスは自分の前世の技術と比較してその進化をヒシヒシと感じていた。

 確かに、流石に五百年と言う長い時間を経て技術が色々と進化をするのは当然の話だろう。

 逆に五百年経っても何も進化していなかったら、それはそれで怖い。


(進化しないのは人間や獣人の……いや、この世界に生きている全ての生物の心じゃないかな……)


 技術は色々と進化しても、この世界の生物の感情だったり権力だったり社会構造だったりは五百年前と何ら変わっていないらしい。

 権力を持つ者が居て、その下にどんどん続いている階級の階層があって、弱い者は虐げられる。

 残酷な話だが、この世界では金と権力が全てなのだろうと言うのはアークトゥルスとして生きていた五百年前も、それから今の時代でも変わらないのだとレウスは思い知らされていた。

 そうでなければ、あのソルイールの傍若無人な皇帝バスティアンの様な男があの地位に居られる訳が無いからだ。


 そんな事を考えながら知識と技術を教えて貰っていたレウスの元に、二人の人物がやって来た。


「あら、レウスもここに居たの?」

「アレット……お前も武具の強化を教えて貰いに来たのか?」

「教えて貰いにって言うよりかは見学なんだけど、陛下が一緒に様子を見に行きたいとおっしゃるから一緒に来たの」

「陛下?」


 アレットの後ろからヌッと現れたのは、相変わらず着痩せするタイプの肉体を持っている皇帝シャロットだった。


「あ、陛下……」

「どんな感じになっているか様子を見に来たんだが、レウス君も興味があってここに?」

「はい。色々と教えて頂いてます」


 突然のシャロットの訪問に、そう答えたレウスだけでなく魔術師達や鍛治師達も揃って礼をする。

 そんな一同に対し、シャロットはとんでもない事を言い出したのだ。


「どれ……その武器と防具の強化が終わったら、どんな感じになったのかを儂が直々に確かめてみよう」

「えっ……」


 いきなりこのおじいちゃんは何を言い出すのか。

 口には出さないもののついそう思ってしまったレウスの気持ちは、魔術師達や鍛治師達も同じらしい。


「何をおっしゃいますか、陛下!?」

「そ、そうですよ。陛下がわざわざ実験に付き合う事はありません!」

「危険です、どうか考え直して下さい!」


 しかし、シャロットは自分が武具の強化テストの相手をすると言って聞かない。


「確かに逆の立場なら儂も君達と同じ気持ちになっただろう。だが、儂だって昔は冒険者として世界中を旅して回っているんだし、何より他国の重鎮と会談に向かう時に儂に武装させているのは臣下達だろう」

「それは多分、陛下に万が一の事があったら大変だからだと思いますが……」


 レウスも思わすそう言ったが、シャロットの決意は変わらないらしい。


「とにかく儂が強化武具の試験相手だ。普段政務に精を出して座りっ放しだと身体がなまってしまうからな。強化が出来たら呼んでくれよ」

「あ、ちょっと陛下……」


 一方的に決めてそのまま部屋を出て行ってしまったシャロットに対し、どうしたものか……とレウスやアレット達は困惑するしか無かった。


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