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139.強化する属性は?

「ねえレウス、ソランジュが凄く機嫌悪いみたいだけど何かあったの?」

「まあ……色々とな。詳しくは本人から聞いてくれ。不可抗力だって分かるから」


 随分とキャンセルに時間が掛かったのを心配していた残りの三人が、センレイブ城に戻って来た二人の様子を見て違和感を覚えるのは当然だろう。

 まさかホルガーが襲い掛かって来たので、ソランジュを武器として使いました……なんて淡々と説明されても理解に苦しむだけである。

 レウスにそう言われたアレットとサイカが当のソランジュに話を聞いている間に、エルザから自分の武器と防具を手渡されるレウス。


「ほら、これが貴様の武器と防具だ」

「どうも」

「今の段階ではまだ何も強化がされていない素の状態なのだが、貴様は自分が強化したい属性の希望はあるか?」

「属性の希望か……」

「ああ。五百年以上前の時代でも、貴様は武器と防具の強化をしていたと思うんだが……違うのか?」


 そう言われてみれば確かに、アークトゥルス時代でも自分は世界中を旅する中で幾つもの武器と防具を強化して来たと思い出すレウス。

 しかし、それにはこれから先の事を考えないといけない。


「いや、エルザの言う通りだ。俺も色々と武器とか防具は強化して戦っていたんだが、それは戦う敵の属性とかそれぞれの武器や防具の強度によって変わるのを嫌と言う程に思い知らされた」

「確かにそれはそうだろうな。魔物はそれぞれの属性を持っている……森に住んでいる魔物だったら土属性が多いし、空を飛ぶ魔物だったら風属性。海沿いの魔物だったら水属性だし、砂漠に居る魔物は暑さに強い火属性が多い……ちなみに私は北の方の魔物には風属性が多いと聞いたから土属性で強化をして貰う事にしたんだが、レウスはどうする?」


 一通り魔物の属性を再確認したエルザにそう問われ、レウスは自分なりの強化の方法で頼む事にした。


「俺は特定の属性よりも、武器の強度を今の段階で出来る限り目一杯上げて貰いたい」

「それだと無属性になってしまうが……それで良いのか?」

「良いんだ、やってくれ。このイーディクト帝国は前に陛下から説明された通り、魔物の駆除がなかなか追いついていないのが現状だ。騎士団の応援部隊が一足先に向こうの方まで行っているとしても、魔物の勢力的に考えて俺達人間や獣人達が不利だろうからな」


 魔物の増殖がなかなか止められていない今、問題のそのドラゴンの元に辿り着くまでに武器や防具が壊れてしまっては命取りになってしまう。

 先程のホルガーとの戦いの様に人間相手なら体術だけでも何とかなるかも知れないが、魔物が相手となると人間では考えられない動きをするのでそうも行かなくなる。

 だからそうした大勢の魔物相手に、今回修理して貰っただけの武器と防具では不十分だとレウスは考えた上での決断だった。


 その考えをエルザに伝えると、意外にも彼女はすんなりと納得してくれた。

 マウデル騎士学院の首席と言うだけあって、そうした理論も頭に入っているのだろう。


「分かった。それなら貴様の槍とロングソードは全てそれで良いな?」

「ああ、頼む」

「ならこれから強化して貰いに行くが……後は向こうだな。随分と話が長引いている様だが、そんなに何か大掛かりな事をしたのか?」

「う、うーん……大掛かりと言えばそうだし、そうでないとも言えるから説明が難しい」

「何だそれは?」


 首を傾げるエルザと、未だに向こうでソランジュから話を聞いているアレットとサイカを交互に見ながらレウスは口ごもる。

 戦いと言う面ではたった一人を相手にしていただけなので大掛かりでも何でも無いのだが、戦い方の面で言えば非常に大掛かりな動きをしていたのだから。


 そのおよそ三分後にようやく話が終わり、エルザが「後で話を聞く」と言って全員分の武器と防具を持って部屋を出て行った。

 残された四人の間には何とも言えない空気が流れ始める。

 その沈黙を最初に破ったのはサイカだった。


「まあ、ええと……今回は仕方が無かったと思うわよ。武器も防具も無かったんだし、体術はそう言う技もあるんだしさ」

「そ……そうよね。私は体術は苦手だけど、あのホルガーって人がそんなに強かったって言うのなら命を助けて貰ったと思えば……うん……」


 どう答えるのが正しいのか分からないまま、結局その場はそれで終わった。

 一方で、武器と防具を預けて戻って来たエルザがどんな風に感じるかは彼女次第だが、そのエルザからは同情的な反応が返って来た。


「あー、そう言う事だったのか。それはどっちの言い分も分かる」

「そうか?」

「ああ。貴様が自分の肉体を武器として使われたのは確かに納得がいかないだろう。それは分かるが、レウスに抱えられていた貴様のおかげでホルガーに攻撃を食らわせて倒す事が出来たんだから、咄嗟の判断をしたレウスの気持ちも分かる。今回は痛み分けって事で納得して貰えないだろうか?」

「……ならレウス、お主は私にこの先の北に向かう途中の何処かで飯をおごれ。それで手打ちだ」

「分かった……」


 女の扱いは難しい。

 でも飯で怒りがチャラになるのなら助かった……とレウスは安堵の息を吐いた。

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