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135.風呂場の誤解

「話がややこしくなって来たわね、これって」

「本当よねー。大体、レウスがアークトゥルスの生まれ変わりだってこの国の皇帝さんを始め、大臣の人とか騎士団の人達にも知られちゃってる訳でしょ。それって問題無いのかしら?」

「さぁねえ、もうそこはどうにでもなっちゃえって感じじゃないの?」


 今までは川の水で身体を拭いたりする事しか出来なかったパーティー一行は久し振りに風呂に入れると言う事もあり、自然と会話も弾む。

 騎士団員達が使わない時間と言う事もあって大きな風呂を貸し切りにしてくれたシャロットに感謝しながら、男湯と女湯に分かれた城の風呂で汗を流す一行。

 しかも風呂に入っている間に自分達の服をクリーニングまでしてくれるらしく、非常に高待遇である。

 だがその反面、それだけ今回のドラゴン討伐に期待されていると言う事でもあるのだろうと考えつつ、アークトゥルスはレウスとしてひと時の休息を味わう。


(ここは石鹸がキチンと置いてあるだけ良いんだが……他に忘れ物は無いよな?)


 以前のトラブルによるトラウマを思い出してしまうレウスは、マウデル騎士学院の時と同じ展開にならない様につい石鹸を探してしまう。

 無事に(?)その石けんがある事を確認すると、自分も湯船に浸かって今までの疲れと汚れを汗として体外へと流して行く。

 大きな壁を挟んだ向こう側の女湯からは背中を流しあっているのか、キャーキャーと女の子らしい会話が聞こえて来る。

 一体どんな会話をしているのだろうと耳を傾けてみるレウスだったが、正直言ってリアクションに困る話だった。


「ちょっとお、ソランジュって胸が結構大きいのね!!」

「そういうアレットだって余り変わらないじゃないか。サイカは逆に小さいんだな」

「ちょっとー、それ気にしてるんだからやめてよねー。エルザは可も無く不可も無くって感じよねー」

「おいちょっと待て貴様、それはどう言う意味だ?」

「平均値よ平均値。でもさー、こうやって胸が大きければ良い様な風潮って分からないわよねー。武器を振るう時に胸が大きくて邪魔にならない分、その辺りは貧乳の方が良いと思うけどー」

「あー、それは確かにアレットの言う通りかも知れないわね。私は元々こうして小さいからそう言うのは考えた事無かったけど」

「でもこうして会話してると、騎士学院でのあの騒ぎを思い出さないか?」

「そーよねー。あれでレウスが妙に強いのが分かる切っ掛けになったし」

「それってどんな話なんだ?」

「あれっ、この話ってソランジュとサイカにまだしてなかったっけ?」

「うん。聞いた事は無いな」

「あーそうなの。じゃあ話すけど、ええとね……」


 何て会話をしているんだ、とレウスは反応に困る顔付きになった。

 まさか異国の地で話すのがそんな胸の話題なのか、と考えつつもこのままではソランジュとサイカにあらぬ誤解を与えてしまいそうなので、ここで釘を刺しておこうと思ったのが更なる誤解を生む事になった。


「おーい、アレットにエルザ!!」

「あれっ、レウスも一緒に入ってたの?」

「そうだよ。ってかソランジュとサイカに変な誤解を与えるなよ!!」

「なっ……おい貴様、今までの胸の話を聞いていたのか!?」

「そっちがデカイ声で話してるから聞こえちまったんだよー!!」


 レウスのこの一言で浴場の空気が変わる。


「ええーっ、盗み聞きなんてサイテーじゃない!?」

「そうだな。おいレウス、私達の方を覗いたら全員でお主を袋叩きだからな!!」

「待て待て待て、そんな事をする訳無いだろうが!!」

「分かんないわよー!! 何てったってレウスには前科があるんだからね!」

「だーっ、何でそうなるんだよ!!」

「貴様があの時ああして風呂場を覗かなければ、ここでこんな話題になってないんだよ!」

「それってこじつけだろ!」

「もう良いわ。あんな壁の向こうの変態は無視して、その時の話を聞かせるわね。えーっと、話は私達が誘拐される前になるんだけど……」


 誤解の無い様に説明して貰いたかったのに、逆にいらない誤解を自らの手で与えてしまったらしいとレウスは言葉を失ってしまった。


(どうして……どうしてこんな事に……)


 気分が一気に沈んだレウスはこのまま湯船に沈んでしまおうかと考えたのだが、そんな彼が独占している筈の男湯の方に思わぬ人物が入って来たのはその時だった。


「なあ、良ければ儂も一緒に入っても良いかな?」

「え……あっ、シャロット陛下!? ど、どうぞ……」


 何と、浴場のドアを開けて男湯に入って来たのはまさかの皇帝シャロットだった。

 お付きの騎士団員達には脱衣所で待機するように命じ、しっかりとした足取りで湯船に向かって歩いて来る。

 皇帝らしい豪華な服に身を包んでいて分からなかったが、彼の裸体はかなりガタイが良い。

 鍛え上げられたその肉体は未だに衰えておらず、しかも傷だらけなだけあって妙に迫力がある。

 脱いだら凄い、とはまさにこのシャルロットの様な身体を言うのだろうと考えるレウスの入っている湯船にゆっくりと入って来るシャロットは、先客のレウスに向かってとある話を振り始めた。

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