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131.え? 結局こうなるの?

「とりあえず、あの銀髪のサィードとやらの男の元に先に向かうのは良いとして、その前にギルドで依頼を受けてからにしないか?」

「ダメよ、先にあの男を問い詰めないと何を言い出すか分からないわ!!」


 サィードの元に向かうアレットの足取りは力強い。

 それなりに軽い体重の筈なのにドスドスと音を立てながら歩く彼女を後ろから見て、レウス達は引き気味である。

 こう言う時の女は怖いよなーと思いながらも、レウスは結局止める事も出来ずにあの闘技場の出入り口の前までやって来た。

 だが、その出入り口のドアの前にはサィードは居ない。

 それどころか見張りの姿も見当たらないので、これはチャンスとばかりに勝手に中に入って行くアレット。

 それを見て思わずエルザが声を掛けるものの、アレットは聞く耳を持たない。


「待て、何だか様子が変じゃないか?」

「何が?」

「人の気配が全然しないだろう。そもそも本当にここで合っているのか?」

「まーかせなさいって。これでも記憶力にはそれなりに自信があるのよ」


 妙に爽やかに返答しながら足を止めないアレットは、サィードに案内されて中に入ったあの金網リングのある闘技場の中へと、出入り口のドアを体当たり気味に押し開けた。

 しかし……。


「……あれえっ!?」

「変だな、誰も居ないぞ?」

「だから様子が変だって言ったんだ」


 参加者とギャラリーで熱気に満ち溢れていた闘技場のあの空間は、今では明かりの一つも点けられずに静まり返っている。

 それにエルザの言う通り、人の気配もまるでしない……かと思いきや、最初にその違和感に気が付いたのはソランジュだった。


「……退散しよう」

「何で?」

「僅かだが人の気配がするんだ。お主達にも悟られない位に気配の消し方が上手い……ここは大人しく引こう」


 しかし、そんなソランジュの忠告もどうやら遅かったらしい。

 突然、パパパッと闘技場内の明かりが一斉に点いた。

 その明かりを点灯させた主は、大声で自分の仲間達にこう命じたのだ!!


「今だ、捕まえろーっ!!」

「えっ、えっ!?」


 白を基調にした制服に、黄緑の花の模様が描かれている銀で縁取りされた白い鎧を着込んだ男女の武装集団が、一斉に襲い掛かって来たのだ!


「うおうおうおっ!?」

「きゃあっ、何なのよ貴方達!!」

「大人しくしろ、怪しい奴等め!!」

「何なんだ、これは!?」


 突然襲い掛かって来た謎の集団に対して、無意識の内に武器に手を掛けた筈の五人。

 だが、鍛冶屋の海犬亭に修理の依頼で武器と防具を預けてしまった今の自分達は、完全な丸腰状態なのに気が付いた。

 その時には既に遅く、魔術を発動する前に一斉に取り押さえられてしまった。

 ……レウスを除いては。


「くっ、俺達が一体何をしたって言うんだ!?」

「こいつ、魔術で抵抗する気だぞ!!」

「この野郎……違法賭博および公務執行妨害の現行犯で逮捕するっ!!」

「は?」


 光の魔術を発動して目くらましをさせ、敵が怯んだ所でサッと混戦状態から抜け出したレウスだったが、敵の一人が発したそのセリフに思わず動きが止まる。

 違法賭博やら、公務執行妨害やらのフレーズがスラスラと口から出て来るその敵の正体が、ここでようやくピンと来たレウス。


「ま、まさかあんた達ってこのイーディクト帝国の騎士団員達か!?」

「そうだ。我々は最近噂になっているこの違法な地下闘技場の摘発に来たんだ。もう一度言う。違法賭博及び公務執行妨害の現行犯で、貴様等を全員逮捕するっ!!」

「うおっ……ちょ…重いって!!」


 そのセリフに気を取られていたレウスの後ろから、三人掛かりで騎士団員達が飛び掛かって地面に彼を押さえ込んだ。

 幾ら強力な魔術が使えるとは言っても、発動出来るチャンスが無ければ全く意味が無い。

 結局そのまま全員が騎士団員達に縛り上げられ、ここに来る時には無かった筈の馬車が外に停まっていたのでそれに乱暴に押し込まれ、城で話を聞かされる破目になってしまったのだ。

 つまり、自分達は運悪く騎士団の闘技場摘発の瞬間に立ち会ってしまっただけではなく、その闘技場の参加者として逮捕されてしまったのだった。


「あーもう、これって凄くデジャヴ!」

「全くだな……」


 城に連れて行かれる馬車の中で、心の底から悔しそうな声を上げるアレットと、トーンの低い声で呟くソランジュ。

 ソルイール帝国のバスティアン率いる帝国騎士団に捕まった時とかなり状況が似ているものの、今回の件に関しては自分達も以前確かにここの闘技場にエントリーしていたので、余り強く出られない気持ちもある。

 しかし、それは自分達の口から言わなければ良いのでとにかくここは無実を主張する事に決めた。


「だからぁ、私達はあそこで用心棒をしているサィードって人に用があってあそこに行っただけなの!!」

「そうだ。アレットの言う通り私達は参加するつもりなんて無かったし、たまたまあの場所に出くわしただけなんだ!」

「話なら城でじっくり聞かせて貰う。今は大人しく連行されていろ」


 ダメだ、この騎士団員達はまるで聞く耳を持ってくれそうに無い。

 ソルイール帝国の時とはまた違った絶望感をヒシヒシと全身に覚えながら、レウス達五人はセンレイブ城へと連行されて行くしか無かった。

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