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130.何でバレてんだ?

「俺さあ、ちょっと小耳に挟んだんだけど……あんた達って今話題のマウデル騎士学校の生徒なんだってな?」

「……誰から聞いた?」

「俺があんたと会う前に闘技場に行ったら、その話をして来た奴が居てなあ。その男から聞いたんだよ。あんた等五人がまさか、爆発事件が起こったマウデル騎士学院の学生だったなんてそいつから初めて聞いて知ったよ。かなり派手にやられたって事件だからこっちの方まで話が届いてるんだよな、冒険者経由でさ」

「私とサイカは違うぞ」

「そうそう。ソランジュの言う通りよ。私は隣のソルイールから来た人間で、ソランジュはここ出身だからね」


 このホルガーに……と言うよりも、イーディクト帝国に入ってから自分達がマウデル騎士学院の生徒達であると言う事はおろか、リーフォセリアからやって来た人間達であると言うのも公言していない筈だ。

 なのにどうしてこのホルガーが知っているのかと思ったら、闘技場でその話をしていた男とやらが居たなんて。

 それは一体誰なんだ? と思考を巡らせるレウスの横から、アレットが身を乗り出して疑問をそのまま口に出した。


「それはともかくとして、それって誰が言っていたのよ? もしかしたらそれを知っている人って私達の知り合いかも知れないわ」

「知り合いなのか? そんなら話は早いや。そいつの名前はサィードってんだけど、こんな銀髪オールバックの奴で、前髪がちょっと垂れてるんだよ。で、その髪が長めだから後ろで縛ってるんだ」

「他の特徴も教えてよ」

「そいつはかなりでかい奴だよ。俺達六人よりも確実にでかい。あそこの闘技場でたまに用心棒をやってるって話だったけど、俺も何処から来たのかってのは良く分からないんだ。三か月位前に急にポッとあの闘技場に現れて、今ではあそこの用心棒としてちょっとした有名人なんだけど……それ以外の過去は分からない。ただ、地元の人間じゃないってのは確かだろうな」


 そこまで説明を聞いていたソランジュが、もしかして……と一人の男の姿を思い浮かべる。


「なあ、その男ってハルバードの使い手じゃないか? それも斧の部分が大きい、ちょっと不格好な……」

「え? ああ、そいつは確かにそんなハルバードを持っているけど……良く知ってるね。もしかして会った事あるの?」

「……間違い無いわね。あの男しか考えられないわ」

「私もお主と同意見だ、サイカ」


 サイカもそのマウデル騎士学院の事を知っているらしい男の容姿にすぐに辿り着き、ソランジュも同意する。

 残りの騎士学院の生徒である三人も、同じくあの用心棒……クラブで出会った何処かちゃらんぽらんなイメージの男を思い浮かべていた。


「私達は貴様の言う通りの男に出会った。その闘技場でな」

「え、そうならそうと早く言ってくれよ。説明する手間が省けたんだからよ」

「すまんすまん。で……その男の名前はサィードと言うらしいが、それ以外の情報は不明なんだろう? だったらレウス、武器の強化も良いが……良かったらその男の情報を集めて貰ったらどうだ?」

「んん……」


 何処か気の無い返事をするレウスを横目で見て、アレットが思わず問い掛ける。


「何よ、その男に興味が無いって言うの?」

「いや、別にそう言う訳じゃないんだがな。今回の俺達の目的はあくまでも武器と防具の強化を目的に、素材集めを任せたいって話だっただろう? だからその男が何者かなのは今は別にどうでも良い。あそこの用心棒だって言うのであれば、また闘技場に行ってその男を直接問い詰めてみれば良いだろう? それでも教えてくれなかったら、改めてホルガーにお願いすれば良いんだし」

「まあ、それも一理あるか……私達の戦闘力を上げるんだったら武器と防具の強化はいずれ必要になって来るし」


 なのでここは当初の予定通り、ホルガーに頼みたい事として素材集めを選ぶ。

 武器と防具の強化、それも五人分全員ともなればなかなか値が張るが、そこはまたギルドで依頼をこなして金を稼ぎ直すしか無いだろう。

 何かを手に入れれば何かを失う、とは良く言ったものだ。


「じゃあこれで決まりな。この金額でどうだ?」

「……ああ、大丈夫だ」

「分かった。それじゃ大体三日待っててくれ。最高の素材を色々と調達して来るから。それとギルドで依頼をこなす予定だったら、俺はギルド関係にも顔が利くから受けやすい依頼を渡して貰える様に話をしておいてやるよ」

「えっ、良いのか?」

「ああ。纏めて依頼をして貰ったからそのサービスだ」


 少しだけ値引き(?)をして貰い、こうしてホルガーへの依頼も済んだレウス達はあばら家を出てギルドへと向かう為に立ち上がった。

 ……だがその前に、自分達がマウデル騎士学院からやって来た人間達だと言う事をホルガーにバラシてしまったあの銀髪の男が居るであろう地下闘技場へともう一度出向いて、彼を色々と問い詰めるのが先である。

 あの男が自分達の正体を知っているのであれば、それこそ行方をくらましてしまったヴェラルとヨハンナの師弟コンビ、はたまた騎士学院の卒業生で爆破事件の容疑者でもあるセバクターの仲間かも知れないと大いに考えられるからだ。

 しかしこの再び闘技場に向かう決断が、この先で五人に降り掛かる大きな試練の最初の一歩となってしまうのであった……。

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