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125.リターンマッチ

「そうか、私とやる気か……レウス」

「いや、ちょっと待て。俺はやる気なんて無いんだよ」

「ああ、それは分かっている。今のは冗談だ。無理にここに投げ込まれたのを私も見ていた。だがやらなければここから帰れないのだろう? だったらさっさと貴様と私が戦って、ここから出れば良いだけの話じゃないのか?」


 そう言いつつバトルアックスを構えるエルザに対して、レウスはパンパンと服の汚れを手で払いながら槍を片手に立ち上がる。

 元々はこの女がここに行きたいと言い出さなければこんな展開にならなかった筈なのに、と思ってももう遅い。

 金網リングへの出入り口の扉は閉められて鍵を掛けられてしまい、逃げ場無しで次の対戦が決まった事で観客のボルテージが上がって行く。

 しかし、この八角形の金網リングの中では自分が不利な事に気が付いたレウス。


(そんなに広くは無いし、八角形だから無理に槍を振り回せば引っ掛かってしまう。対するエルザはバトルアックス二本でしかも小振りの物だから、この状況では機動力を考えると俺の方がますます不利だ!!)


 槍使いとしては最初からかなり不利な状況に追い込まれているので、いざとなれば槍では無く腰のロングソードで戦わなければならないだろう。

 そんな考えをしながら槍を構えるレウスに対し、係員の開始の合図が出ると同時にエルザは一気に向かって来る。

 レウスはレウスで攻撃を受け流そうと思ったのだが、エルザは地を蹴ってからバトルアックスでの攻撃では無く、いきなり飛び蹴りをかまして来た。

 いわゆるフェイントを掛けられたのだが、レウスは冷静にそれを横に避ける。


 しかし、エルザもそれは予想していたらしい。

 彼女はこの八角形の金網リングと言う特性を活かし、そのまま近づいた金網を蹴って弾力で跳ね返り、レウスに再度飛び蹴り。

 最初の飛び蹴りを避けたばかりのレウスは回避し切れず、クリーンヒットしてしまった。


「うあっ!?」


 後ろに転がるレウスだが、転んでもただでは起きない。

 続けてバトルアックスを振って来たエルザの側頭部を、立ち上がりつつ槍の柄の部分で思いっ切り殴打。


「がへっ!!」


 その衝撃でエルザは倒れ込むも、彼女も素早く受け身を取って起き上がる。

 レウスは彼女が起き上がって来た所で槍を振るうが、それは間一髪で避けられてしまった。

 続けて二本のバトルアックスを軽快に振り回して来るエルザに、この金網リングの狭さもあってレウスは何と対処し切れず、マウントポジションを取られてしまう。

 そのままバトルアックスが顔の寸前まで迫るものの、そこは力を振り絞ってエルザを両足で蹴り飛ばしてからレウスは立ち上がる。


「ぐ……っ!」

「きゃっ!」


 二人はほぼ同時に立ち上がり、レウスは気を引き締めてエルザを見据える。

 突き出されるエルザの左手のバトルアックスに、右のミドルキックを上手く合わせて弾き飛ばす。

 それにも怯まず今度は右のバトルアックスを突き出して来たエルザの腕を取って、彼女の腹に右の膝蹴り。

 その膝蹴りで彼女が怯んで前屈みになった所で、レウスのミドルキックがエルザの顔面に炸裂した。


「ぐはあっ!」


 まともに槍を振るえないのであれば、槍を持ちつつもこうした体術で戦うしか無いのが辛い所だ。

 だがエルザはその攻撃に耐えて起き上がりつつ左手を前に突き出し、今度は無詠唱でファイヤーボールをレウスに放って来た。


「うぉ!?」


 反射的にレウスはギリギリで身体を横に向けてファイヤーボールを避け、再びエルザに向かう。

 しかしレウスの目の前に、既にエルザの姿は無かった。


「遅い」

「ぐあ……!」


 後ろから聞こえたその言葉に反応するかしないかと言う所で、レウスは背中と後頭部に衝撃を受けて倒れる。その二か所を蹴られたレウスは気絶こそしなかったが、仰向けに足で身体を反転させられ首を踏みつけられた。

 エルザはファイヤーボールでレウスの注意を引き付けつつ後ろに回り込み、後ろから前蹴りでレウスの背中と後頭部を蹴りつけたのだ。

 さほどダメージは無いが、まさに一瞬の出来事なのは間違い無かった。


「流石はマウデル騎士学院の首席か……!!」

「ああ。それに貴様と旅をして来た中で、私だって強くなっているのでね。余り甘く見られては困るんだよ」


 足の先端でぐりぐりとレウスの顔を突きつつ、エルザは薄気味悪い笑みを浮かべる。


「さぁて、この勝負はどうやら私の勝ちになりそうだな……」


 しかしそんなエルザの様子を見たレウスは、足の先端にエルザの意識が向いていると踏んだ。

 そこで力を振り絞って、槍から一旦手を放してから両手でエルザの両足を掴んで思いっ切り引っ張り倒した。


「うわっ!?」


 一瞬の出来事で攻撃されたレウスが、一瞬でエルザに攻撃し窮地を脱出。

 倒れ込んだエルザを尻目にレウスは立ち上がり、彼女の腹目掛けて足の甲でキックを入れる。


「ぐへぁ!?」


 それでも素早くエルザも起き上がる。まだまだ勝負はこれから。

 ……と思っていた彼女にレウスが一気に近づき、ミドルキックでエルザのもう片方のバトルアックスを吹き飛ばす。


「しまった、斧が……!!」

「おらあっ!」


 戸惑うエルザの両肩を掴みつつ懐に飛び込んだレウスは、何発も膝蹴りをエルザの腹に叩き込む。


「おら、おら、おら、おら、おら、おら!!」


 エルザは何も出来ないままレウスに膝蹴りをされ続け、十六発ほど打ち込んだ所でレウスはエルザの身体を突き飛ばし、最後にエルザの顔面目掛けた大ジャンプからのドロップキックを喰らわせる。


「がっ……!!」


 エルザはそのまま後ろに倒れ込んで、これで戦闘続行不可能。

 この瞬間、勝者は三十六番だ! と審判を務めている男から大きな声でレウスの勝利宣言がされた。

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