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120.魔物ラッシュ

 通話を終了した後は引き続き依頼の方に向かい、黙々と仕事をこなすレウス。

 グラディシラに向かうまでは、かつての勇者アークトゥルスではなく一人の人間として活動出来る事に密かな喜びを感じていた。

 他のメンバーもそれぞれの依頼をこなして、残るはグラディシラまでの商人の護衛任務を残すのみだ。


「この村からグラディシラに行くルートだと、普通に南側を通って進んで行くのが一番速いぞ」

「時間はどの位掛かる予定だ?」

「えーと、ここからグラディシラなら大体五日って所かな……」

「結構掛かるわね。それって山を越えたりするの?」

「いいや、平原が続くから道の形状としては楽なんだけどなにぶん魔物が多くてな。商人は戦いに向いていない人物が多いし、職人だって自分の技術には自信を持っていても戦う事に関しては自信が無かったりするから、お主達の様な冒険者が護衛として付いてくれると助かるんだよ」

「騎士団は活動していないのか?」

「そりゃあ騎士団も勿論魔物を駆除しているんだが、ソルイールや国土の広いアイクアルとかに比べるとどうしても商人や職人として生計を立てている人物が多いから団員が少ないんで、冒険者とか傭兵頼りになってしまうのが現実なんだよな」


 流石に地元というだけあってか、この五人の中でイーディクト帝国の事情に最も詳しいソランジュがそう説明する。

 しかし、今の五人にとっては魔物が多ければ多い分だけ材料が豊富に手に入るかも知れないので、逆にありがたいと考えていた。

 ソランジュとサイカ以外の三人は例の薬の効果が切れて、魔術がまた使える様になったから尚更だ。

 だが、このイーディクト帝国での旅路がそんなにすんなりと行くと思ったら大間違いだったと言うのを、レウス達はこの先で思い知らされる事になるのであった。



 ◇



「くそっ、流石に数が多いな……」

「本当だな。ソランジュの言った通りだ」


 護衛の道のりを歩み始めたは良いが、確かにソランジュの言っていた通り魔物の数が多い事にレウスやエルザはうんざりし始めていた。

 魔物の部位を入れる為の麻袋も既に満杯であり、その度に同行している商人の馬車に積ませて貰っている。

 依頼をしてくれた商人曰く、このイーディクト帝国の中ではこれでもまだ魔物の数が少ないらしいのだ。

 しかし、こうしてレウス達が魔物の部位を集めてくれるので商人としても嬉しいらしく、その分の報酬を商人の方で計算して上乗せしてレウス達に代金を支払い、その後で纏めて自分の信頼出来る所で素材を換金するのだと説明してくれた。


 肝心の魔物は小さいものから大きいものまでそれはもう様々であり、小さいものは個人個人がバラバラになって討伐出来るからまだ良いのだが、大きな魔物になればなるほど五人掛かりで挑まなければならなかったりするので厄介である。

 勿論、レウスとアレットとエルザはそれなりの魔術を使って対処している。

 しかし次から次へと湧き出て来る様な魔物達が相手だと、時には相手せずにそのまま無視して通り過ぎてしまう様にする。

 体内の魔力だって無限にある訳では無いので、減ったらその分キチンと休まなければ魔術がまた使えない状況になるからだ。


(危なくなったら逃げる。逃げる事は恥ずかしい事じゃなくて、立派な戦術の一つだと俺はアークトゥルス時代に教えられたからな)


 自分の実力と、それに見合った引き際を見極めて戦いに挑むのが戦場では大切だ。

 それは勿論レウスだけでなく、アレットもエルザも騎士学院の授業の中で学んで来たし、ソランジュとサイカは冒険者として活動する中で身をもって実感して来た。

 しかし、ソランジュ曰くここまでの魔物の多さには違和感を覚えるらしい。


「こんな形ではあるが、久しぶりにこうやってイーディクトに戻って来ると魔物の数が多いと実感させられるな」

「へー、やっぱりソランジュが地元に居た時からこんなに魔物が多かったんだ?」

「ああ、確かに多かった。……だけどこの魔物の多さはちょっと変だな。確かあそこで寝ている商人が言うには、これでも魔物の数は少ない方だって話だったが……私が旅に出た時と比較してみると、むしろこれは多い部類に入るぞ?」

「え……?」


 ソランジュの話を聞いていたアレットも目を丸くする。

 それだと明らかに話が食い違っている……と言うよりも、ソランジュが地元を離れてから魔物の生態系に異変が発生したのか? と考えてしまうレベルだ。


「ちょっと待ってよ。だとするとこの多さって確かに変ね。だって今日一日で……ええと、詳しい数は覚えていないけど二百体以上の大小様々な魔物を討伐したのよ? この平原の広さに比べたこの魔物の量のレベルでまだ少ないのであれば、もっと多く発生している地域があるって話よね?」

「そう考えるとそうなるな。これは帝国の方で調査が進んでいるのかな?」

「そうだと思いたいわね。でも余り調査は進んでいないと思う。だってこんなに魔物が溢れている時点でまだまだ駆除が追い付いていないって事でしょ? 貴女は騎士団の人員不足もあるって言ってたけどさ」

「そうだよな……」


 しかしこの護衛依頼の最後に、五人はその魔物の異常繁殖と関係がありそうな、とある噂を商人から聞く事が出来たのである。

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