表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/875

119.久しぶりの会話

 翌朝、村で朝食を終えた五人はギルドの依頼をこなす為にそれぞれが村の中へと散らばって行く。

 帝都グラディシラへの護衛依頼以外は村の中や周辺で出来る仕事ばかりを選んだので、ここでまずは当面の路銀稼ぎをしてからグラディシラへと向かうのだ。

 護衛の依頼人である商人を余り待たせる訳にはいかないので、今回選んだのは村の近所での簡単な魔物討伐や、家の外壁を手早く直す手伝いと言った余り時間の掛からないものである。

 勿論大した稼ぎにはならないが、一文無しのまま進まざるを得ない状況になるよりかは大分マシである。


 そして、その途中でレウスは小さいながらも魔術の通話スポットがある事に気が付いた。

 こんな小さな村にまで通話出来るスポットがあるなんて……と最初は疑問に思ったのだが、通話スポットの利用係をしている村の住人に話を聞いてみるとその理由にも納得出来た。

 商工に秀でている帝国だけあり、よほど辺境の村であったり出来たばかりの町でも無い限り、大抵の町や村には通話スポットがあるのだと言う。

 商人や職人達が各地で連絡を取り合える様に通話スポットが整備されているおかげで、急に人足が必要になった場合や、職人が足りない、材料が足りない等の急なトラブルにも対応出来る様になったのだ。

 それもこれも全ては、商人達が居るおかげで通話スポット用の材料を調達出来た上に、職人達が居て通話スポットを整備してくれたからこそである。


 それに、ここはソルイール帝国との国境になっている山の麓の村なので、国外に通話をする利用者も数多いのだという。

 需要が多いおかげで利用料金も安く抑えられるらしく、それならば……とレウスはある人物に連絡を入れてみる。


(居るかな……)

『はい、アーヴィンですが』

「あ、出た……もしもし母さん、俺だよ俺……レウスだよ」

『れ、レウス!?』


 通話に応答したのは母のファラリアだった。

 レウスは、今となっては遠く離れた場所にある実家のアーヴィン家に通話を開始したのだ。


『ちょっと、学院がドラゴンに襲われたとか爆破されたりって聞いて、その後いきなり姿を消したってエドガーさんから連絡があったのよ!? 今何処に居るの!? ちゃんと食べてるの!? 誰かと一緒に居るの!?』

「ちょ、ちょっと待ってくれ。これからちゃんと順を追って話すから、落ち着いて聞いてくれ。父さんも居るのか?」

『ううん、父さんは今丁度、王都のカルヴィスに物資を届けに行っているわ。三日後には帰って来ると思うけど』


 マウデル騎士学院は授業を再開しているらしいが、爆破された部分の修復やセキュリティの見直し等でまだバタバタする日々が続きそうだとゴーシュが言っているらしく、物品を送り届ける頻度も増えているそうだ。


「そうか……タイミングが悪かったな」

『そうね。だったら私がこれから貴方の話す事についてメモを取ってあらかた伝えておくわ』

「分かった。それじゃ結構長くなるんだけど……」


 レウスは自分達が、何者かの命令で動いていたらしいウォレス率いる犯罪組織に誘拐された事から話を始めた。

 その誘拐された先がソルイール帝国の港町ベルフォルテだった事、そこでソランジュに出会ってから帝都ランダリルに向かった事、ランダリルでサイカに世話になったのに帝国に目をつけられた事、傍若無人な皇帝バスティアンを始めとした国のトップ連中にバランカ遺跡を調べてサンドワームを駆除する様に言われた事、結局バスティアン達に追われる身になって殺されそうになった事、そして今、やっとイーディクト帝国まで逃げて来た経緯の全てを話した。

 波乱万丈な道のりを歩んで来ていると実感しつつ話し終えたレウスの耳に、唖然としたフェリシテの声が届く。


『それでその……皇帝をガケ下に落として貴方は平気なの?』

「俺は大丈夫。今の所ソルイール帝国からの追っ手の姿も無いし」

『そう……でもそうなるとまずいわね。ちょっと色々と衝撃的過ぎて頭が混乱しているんだけど、とにかく今はイーディクト帝国に居て、最終的にカシュラーゼに向かう予定なのね?』

「そうなるな。でもまずいってのはあれか、やっぱり皇帝を崖の下に突き落としたって事だよな?」

『そりゃそうでしょ。今回は相手が色々と暴君だったからまだ同情の余地はあるけど、普通だったら死罪確定の重大事件なんだからね?』


 確かにファラリアの言う通りである。

 普通だったら死罪確定。それが今回上手く逃げ切れただけでもかなりラッキーだったのは言うまでも無い事実なのだ。


『とにかくこの事は父さんにも報告しないとね。今の所は何にせよ無事で良かったわ。でも、学院が爆破されたのと貴方が誘拐されたのがもしかしたら関係あるかも知れないなんて、ちょっとまだ気持ちの整理がつかないわ』

「すまないな。だけどこっちも一杯一杯なんだ」

『それは分かってる。だったらグラディシラに着いたらまた連絡を頂戴。その村から何日掛かるか分からないけど、貴方達がそこに着いた時には父さんも帰って来ているんじゃないかしら?』

「だと良いけどな。それじゃ、俺は依頼に向かうからまたグラディシラで」

『気を付けてね』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ