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116.免疫

 三つのバトルが終了し、ソルイール帝国からの追っ手は全員ガケの下へと落ちて行った。

 何とかイーディクト帝国に辿り着く前に追っ手を排除して向かう事が出来る様になった訳だが、その中でアレットは自分が何故魔術をまた使える様になったのかが不思議でたまらなかったのだ。

 相変わらずぬかるんでいる山道を歩きながら、その事を他の四人に聞いてみる。


「確かにそれは不思議だな。でも考えられるのは、私達の身体に投与されたあの魔力を抑える薬とやらの効果が切れたからだろう」


 最初に自分の考えをそう述べたエルザに続いて、彼女の隣でレウスもうんうんと頷きながら同調する。


「そうだな。今まではその魔力を抑える薬のせいで俺達は魔術を使えなくなってしまっていた。だがアレットがそうやって魔術をまた使える様になったと言う事は、その薬の効果が切れたからに違いない」


 今まで自分とアレットとエルザが感じていた、身体の中の奇妙な熱さはセレイザとの戦いの中でアレットが自分で分析した通り、薬の効果が切れて魔力が再び一定以上貯まる様になっていった事の証だろうと結論付けるレウス。

 しかし、それについてソランジュとサイカが疑問を投げ掛ける。


「ちょっと待て。お主達の話が本当だとしたら、私達もお主達と同じくまた魔術を使える様になっていないとおかしくないか?」

「そうよねえ。だってソランジュとアレットとエルザが同じタイミングで投与されて、私とレウスがほぼ同じタイミングであの食事の中に混ぜられていた薬を摂取したんだったら、三人だけがこのタイミングでまた魔術を使える様になるのは不思議よね」


 薬の効き目には個人差があると、この五人は今までの人生の中で習った事がある。

 しかしソランジュとサイカだけがまだ魔術を使えないのには何か理由があるのだろうか、と頭を悩ませる一行だが、その中でアレットが最初に気が付いた。


「ねえ、ひょっとするとだけど……もしかして私達三人だけ、前に誘拐された時にもあのウォレスって人から薬を投与されているから、もしかしたらそれが関係あるのかも知れないわ」

「どういう事だ?」


 そうやって説明されてもまだいまいちピンと来ていないレウスだが、一方のエルザはそのアレットのセリフで何が理由なのかをすぐに察した。


「もしかして貴様が言いたいのは、私達の身体の中にその魔力を抑える薬に対しての免疫が出来た、と言うか事か?」

「そうそう、それよそれ!!」

「あ……そうか、免疫か」


 エルザからの補足説明で、ようやくどういう話なのかが頭の中で纏まったレウス。

 その話で正しいのだとしたら、確かにこの五人の中で自分達三人だけが先に魔術をまた使える様になったのもつじつまが合う。

 薬を投与されるのが今回初めてのソランジュとサイカよりも、その薬に対しての耐性が出来ている自分達なら確かにそうだよなあ……と納得したのは良いのだが、問題はそのソランジュとサイカが何時薬の効果が切れてまた魔術を使える様になるのかが気になる。


「って事で俺達はまた魔術が使える様になったけど、二人とも魔術が使えないと困るだろう?」

「そうだな。私もサイカもそれなりの魔術が使えるから確かに使えなければ不利だ。ちなみにこの薬の効果だが、どの位で切れるとかってのは知っているか?」

「えー……多分三日位じゃないかしらね?」

「そうなのね。だったらこの先は敵に出会っても私達はまだ武器や体術だけで応戦するしか無いって事よね」


 思い返してみれば、魔術無しであのギルド期待の若手冒険者であるエジットに良く勝てたものだと自画自賛するソランジュとサイカ。

 しかし、このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界で暮らしている以上、冒険者にとっての敵は今回の様に人間だけでは無い。

 人間よりも身体能力の高い獣人を相手にしなければならない場合もあれば、レウスとアレットのファーストコンタクトの時の様に魔物を相手にしなければならないのも当たり前だ。


「バランカ遺跡での話になるけど、今回は私もレウスも運が良かったわよ。あの大きなサンドワームを相手に立ち回っていたら、魔術無しでは絶対に勝てなかったと思うから」

「……ああ、そうかもな」


 実際はやってみないと分からないのだが、確かにサイカの言う通り苦しい戦いを強いられていただろうと思うレウス。

 それと同時に、一人であの巨大なサンドワームを倒したエジットという男の強さを改めて思い知った一件でもあった。

 しかし、最終的なリザルトでは自分達がこうしてエジットを退けてイーディクト帝国に向かえているのだから良しとする。

 あの赤毛のヴェラルとヨハンナのコンビを追い掛けると共に、まだ行動理由が良く分からないセバクターの行方を追い掛けなければならないからだ。

 当初の予定であった川下りは舟が流されてしまったが、イーディクト帝国経由でもカシュラーゼに向かえるので、ここはあの赤毛の三人の行方を捜すと言う目的を胸に五人の若者達が山道を進み、まだまだ終わりの見えない旅路を実感するのだった。


 四章 完

10万PV突破。ブックマーク100件突破。

感謝感謝でございます。評価、感想もありがとうございます。

完結までまだまだ長い道のりですが、気長にお付き合いいただければと思います。

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