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115.五百年前の勇者vsソルイール帝国皇帝

 他の戦っている四人を巻き込まない様に、レウスはバスティアンに追われながら高台になっている場所まで移動した。

 そして自分を追い掛けて来たバスティアンと対峙し、槍を構える。

 そんなレウスを見て、バスティアンは大きく溜め息を吐いた。


「勇者アークトゥルス……この俺に刃向かおうとは本当に馬鹿な判断をしたもんだ。大人しく俺の狗になって動けば、それなりの待遇で飼ってやろうと思ってたのによぉ……残念で仕方が無いぜ」


 大袈裟に肩をすくめて再び溜め息を吐くバスティアンだが、レウスにとっては彼の動作全てが胡散臭く見えてしまう。


「白々しいんだよ。だったら部下の騎士団員にベラベラ喋るんじゃないとしっかり教育しておいたらどうだ」

「……何の話だ?」

「とぼけるな。馬車の中で全て聞いたんだよ。俺の仲間の女達に対して色々手を出そうとしたりとか、そういうのを全部だ。結局使えるだけ使って、用済みになれば殺すつもりだったんだろうが……人生はそんなに上手くいかないんだよ、甘かったな」


 そう指摘したレウスに対し、バスティアンはニイッと嫌らしい笑みを浮かべて表情を変える。


「へえ……そうか。それもバレてたのかよ。長い人生の暇潰しで面白いおもちゃが手に入ったと思ったのによぉ〜、そのおもちゃが皇帝の俺に歯向かうなんて許せねえ……許せねえんだよおおおっ!!」


 先に動いたのはバスティアンだった。

 既にレウスを殺すのが目的に変わったらしく、背中に差しているバスタードソードを抜いて襲い掛かって来た。

 勿論レウスは槍を使って牽制するものの、バスティアンは的確にレウスの動きを読んで突きや薙ぎ払いを回避し、合間に繰り出されるレウスの足払いも上手く足を上げたりジャンプして回避してしまう。

 センスがある、と彼の武術指南役であるエジットが賞賛していただけあって生半可な実力では無いのが、今のバトル相手のレウスには良く分かる。


(くっそ、強ぇ……)


 ただ強いだけでは無く、まだ割と余力がありそうな気がするとレウスは読む。

 自分に勝ち目があるのか分からない。でも戦わなければならない。


「……ふん」


 レウスの回し蹴りを屈んで回避し、バスティアンはその体勢から勢いをつけた全力のタックルでレウスの身体を地面に押し倒す。


「ぐがっ!?」

「ひゃっははは!! さぁて、何処から解剖して欲しい!?」

「くっそ……このイカレ野郎が!!」


 圧し掛かられはしたものの手は動かせるので、レウスはバスティアンの襟首を掴みつつ自分の足をバスティアンの腹に当てて後ろに投げ飛ばす。

 かなり無理に、それも力任せに投げた為に本来のパワーが出し切れない状況だったがそれでも脱出する事に成功した。

 そのまま先に起き上がったレウスは、体勢を完全に立て直す前のバスティアンの顔面に思いっ切りハイキックを入れてぶっ飛ばす。


「ぐあっ!!」


 当然の疑問を頭に浮かべつつも、レウスも当然何もせずにやられる訳にはいかない。

 バスタードソードの攻撃もそうだが、バスティアンは巧みに足技も繰り出して来てレウスを翻弄する。

 左、右とキックを放って来るのでレウスもそのキックに足を合わせて対抗。更に振り被って来たバスタードソードも身軽な動きで避ける。

 が、避けた後の隙を突いてバスティアンは前蹴りをレウスの腹にヒットさせ、体重が軽いレウスはその衝撃で後ろに転がる。


「ぐおうっ!」


 更に、倒れ込んで起き上がろうとしたレウスの腹をバスティアンは思いっ切り蹴り上げる。

 内臓を抉られる様に下から上に向かって蹴り上げられ、腹から全身にかけてレウスを物凄い衝撃が襲った。


「がはっ!?」


 しかし、ここで負ける訳にはいかないと堪えながら何とか立ち上がったレウス。

 そんな彼に再びバスティアンが前蹴りを放って、腹にキックを受けたレウスは後ろのガケギリギリまで転がる。

 しかもその衝撃で槍が手から離れてしまったので絶体絶命だ。


(危ねぇ……!!)


 何とか踏みとどまっても安心している暇は無い。

 レウスが痛みに耐えつつすぐに立ち上がると、バスティアンがまたもや前蹴りを放って来た。

 咄嗟にその左足を、レウスは両手でキャッチして内側に捻る。


「ぐっ!?」


 その足を放り投げてバスティアンのバランスを崩し、ガケ際での戦いに持ち込む。

 最初の時と同じ様に、バスティアンのキックに上手く足を合わせて対抗するレウスは、また前蹴りを食らわない様に先手必勝でバスティアンの胸に肘を入れ、そこからお返しに自分も前蹴り。


「うお、おっ!?」


 その前蹴りでバスティアンはガケから落ちそうになり、レウスは思わず自分が蹴ったバスティアンの胸を掴んで落下を阻止する。

 本来ならここで蹴り落としたかったのだが、咄嗟に彼を助けてしまった自分が憎らしいレウス。


「ふぅ……」


 それでもこれで色々と彼から話が聞ける……と一息ついたレウスだったが、そんなレウスの恩を仇で返す様に、バスティアンはレウスの胸に頭突きをかました。


「ぐふぉっふ!?」


 更にバスタードソードを振り被って来たので、レウスは素早く足のバネを使って彼の胸に飛び蹴りを繰り出して、今度こそガケの外へと蹴り飛ばした。


「うおわぁぁあーーーーっ!?」


 当然バスティアンはガケの下へと落ちて行き、レウスの勝利でこのバトルは幕を閉じた。

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