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114.リーフォセリア王国騎士見習いvsソルイール帝国騎士団長

 セレイザはアレットとエルザの方に向かって、自分が愛用しているロングソードを鞘から引き抜きつつジリジリと歩み寄る。

 他の三人に助けを求めようにも、それぞれ別の相手と戦っているのでここはこの強大な相手を前に自分達だけで戦うしか無いらしい。

 そんな彼女達に対し、セレイザは驚くべきセリフを口にする。


「ああ、丁度良いタイミングで私達の応援が到着したみたいだな」

「っ!?」

「わわっ!?」


 そのセリフに反応して一瞬気が逸れてしまったアレットとエルザのすぐ横を、セレイザが手に持っているロングソードが掠めて行った。

 正確に狙ったつもりがぬかるんだ地面でアレットとエルザの足が滑ってしまい、もう数センチの差で届かなかったのだ。


「ちっ、運の良い女達だ!」


 騎士団長のセレイザは攻撃を外した事に舌打ちし、二人に攻撃をさせない様に素早く足払いや斬り付けを繰り出し始める。


「くっ!?」


 流石に騎士団長の地位に君臨しているだけあって、恐ろしく強い……と思っている暇も無い。

 アレットが魔術を使えないこの状況では、エルザ一人でセレイザに対抗したくても防戦一方である。

 なかなか反撃のチャンスが見えないエルザと、それをチャンスとして思いっ切り攻め立てて来るセレイザの戦いを見て、アレットは杖を一旦捨てて素手で立ち向かう。

 超接近戦になればすぐに攻撃を繰り出せる素手の方が、武器構えるより速く動ける場合もあるからだ。


「ぐう!!」


 セレイザの薙ぎ払いをジャンプして前に転がりながら回避し、彼を挟み込む様にしてアレットとエルザは対処。

 挟み撃ちにしてなるべく的を絞らせない作戦だ。

 そして今度はエルザが、アレットに気を取られているセレイザの後ろへと素早く回り込んで一気に押さえ込んで地面に組み伏せる。

 男女の体格差の違いはあれど、セレイザが油断している所に背中側から飛び掛かって押さえ込むのは簡単だった。


 ……『押さえ込む』のは。


「ぬぐぅ……あああっ!!」

「うわ!?」


 自分の背中にのし掛かって来たエルザに対して盛大に暴れ、押さえ込む力が緩んだ所でセレイザは一気に立ち上がる。

 その体勢からエルザの頭を自分の頭越しに掴んで前に向かって投げ飛ばし、エルザに続いて二人掛かりで自分を抑え込もうとしていたアレットにぶつける。


「ぐあ!」

「ぐえっ!?」


 エルザの足が自分に当たって、アレットがダメージを受けて二人の女は同時に背中から地面に叩き付けられた。

 一方でエルザの拘束から解放されたセレイザは、アレットとエルザの二人が立ち上がって来る前に地面に落としたロングソードを拾い上げて、再びアレットとエルザに襲い掛かる。

 が、それも二度は通用しなかった。


 低い位置からの攻撃への対処はセレイザも慣れていなかった様で、一足先に体勢を立て直しかけたエルザが、倒れた体勢からグルリと背中で回ってセレイザに足払いを掛けたのだ。


「うおあ!?」


 セレイザが再び地面に倒れた所で、セレイザの持っているロングソードをアレットのキックが吹き飛ばす。

 だが、ここでアレットはある事に気が付いた。


(あれ、この感覚って……?)


 ちょっと前から身体の中に覚えていた妙な「熱さ」の正体が、ようやく今になってアレットは理解し始めていた。


(これって、もしかして?)


 妙な高揚感を覚えるのは確かなのだが、この状況でボーっとしているのは危険だ。

 それにまだ確証が持てない以上は仕方が無いので、先程地面に捨てた杖を再び拾って手に持つと、エルザのバトルアックスの猛攻を何とかかわし続けているセレイザに向かって詠唱を始める。


(もしかしたら、私はまた魔術が使える様になったんじゃあないかしら!?)


 いや、そうとしか考えられない。

 この身体の熱さの正体。それは抑えられていた体内の魔力がまた回復して高まって来た証だ。


 一方のエルザは、とにかく小刻みに動き回りつつバトルアックスの攻撃の手を緩めない。

 それは真っ向勝負で戦ったら明らかに分が悪いセレイザに反撃のチャンスを与えない様にするのと、彼の背後に居るアレットが何かをしようとしているのでセレイザの注意を自分の方に向ける為でもあった。

 そうこうしている内に、アレットの魔術の詠唱が終わろうとしていた。


「破壊と攻撃の神、エンヴィルークよ……我に灼熱の力を与えたまえ、フレイムキャノン!!」


 その詠唱終了と同時に、アレットの振りかざした杖の先端からオレンジ色の炎が一本の線となって飛び出した。

 それが飛んで行く先はセレイザの背中だ。


「ぐおっあああああっ!?」


 背中に炎の直撃を食らったセレイザは、絶叫を上げながら燃え盛る背中を地面に擦り付けてのたうち回る。

 そんな彼の顔面をエルザがブーツの裏で踏み潰し、炎が消えたと同時にアレットが彼の胸倉を掴んで強引に立たせた。


「ぐ……ぐぐ……何故私がお前達の様な小娘に負ける!?」

「さぁ、何ででしょうねぇ? あの世でじっくり考えなさいよっ!!」


 エルザはその胸倉を掴んだまま、後ろの崖から谷底へ向かってセレイザを押し出す形で投げ飛ばした。


「おわああああああーーーーっ!!」


 セレイザは絶叫しながら谷底へと消えて行き、アレットとエルザは見事彼を倒す事に成功したのであった。

 同時に、アレットが魔術を再び使える様になったと言うおまけ付きで……。

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