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109.赤毛の二人

 だが、意外と城の中から湧き出て来る騎士団員は少なかった。

 セバクターが言っていた通り、城の中の警備が薄くなっているとの事らしいので攻撃の手が緩んだ隙を見計らって何処から脱出するかを考える。


「なあ、サイカは何処か脱出出来そうな場所を知らないか?」

「脱出……ううーん、何処かって言われても……」

「地下水路は!?」

「やっぱりそこしか無いかも知れないわね。それじゃ行きましょうか」


 地下水路を通って、ランダリルの街中へ抜けるしか無事に脱出出来なさそうだ。

 しかし、もう迷っている時間は五人の耳にまた新たな足音が廊下の先から聞こえて来た。

 それと同時に、廊下の先がドォンッ!! と派手な音を立てて爆発する。


「ぐはあっ!!」

「な、何だ!?」


 爆発に驚いている五人の耳に、続けてその爆発で起こった炎の向こうから誰かの断末魔が聞こえて来る。

 しかしその次に聞こえて来たのは、ガチャガチャと金属音をミックスさせながら炎を突っ切って駆け抜けて来る何者かの足音。

 一体誰が来るんだ……と五人は身構えながらその人影を待ってみるが、そこから現れたのは意外な人間だった。


「無事か、お前達!」

「えっ、お、お前等は……!?」

 何と炎を突っ切って現れたのは、この五人の誰もが予想していなかった人物……あの赤毛の傭兵ヴェラルではないか!!

 更にそのヴェラルの後ろには、彼の弟子である元辻斬りのヨハンナの姿もあるではないか。

 何故二人がここに? とそれぞれ武器を構えながら赤毛の二人と対峙するレウス達だが、この二人には戦う意思は全く無いと見える上に、五人が耳を疑う様なとんでもない事を言い出したのである。


「何とか無事みたいね。だったら早くここから出るわよ!!」

「お、おい、一体何がどうなってるんだ!?」

「貴方達はいったい私をどうするつもりなの!?」

「説明は後だ。今はここから出て身の安全を確保するのが最優先だからな!! ここにはもうすぐ帝国騎士団の連中がやって来る。囲まれれば幾らお前達でも持たないだろう。俺達は無事に脱出出来るルートを知っているが、どうする?」


 だが正直に言えば、五人はこの二人を素直に信用する気にはなれなかった。

 騎士学院の爆破事件に関わっている重要人物なのが、今までの経緯を散々見て来て良く分かっているからだ。

 だからここから脱出する時に、もしくは脱出してひと段落ついている時の隙を狙って自分達を殺しに掛かる可能性も大いに考えられるので、足がなかなか進まない五人。

 しかし、ここから一刻も早く逃げるべきだとそのヴェラルの言っている事は正しい。


「おい、モタモタするな!!」

「あ、ちょ、ちょっと!?」


 ヴェラルが唯一武器を持っていないアレットを引っ張って連れて行くのを見て、考えを強制的に中断される結果になった他の四人も、ヨハンナと一緒にその二人について行かざるを得なくなってしまった。

 自分達の命の恩人となってくれるのか、それとも自分達の命を狙う敵となるのかが微妙なまま、爆発によって炎の海となっている城の廊下を突っ走る七人。

 どうやらこの赤毛の二人が、また爆発を起こしたのだろうと言うのは容易に想像出来る。


 それよりも気になるのは、ここにやって来た二人が先程まで戦っていたであろう騎士団員の死体が廊下に転がっている事だ。

 確かに敵であれば倒して進まなければならないのは分かるが、倒れている死体を見てみると騎士団の制服を着ている人間や獣人達オンリーだ。

 と言う事は、この二人は自分達の敵なのか味方なのかが分からなくなる。


(この二人は一体何を考えているんだ? 私達をこうして先導して、何をするつもりなんだ!?)


 学院を爆破されているエルザは、この二人の行動が全然読めない事に軽い目まいを覚えながらも、今は黙って着いて行く事しか出来ない。

 その後は城の中から繋がっている地下水路を通り、その地下水路の一角から外へと繋がる場所に留めてあった小舟を拝借し、一気に下って城の外へと出る事に成功した。


「良し、ここまで来れば一先ず今は大丈夫だ」


 至る所で炎に包まれて燃え盛るクレイアン城を遠くに見ながら、その火の手が及ばない安全な場所まで逃げ切った七人は一息ついて胸を撫で下ろした。

 しかし、赤毛の二人以外の人間達はこの二人の行動が理解出来ない。


「助けてくれた事には礼を言う。だが、私がこのレウス達から話を聞いていた限りは、どうやらお主達は元々マウデル騎士学院を爆破した人間達なのだろう? なのに何故私達を助けたんだ?」

「そうよね。それが不思議だわ。そもそも私達を誘拐する様にウォレスとかってのに頼んだのも貴方達なんじゃないの?」


 自分達を一体どうしたいのかさっぱり分からない、このヴェラルとヨハンナに五人が疑いの目を向けてしまうのは当然と言えば当然で、今までの事を思い返してみればまだまだ疑いを解く気持ちにはなれなかった。

 それに対して、ヴェラルは当たり前の様な口調でこう言い放ったのだ。


「お前達に死なれたら困るんだ。俺達にはお前達が必要なんだからな」

「ど……どういう事?」

「それはカシュラーゼに来れば分かるさ」

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