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105.ドアの先には?

 地上のクレイアン城でそんなやり取りがされている頃、レウスはサイカのナビゲートを受けながら地下水路をようやく抜けようとしていた。

 この先の地上に出れば労せずして帝都ランダリルへと入った事になるが、エジットが魔晶石を駆使して転移して行ったとなれば、その行き着く先はほぼ確実に騎士団長のセレイザと皇帝のバスティアンの元だろうと考えていた。

 彼はギルド期待の若手冒険者としてセレイザから目を掛けられているらしいし、あのバランカ遺跡で戦う前にバスティアンの名前が出て来たのも繋がりがある証拠だ。


「となれば、あの血の気の多い皇帝の事だから任務が失敗した事に焦って、アレットとエルザとソランジュを殺しかねない」

「ちょっとちょっと……縁起でも無い事を言わないでよ」

「だが、どちらにしても三人が危ないのは間違い無い。この先は何処に繋がっている?」

「ええと……確かこの先はクレイアン城の何処かに通じてたと思うんだけど、私もこの地下水路を案内されたのが随分と前だったからそこを覚えてないのよね」

「そこが一番大切だろ」


 思わず突っ込んでしまったレウスだが、ここまで来てしまった以上もう後戻りは出来ない。

 二人の目の前にあるのは地上へと続く階段。そしてその先に見える若干錆びかけのドア。この先の状況次第では別のルートを探す事も検討しなければならない。

 何が起こっても良い様に槍を構えるレウスと、その後ろでシャムシールを構えるサイカの二人は、今までの中で一番の緊張感に包まれながらゆっくりとドアを開く。

 サイカの言っていた通り見張りが居るかも知れないので尚更だ、とドアの向こう側に魔力を感じる事が出来るかを確認しながら、徐々にドアノブを引っ張る手に力を入れるレウス。


 そこは薄暗い、何処かの倉庫の様な場所に繋がっていた。

 見張りの姿もドアの側には見当たらず、とりあえずこれで何とか潜入(?)する事には成功した様である。


「何処だろうか、ここは……」

「分からないけど、用心するに越した事は無いわね。置いてある物を見る限りでは何処にでもありそうな荷物置き場って感じだけど」

「武器庫とかだったらここは城だ! って一発で分かるのにな」


 何処か分からない以上は用心して進むに越した事は無いので、更に警戒心を強めつつ目の前にある別のドアへと進んで行く二人。

 だがその途中、レウスは妙に身体が熱くなっているのに気が付いた。


「……ん!?」

「どうしたの?」

「いや、何か……身体が熱いんだ」

「えっ、熱でもあるの?」

「そうじゃないんだけど、何て言えば良いのかな……身体の奥底から力が湧き出て来る様な気がするんだ」

「え?」


 突然意味の分からない事を言い出したレウスに対し、訝しげな視線を向けるサイカ。

 しかしその身体の熱さの原因を本人が分かっていないので、今は聞き出すよりも潜入に集中させるべきだと判断して先を促す。


「ま、まあとにかく今は緊張感を持って先に進みましょうよ」

「そうだな」


 レウスも気を取り直し、そのドアの横に張り付いてゆっくりと手前に引っ張る。

 そしてドアの隙間から気配と向こう側の様子を窺うと、そこはどうやら何処かの廊下に繋がっている様だ。

 だがレウスはそれが何処なのか分からないので、ここはサイカに様子を見るのを代わって貰って判断する。

 彼女であれば何か分かるかも知れないと踏んだのだが、そのサイカの答えは予想外の話だった。


「あれっ、ここってクレイアン城よ?」

「え? そうなのか?」

「ええそうよ。と言うか貴方、ソランジュ達と一緒に城に連れて行かれたんじゃなかったの?」


 自分達が通って来たさっきのドアは、まさかのクレイアン城の中に繋がっている、地下水路のドアの一つだったらしい。

 それはそうとして、レウスがこの城に連れて来られたのはバスティアンからの話を聞く為であり城の中を見て回る為では無かったので、城の内部構造や雰囲気なんて覚えていなかったのだ。

 いきなり夜に連れて来られた挙句、問答無用でバスティアンの前まで連れて行かれたのだから尚更余裕が無かったと言うのもある。

 その事をサイカに伝えると、彼女も納得した表情で頷いた。


「うーん、そう言われてみれば確かにそうよね。でもここに繋がっている理由は何となく分かるわ」

「分かるのか?」

「ええ。ほら……騎士団員の親戚が居るって話をしたでしょ? その親戚から聞かされた話だと、何か非常事態が起こった時に地下水路を通って皇帝とか貴族達が逃げられるルートの一つとして、地下水路に繋がる道を作ったって言ってたんだけど、それはここの事らしいわね」


 しかし、それに対して同時に疑問も覚えるサイカ。


「でもそんな重要な場所だったら居る筈の見張りの姿が無いんだけど、一体どうなってるのかしら?」

「さあな。あの皇帝の事だから罠を張っているかも知れないが、見張りが居ないんだったらラッキーだ。先に進んでアレット達の居る部屋を探そう」


 チャンスは最大限に活かすべきである。

 まだまだ太陽の光が差し込んでいる城の廊下に出た二人は、警戒心を緩める事をせずに三人の仲間を助け出すべくクレイアン城に潜入した。

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