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103.転送された先は?

(しばらくサンドワームは見たくない……)


 サンドワームの出した粘液でヌルヌルする足元を気持ち悪く思いながら、約三十分を掛けてレウスはサイカと共にようやくこの巨大サンドワームの解体に成功した。

 しかし、まだこの魔法陣の先に何があるか分からない。

 サンドワームの体液でヌルヌルになったロングソードはまだ使えるので二本とも持って行き、この魔法陣の先の状況に備えるだけだ。

 ……本当はここで捨てて行きたい気持ちで一杯なのだが。


 だが、このヌルヌル地獄に耐えた甲斐はあった。

 切り分け、運んで、また切り分けて運ぶに連れて、今までうんともすんとも言わなかった魔法陣が少しずつ青白く発光し出して来たのだ。

 これは魔力が魔法陣の中に注がれている事を意味しており、作業が終わった時には小部屋全体が青白く輝く程までに光が出ていたのである。


「で……後はこの切り刻んだ死体を台座の上から全て退かしてと」

「うえー、気持ち悪ーい……でもこれで魔法陣が動く様になったわね」

「それは良いけど、これって何処に繋がっているんだろうな?」

「さあ……とにかく行ってみないと分からないわよ」


 それもそうか、と覚悟を決めてレウスはサイカと共に台座の上へと足を進める。

 余計な物は全て退かしたし、転送の準備は整った。


「じゃあ……行くぞ」

「うん」


 お互いが頷き合って台座の上に乗った瞬間、眩い光が二人の身体を青白く色付けながら包み込んで行く。

 その眩しさに目を閉じて耐える二人が、まぶた越しに感じる光の強さがだんだん弱まって来たのを確認しながら目をゆっくりと開くと、そこは二人の予想を遥かに超える驚きの場所だった。

 それと同時に地下の遺跡特有のひんやりとした空気は消え去り、代わりに水の流れる音が聞こえて来る。


「ここは……?」

「あれっ、ここって見覚えがあるんだけど……」

「えっ?」


 思い掛けないサイカのセリフに、歩き出そうと思っていたレウスの足が寸での所で止まる。

 バランカ遺跡の謎の魔法陣から繋がるこの場所に、彼女は見覚えがあると言い出したのだ。

 ならそれを思い出してさえくれれば、自分達が何処に転移して来たのかも分かるだろうと彼女を急かすレウス。


「ここは何処なんだ? 何か知っているのか?」

「うん。確かここって……クレイアン城の地下水路よ。間違い無いわ。この部屋って地下水路の倉庫よ。とりあえずあの扉から出てみましょう」


 二人が転移して来たのは、色々と何やら訳の分からないガラクタが沢山無造作に置かれている、石造りの小部屋。

 と言っても先程の魔法陣のある小部屋よりは大きく、サイカが指し示した通りその部屋の出入り口となっている扉の先には、何と地下水路が流れていた。


「え、水路……?」

「そうよ、このソルイール帝国の帝都ランダリルには地下水路が通っているのよ。人間や獣人がこうやって一か所に集まって、これだけ大きな街として生活していると色々と生活の排水が出るから、それを魔術で浄化する為の施設が帝都の中に造られているのよ。で、そこで汚水を処理してまた綺麗な水を供給しているのよね」

「……通りで臭い訳だ」


 転移して来た驚きで気づくのが遅れたが、確かに何かドブの様な臭いがレウスの鼻を掠めて彼は顔を盛大にしかめる。

 ランダリルは帝都と言うだけあって、前にやって来た時には見回り切れていなかった場所も当然あるだろう。

 その一つがこの地下水路であり、今のサイカの話からするとここはかなり大きくて広い場所になっている様だ。


「これじゃ見て回るのも大変そうだな」


 今の自分達が立っている場所からも見て分かる通り、水路がまるで網の目の様に至る所に通っているだけあり、その水路を管理する為に作られた石造りの通れる足場がジグザグに設計されているのが時間のロスを予想させる。

 そして、それを見てふとレウスの頭に一つの疑問が浮かぶ。


「水路って言うか、迷路って言うか……この地下水路の事を、帝都の住民は当然知っているんだよな?」


 ここの場所の説明をしてくれたサイカを振り返って尋ねるレウスに、今しがたここが何処なのかを説明をしてくれたサイカが頷いて、再び説明をする。


「ええ、勿論。でもこんな感じで臭いが凄いし、不衛生な場所だから掃除の為に騎士団員が駆り出される位で、一般の住民は近付かないってのがこの帝都の住民達の間では常識よ。そもそもここは見ての通り通路に柵も作ってないから転落の危険性が高いって言うんで、一般人の立ち入りは禁止されているわ。その証拠に、ここの地下水路の出入り口では騎士団員が交代で見張っているって話も親戚の騎士団員から聞いたし、地下水路を特別に見せて貰った時に私も見張りが居るのを見た覚えがあるもの」

「見張りが居るのか……」


 だったら地上に出られるルートが見つかっても、その見張りをどうにかしないといけないだろう。

 しかし、まさかこうして一気に帝都ランダリルまで戻って来られるとは思わなかったので、これならあの三人を助けにクレイアン城まですぐに向かえそうなので、二人は地下水路の出入り口を目指して歩き始めた。

 願わくばさっきの魔法陣が、砂漠から繋がる一方通行ではなくてこっちからも逃げ道として使う為に繋がっていて欲しかったな……と思いながら。

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