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101.アホ二人vs頭のおかしい奴

 とりあえずこいつをどうにかしないと先へ進めない訳だが、エジットが持っているハルバードを相手にすると、やはり二vs一でもリーチの差は大きいと感じる。

 レウスの槍で何とか対等なリーチなのだが、ハルバードは斧の役割も持っているので破壊力もあるのが厄介だ。


「うわ!」

「くっ……!」


 そのハルバードのリーチの長さと取り回しのし辛さを感じさせない、素早い動きで襲い掛かって来るエジット。とんでもなく危なっかしい。

 このままだと二人ともやられてしまうので、ここは人数で有利なのを活かして一気にケリをつけるべく、サイカとレウスは作戦を立てて行動する事に。

 まずはサイカがシャムシールを振り回してエジットに突っ込むが、それを彼も予想していたのか素早く避けてから彼女の腹に蹴りを入れる。


「ぐえっ!」


 腹を蹴られたサイカはそのまま地面に崩れ落ちて、腹を抑えて呻き声を上げる。

 それを見たエジットはレウスの方に気が向くが、それこそが二人の作戦であった。


(だが……チャンスが来るまでは俺とこの頭のおかしい奴の一対一か!)


 レウスはこうして戦っていて分かるのだが、お互いの腕は互角の様だ。

 騎士学院の時は五人を相手に勝つ事も出来たが、今度の相手はギルドの期待の若手と言われている実力者なのでまた話が違う。

 その証拠に、ハルバードのパワーに打ち負かされて身体がグラつき、ちょっと隙が出来てしまったレウスの手を正確に狙って槍を吹っ飛ばすエジット。

 その後もロングソードを抜く暇を与えない、素早い攻撃が続くのでレウスは何とか回避し続ける。


(もう少し……相手も相当の場数を踏んで来ているだろうから、焦らず冷静に……!)


 そして完全にサイカに対し、背中を向けたエジットの身体がサイカの瞳に映った時だった。

 呻くのを止めてサイカがスッと素早く立ち上がり、レウスとのバトルに集中しているその後ろからエジットの両腕の下に手を入れる。


「なっ!?」

「掛かったわね。私はまだ全然平気なのよ!」


 そして気を取られた所に、エジットの顔面目掛けレウスがドロップキック。サイカはその巻き添えを食らわない様に素早くエジットから離れて退避する。


「ぐわ!?」


 エジットはそのキックをモロに受けたものの、まだまだ粘る。

 手からハルバードが離れないのがその証拠で、再び起き上がって向かって来る彼にレウスもサイカも当然応戦。

 エジットが大きくハルバードを振り被って来たのを見て、ロングソードを抜いたレウスはジャンプ、サイカはしゃがんで回避。

 次に切り返して来る前に、レウスがエジットの腹に思いっ切り蹴りを入れる。


「ぐっ……なめるな!」


 しかしこのままでは何時か限界が来る。魔法陣とやらの様子も気になる。ならばこいつをさっさと倒す!

 サイカはしゃがんだ時に手元に当たった、やや大きめの石を力一杯エジットに投げる。


「おっと……ん!?」


 それをエジットは難なくかわすが、そこに一瞬の隙が生まれたのを見たレウスが、間髪入れずにその隙を突いてエジットの懐に飛び込む。


「そこだ!」

「ちっ!」


 エジットはレウスの攻撃をギリギリでガードするが、そこにサイカがもう一個石を投げつける。

 その石は綺麗……とまではいかないものの、そこそこの威力でエジットの側頭部に命中。


「ぐ!?」

「貰った!」


 エジットが着ている上着の襟首を掴んだレウスは、彼の身体を固定したまま右のボディブローを連続で入れる。

 本当はこのままロングソードで刺し殺したい位に憎んでいるのだが、まだ殺してはいけない。色々と聞き出さなければならない事があるのだ。

 続けざまに顔面に一発入れ、最後に思いっ切り顔の逆側をブン殴る!

 その衝撃でエジットはきりもみ回転をしながら吹き飛び、地面に強く叩きつけられた。


「ぐう……あ……!」

「良し、行こう!」

「ああ!」


 気絶したエジットを尻目に、二人は魔法陣のある方へと駆け出して行く……筈が、特大のファイヤーボールによって行く手を阻まれる。


「くっ……!」

「うわっ!?」

「まだ……まだ終わってないぜ……詰めが甘いんだよ!!」


 てっきり気絶したかと思っていたのにしぶとい奴である。

 魔術で回復しながら、ハルバードを構え直してジャンプして斬りつけて来るエジット。

 だが咄嗟にそれを転がって回避したレウスの横から、サイカが素早くそのジャンプ斬りを空ぶったエジットの後ろに回り込んだ!


「何!?」

「隙だらけ!」


 振り向きかけたエジットの右腕を、サイカは回し蹴りで蹴り飛ばしてハルバードを彼の手から落とす。

 そこに今度こそ決めてやる! と意気込んだレウスの、さっきよりも長い助走区間から繰り出された強いドロップキックがエジットの顔面を捉えた。

 エジットがそれに気が付いた時には、既にレウスのブーツの底が顔面にめり込んでいたのである。


「ぐほっ……」

「良しサイカ、こいつを縛り上げるぞ!」

「うん!」


 だったらキッチリと詰めてやるとばかりに、エジットに対して二人掛かりで馬乗りになろうとするレウスとサイカ。

 だが、最後の力を振り絞ってエジットはレウスとサイカの股間を上手く狙って蹴りを入れる。


「ぐえ!」

「ぐぅ……っ!?」

「ちいっ、これ程の奴等だとはな!!」


 急所を蹴られて悶絶する二人を尻目に、不利と悟ったのかエジットはハルバードを拾いつつ懐から魔晶石を取り出した。

 その魔晶石から青白い光が強く漏れ出し、エジットの全身を包み込んで行く。

 そしてその光が収まった時には、この地下の空間からエジットの姿が完全に消え去っていた。

 どうやら、後一歩の所で逃げられてしまった様である……。

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