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100.強そうに見える

「はあ? 魔法陣?」

「ここにも魔法陣があるの?」


 むしろ、その魔法陣を使ってこのバランカ遺跡までやって来たんじゃないのかと考えるレウスとサイカだが、サンドワームのせいでここはまだ調査が全て終わっていないという事と、エジットの口調からそれは無いと判断出来た。


「そうなんだよ。俺もこの後ろのデカイのを倒したら、その後ろにあるのを見つけたんだ。こいつはこの魔法陣を守っていたのかも知れないな」

「へえ、そうなのか。それを俺に起動しろって言われても無理な話だぞ。だって俺もこの遺跡にそんな魔法陣があるなんて、今初めて聞いたからな」

「へー、五百年前の勇者ってのにも知らない事があるのか。いや……もしかしたらシラを切っているだけかも知れないな。これは女は殺して、お前が起動方法を喋るまで手足の指を一本ずつ切り落としてやるしか無さそうだな」


 ダメだ、この男は完璧に頭がおかしい。

 何故こんな頭のおかしい国に来てしまったのだろうと後悔してももう遅いが、エジットに見逃してくれと頼んでも絶対にそれは無いだろう。

 だったらこの男を倒してさっさとランダリルのクレイアン城に戻るしか無いのだが、相手はエジットだけでは無いのをレウスとサイカはこの直後に知る事となった。


 槍を構えるレウスとシャムシールを構えるサイカの目の前で、エジットは予想外の行動を取った。

 懐から手の平サイズの青白く光る魔晶石を取り出したかと思うと、それを口に当てて喋り出したのだ。


「俺だ。すぐ近くまで来ているんだろう? だったらさっさとここまで来て加勢してくれ!」

「おい……それって何なんだ?」

「これか? これは魔術の通話を何処でも行なえる小型の通信用の道具だ。五百年前にはこんな物は無かっただろうから知らないのも当たり前か」

「ああ、知らないが……その前にお前を倒してしまえば済むって話だろう?」

「凄い自信だな。そんなに俺は弱そうに見えるのか?」

「いいや、逆だよ……強そうに見える」

「あ?」


 てっきり「凄く弱そうに見えるよ」とでも言われるのかと思っていたエジットは、レウスの返答に一瞬間の抜けた表情を見せる。


「強そうに見えるんだったらそれはそれで良いと思うが、そんな相手を目の前にして、応援が来る前に倒してしまえば済むなんて良く言えたもんだな?」

「だって事実だろう。と言うか、俺達はここで負ける訳にはいかないんだ。魔法陣の話も気になるし、城に残して来たあの三人の事はもっと気掛かりだ。あのクソな皇帝陛下に一泡吹かせてやるまでは、俺は倒れられないんだ」

「ふん、だったらその自信をここで粉々に打ち砕いてやる。……おっと、だがその前にどうやら応援が着いたみたいだぞ。流石は帝国騎士団員、行動が早いな」

「え?」


 二人の背後に現れる人の気配。

 その主達は、何とレウスとサイカをここまで馬車で運んで来た四人の騎士団員達だったのだ!


「エジット様、こいつはまだ生かしていたのですか?」

「色々と話を聞いていたんでな。そうやって俺を挑発している暇があったら、さっさとその槍で俺に向かって来るべきだったな、アホ。……おい、妙な真似はするなよ。そのまま武器をゆっくりと地面に置くんだ」

「くっ……」

「それとも何か考えがあって時間稼ぎでもしていたか? それでも残念だったな、手遅れだよ。さぁ、さっさと地面に武器を置け!」


 背後からロングソードや槍を突き付けられていては身動きが取れないので、レウスとサイカはエジットの言う通りにそれぞれ槍とシャムシールを置いた。

 だがその瞬間、レウスの顔色が変わる。


「……お、おい!? そいつまだ生きてるぞ!」

「えっ?」


 レウスに自分の背後を指差されつつそんなセリフを叫ばれたエジットは、反射的に自分が先程倒した筈のサンドワームの方を振り向く。

 しかし、そこには相変わらず息絶えてピクリとも動かなくなってしまったサンドワームの死骸があるだけだ。

 つまり自分が騙されたのだと気が付いた時には、レウスとサイカが居る方で騎士団員達四人の悲鳴が上がっていた。


「ぐえっ!」

「がああっ!?」

「うぐっ!」

「ぎゃああっ!?」


 一人がまず、レウスが左手で拾い上げた槍で喉を突き刺された。

 続いて二人目は、彼が右手で引き抜いた腰のロングソードで胴体を一刀両断にされる。

 サイカの方の二人は、まず一人が彼女のシャムシールで心臓を貫かれる。

 最後に残った一人は素早く彼女が心臓から引き抜いたシャムシールに斜めに胴体を斬り裂かれ、絶命した。

 こうして四人の騎士団員達が一瞬で倒されてしまい、残るはエジット一人になってしまったのだ。


「こんな単純な手に引っ掛かるなんて、まだまだ甘い」

「さっき俺とベラベラ喋って、結局こうやって応援に追いつかれたお前に言われたくは無いね」

「あの時は打開策を考えていたんだよ。でも、これで相手はお前だけになった。ここでお前を倒してランダリルに戻り、あの三人と一緒にこのソルイール帝国を脱出させて貰うぞ!」

「そうかよ……だったら、その脱出計画はここで終わりだ!!」

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