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98.武器屋の奥で

「地下通路……に続く階段みたいだな」

「そうね」

「しかもこの先から凄い魔力を感じるんだ。……ほら、感じないか?」

「うん、凄く感じるわ。この先には絶対に何かが居るわね」


 武器屋の奥には倉庫があり、その一角に持ち上げられた大きなフタがある。

 そして階段の先から物凄い魔力を感じるという事は、地下の通路の先に何かの生物が居る。

 そう、例えばここの「ヌシ」の巨大なサンドワームとかが。

 サイカの話によれば、このバランカの遺跡を一回りして来た時に帝国の調査隊の陣地があったらしいのだが、人気ひとけは微塵も無かったらしい。

 もしかしたらヌシの手によって地中に引きずり込まれてしまったのかも知れないが、いずれにしてもこの地下通路の先を探ればその答えは見えて来るだろう。

 先程から聞こえて来ていた地響きが止まっている今がチャンスだと感じ、二人は警戒心を最大まで高めながら階段を下り始めた。


「あれ? 意外と涼しいわね」

「そりゃあ砂漠だからな。地上は太陽がガンガンに照り付けて、その光の熱を砂が蓄えるだけじゃなくて光を砂が反射するから足の先から熱くなって来るけど、地下はその太陽の熱が届かないから涼しくて気持ち良いんだ」

「それもそうよね。私も冒険をしていた頃は、地下の遺跡の中に踏み込んだりしたっけ……」


 冒険の回想をしているそんなサイカを横目に、レウスは凄い魔力の出所が何なのかを探りつつ先を見据える。

 階段の先は細長い通路に繋がっており、この奥にさっきから続いている地響きのヌシが居るのだろうか?

 そして、この地下通路に踏み込んで行ったのは誰なのだろうか?

 まだ見ぬこの先の展開に恐怖と、それからアークトゥルス時代に戦いに明け暮れていた経験から少しの興奮を覚えつつも、緊張感は常に忘れない。


 だが次の瞬間、通路の突き当たりを左に折れた先からドゴォォォン!! と物凄い音が聞こえて来た。

 その突然の衝撃と、通路の突き当たりからもうもうと立ち上る白煙と土煙が混ざった汚い色の煙を見て、二人は身体をビクつかせた後にすぐにどちらからともなく駆け出していた。


「何だ、今の音は!?」

「何かが爆発したみたいね。慎重に行きましょう!」

「ああ!」


 小走りで、しかし慎重に。

 レウスは槍を構えて走り出し、その斜め後ろをあの家の壁に飾ってあったシャムシールを構えながらサイカが着いて来る。

 ヌシが何かをやったんじゃないかと仮定しつつ、何が起こっていてもおかしくないのですぐに引き返す事も勿論この後の選択肢として入れておく。

 だが、その通路の先で見たものは二人の予想を遥かに超える衝撃的な光景であった。


「何だ、こんなものか。余りにも呆気無さ過ぎて拍子抜けだな」

「え……?」

「あれっ、あんたは!?」


 通路の先で二人が見た光景。

 それはその通路の先にある大きな広場で、一目見て既に事切れているのが分かる巨大なサンドワームの姿と、その前に仁王立ちをしている武装した男の姿だった。

 その男は二人の足音と声に気が付くと、満足げな笑みを浮かべてゆっくりと二人の方を振り向いた。

 そして、レウスもサイカも彼の事を知っている。


「ギルドの期待の若手……エジット・テオ・ピエルネさん!?」

「俺を知っているのか?」

「ええ。ソルイール帝国のギルドに所属している冒険者から色々話は聞いているし、私も現役時代から貴方の活躍は聞いていましたから。でもどうしてここに? 貴方もバスティアン陛下からそのサンドワームの討伐を頼まれたのですか?」


 何故かここに居る筈の無い、レウスがランダリルの騎士団の詰め所で出会った冒険者ギルドの期待の若手と呼ばれている、黄緑色の上着と銀髪が特徴の冒険者……エジット・テオ・ピエルネ。

 一方で、自分よりも上のランクの冒険者に対して敬語で接するサイカだが、この後そのサイカの敬語がタメ口に戻るまでにそうそう時間は掛からなかった。


「まあ、そうと言えばそうだし違うと言えば違うかな」

「え……どういう事ですか?」

「俺は知っていた。お前達がここに来るって事を」

「はい?」

「そして俺はもう知っている。このゲームにおまえ達は負けた。すなわちそれは、お前たちの死を意味する結果なのだと」

「あんたは何を言っているんだ? 全く要点を得ないんだけど、ちゃんと説明をしてくれないか? ……まぁ、今のセリフである程度は嫌な予感がするんだけどな……」


 訳の分からないセリフを口走り始めたこのエジットに対して、レウスは無意識の内に槍を握る手に力を込める。

 この男は危険だ。

 そう自分の直感が告げているのは間違い無いと確信するまで、やっぱりそうそう時間は掛からなかった様である。


「嫌な予感……か。確かにお前にとっちゃ嫌な予感だろうな、アークトゥルス」

「どうしてそれを……」

「そりゃ知ってるさ。俺がここにこうして居るのは、皇帝バスティアン様から命令を受けたからだよ。もしお前達が俺よりもこのでっかいサンドワームを早く倒せなかったら、その時点でお前達の負け。ここでサンドワームと同士討ちになった様に見せ掛けて、殺しても良いって言われてるんだよ!」

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