表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/875

97.挑戦! バランカ遺跡

「結構遅かったのね」

「あれっ、もう着いてたのか?」

「ええ。もう三十分程前に……」

「えっ……」


 街並みを残しているバランカ遺跡の出入り口のすぐ脇では、何とサイカが既に待ちぼうけを食らっている状態だった。

 人の気配がするので何かと思って用心しながら出入り口をくぐったら、暇そうにしているサイカの姿があったので拍子抜けであったレウスは、彼女から思いもよらない物を渡される。


「そうそう、貴方がここに来るまで暇だったから色々この遺跡の中を見回ってみたんだけど、こんな物を見つけたのよ」

「ん……これって何だ?」

「カギ……みたいね」


 銀色の金属の部分がボロボロに錆びてしまっているものの、その形は間違い無く何処かのカギである。

 それもかなり大きい物で、手袋をはめているレウスの手を開いて乗せると丁度手首から中指の先までジャストサイズだ。


「このカギ、何処で見つけたんだ?」

「えっと、あっちの広場の方に落ちていたわ。しかもその周囲にまだ真新しい足跡がついていたのよ」

「え……?」


 という事はここに先客が居るのか?

 レウスがその疑問を伝えると、サイカは戸惑いがちに頷いた。


「う、うん……そうだと思うわ」

「何だか歯切れが悪いけど、何かまだあるのか?」

「えっと……地面の下の方から変な音がするのよ。地響きって言うか……」

「地響き?」

「そう。断続的にさっきから聞こえて……ほら!」


 サイカが地面を指差して声を上げたのと同時に、二人が立っている地面の下から確かに唸り声の様な地響きが聞こえて来る。

 約十秒間、この滅んだバランカの街の中にその地響きが響き渡り、そして再び砂が風に舞う音しか聞こえなくなった。


「ああ、確かに聞こえたな」

「でしょ……怖くないかしら?」

「かなり怖いな。だけど大体予想がつく。これはこの遺跡の主だろうよ」

「ヌシ……?」


 五百年前からその存在は分かっていたし、実際に何度も討伐されているここのヌシ……サンドワーム達の親玉がこの下に棲み着いているのだろうとレウスはすぐに予想が出来た。

 逆にその事をサイカは知らなかったのだろうかと不思議に思うが、彼女はどうやらここを訪れたタイミングが悪かったらしい。


「あー、ヌシか! そう言えばヌシの話は私も聞いた事があるわね。この砂漠の下の何処かに潜んでいる、超大きなサンドワームがそれなんでしょ?」

「そうそう。あいつは五百年前からずーっと何回も討伐しても生き返って来る。と言うよりもその子供が成長してまた大きくなって、我が物顔で地底を徘徊するってのが正しいかな。サンドワームってのは無駄に繁殖力があるから、この砂漠だけでも数千匹は居るんじゃないかって言われているし。だからその分、食用としても安くて手軽に食べられているんだがな」

「そうそう、あれっておいしいわよね! あの何とも言えない味と食感がたまらないのよね~!」

「……そ、そうか」


 サイカとは食の好みは合わなそうだ、とレウスが実感した頃にまた地響きが聞こえて来る。

 このヌシの巨大サンドワームを討伐しなければ、クレイアン城に囚われているアレットとエルザとソランジュを解放して貰えない。

 ……馬車の中で聞いた話によれば、その約束もどうやら無かった事にされる未来しか見えないのだが。

 とにかくこの地底に潜るべく出入り口を探そうとするレウスだったが、それは既にサイカがあの謎の足跡を辿って発見したらしいのだ。


「こっちこっち! この足跡が向こうに向かってずっと続いているのよ」

「これは……どうやら人間か獣人の誰かがここに来たみたいだな」


 地面についている足跡を見る限り、ここに来ているのはどうやら一人の様だ。

 念の為、サイカが履いているブーツの裏や自分が履いているブーツの裏を見て地面の足跡と一致しないかどうかを試したが、どちらも靴底のパターンが一致しないし大きさも違うので、自分の足跡と見間違っていた……というのは無いらしい。

 その足跡が示す道のりが砂埃に消されてしまわない内に辿ってみると、やがて一軒の店らしき場所に辿り着いた。

 そこはレウスも見覚えがある。


「あ……ここって元々武器屋だった場所じゃないか」

「分かるの?」

「ああ。こういう割と独特な場所にあるから分かるよ。人目を隠す様な裏路地って感じのな。武器屋の主人は気難しい奴だったけど、その分かなり良い武器を作ってくれるって噂になってたからな。まあ、俺は作って貰った事は無いんだが」

「へえ、そうなの。足跡は中に続いているみたいだから入ってみましょう」


 そう言いつつサイカが武器屋だった建物に先に足を踏み入れ、続いてレウスも足を進める。

 中も既に朽ち果てており、何処に何があったのかが辛うじて分かる様な状態なのだが、足元に続いているその足跡はまっすぐに店の奥を目指していた。


「この先って何かあるの?」

「ん~……分からないな。俺もこの武器屋に入ったのはこの近くに立ち寄って武器のメンテナンスを依頼していた何回かしか無かったし、普通はこんな店の奥に客が入るなんて無いから、工房とかじゃないのかな」

「だったら入ってみれば分かるわね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価等をぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ