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冥(女)王の(義)息子、姉、誕生

冥界から神界へ。

初めての土地に緊張を隠すことが出来なかったグラントだが、冥界とそれほど変わらず少し拍子抜けしてしまった。


そもそも、冥界自体初めてだったが、想像していたようなおどろおどろしい、まさに地獄という雰囲気ではなかったことに驚いたのも記憶に新しい。


冥界、神界に住人がいて、人間界となんら変わらない。

冥界にも神界にも、もちろん深海にも生活がある。


神界の支配者、住居にて。


「お帰りなさいませ、メイディス様。」


「ただいま、何か変わりはあった?」


「いえ、特に何も。まぁ、男神が相変わらずといったところでしょうか。おや?その子は?」


門をくぐり、執務室へ。

そこで作業をしていた執務官に見つかるグラント。

現時点でも抱っこ状態である。


「あぁ、この子はグラントよ。私の弟。」


「えぇ!?」


その驚きの声は、グラントの声だったのか執務官の声だったのか。

グラントにとってまったく初耳な話。

それは執務官も同じだったみたいで。


「お・・・弟!?確か、ご姉妹弟は3人のはずでしたが?」


グラントは神界に連れて来られる際、メイディスがペルセの妹であることを聞かされていた。

それを鑑みるに、メイディスは叔母、いや、義叔母になるのだが、そこは乙女心。

ちゃんとした『弟』に姉と呼ばれたかったのだ。


しかし、それを聞いて納得できなかったのか

腕の中にいるグラントを睨みつけ、声高に言った。


「そのような者を神界に置いておく訳にはいきません。

得体の知れない、汚らわしい輩を・・・ひっ」


神またはそれに順ずるものの中に、よそ者を嫌う輩は少なからずいる。

人と神は別物という考えは正しくもあるのだが、グラントは神に順ずるものでもある。

ただ、どういう出自で現れたのか分からない以上、認めるわけにはいかない。

神、それも最高神を守る為の発言であったが、途中で止めてしまった。いや、止められたというべきか。


「あんた・・・今なんていったのかしら?」


元々つり上がった目をそれこそ名剣もかくやの鋭さを持って睨みつけるメイディス。

よそ者を警戒するという気持ちが分からなくもないグラントは気にはしていなかったのだが、この姉(叔母)は我慢できなかったようである。


それも汚らわしいといわれた瞬間、殺気が当てられる。


「い・・・いえ、何でもございません。」


「そう。さっきのは聞かなかったことにするわ。ただ、もし言ったら・・・消すから。」


そう言って執務室から追い出して、自分のいつも座る椅子に腰掛ける。

もちろん、グラントは膝の上である。


「あの・・・メイディス様。私は気にしておりませんので。」


あすなろ抱きされている状態で見上げて言う。

グラントが忍耐強くもあると知ってなおさら株を上げつつ、むっとした顔でメイディスはグラントの顔を覗き込んでいった。


「あんたがそう思っても私が思わないの。それとも、不満があると?」


「い・・・いえ、そのようなことは。」


「なら黙っていなさい。あと、私のことはなんと言えばよかったんだっけ?」


「メイ姉さまです。」


「よろしい。これからもそう呼ぶこと。いいわね?」


「はい、メイ姉さま」


「うむうむ。」


グラントの返事に満足した神界王は、机の上においてあった資料を手に取り神の役目に勤める。。

義弟を膝に乗せたまま。



ところ変わって冥界。


「グラント様ぁ!グラント様ぁ!!」


アイデスの声が城に響き渡る。

どこかで見たような光景だが、今回に至っては声音に余裕が無い。


「アイデス、グラントは見つかりましたか?」


息を切らし、アイデスに合流するペルセ。

いつも隠れる場所をしらみつぶしに探すが見つからない。

普段から会わないことがないだけに余計に不安が湧き上がってくる。


「いえ、影も形も無く・・・。」


「もしかして、攫われたのでは?」


そんなわけが無い、とは言い切れなかった。

メイディスの訪問がその証明でもある。

もしくは、メイディスに知られるもっと前から漏れていた可能性もある。


「・・・・ロキ・・・ですか」


「おそらく一番可能性としては高いかと。」


迷惑な男神の筆頭でもあり、神の世界だけでなく人間界にまでちょっかいをかける厄介な神。

神界にグラントの存在が漏れた原因はそれしか考えられなかった。

それどころか、グラントの魂をこの世界に連れてきたとも考えられていた。そもそも消去法的にそれしか考えられなかったのだ。


「グラントに会わせてくれた恩があれど、グラントが危険に晒されることで差し引きゼロどころかマイナスですね。」


「私も同意権です。」


本人の知らぬところで身の危険にさらされるロキ。

予想しなくとも分かってしまうというのに、なぜこのようなことをするのか、それはロキ自身にしか分からない。


どのようにしてロキをとっちめるか。

そして、グラントの救出作戦が練られ始めるといったところで、冥界軍の兵士が走りこんできた。

息を切らせた兵士が放った言葉に、ペルセもアイデスも凍りついた。


「ハァ、ハァ、ペルセ様ならびにアイデス軍団長筆頭に報告申し上げます!

さきほど、城下町に下りて捜査しておりましたところ、赤い髪を両端でまとめた女神がグラント様を抱いて歩いていくところを目撃したとの事!!」


「・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・。」


報告を聞いてしばらく固まっていた二人。

やっと動きだした二人の眼は、戦場に立つ戦士の眼をしていた。


「アイデス軍団長筆頭。」


「はっ!」


ペルセの口調が変わり、アイデスもメイドのときと打って変わり、主君の命令を待つ一人の戦士に変わる。


「あなたが思う先鋭を選び、城にはそれ以外の者たちで守らせなさい。冥界の最高戦力で神界に打って出ます。」

 

「ハハァ!!直ちに!グラント様を助けるためとあれば、他の軍団長もこぞって集まることでしょう!」


「急ぎなさい。私も久方に動くと致します。こちらから攻めることはいたしませんが、相手から手を出してきたのであれば話は別です。全力を持って殲滅します。」


グラントを神界に案内するという何気なく起こした気まぐれによって、神界支配者が恐れた冥界軍進撃の恐怖が現実のものとなってしまった。


ここで我々の言葉を使うとすれば、まずこの言葉が出てくるだろう。


『ほうれんそう』をしっかりとしましょう、と



大分、神の世界編が長くなりそうですね。

冒険者編まで行くのにどれだけかかるのか・・・。


別々に書いていったほうがいいのかしら?なんて思ったりしております。

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