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冥(女)王の(義)息子、それでも甘やかされる

神々の世界の男神事情。

それは、別段男が少ないからという理由ではない。


いや、少ないという意味ではある意味合っているのかもしれない。

要は、まともな男神がいなかったのだ。


人間界に戦争を起こさせ観戦したり、神の武具を使って混乱を起こしたり、自分の欲望に忠実な者が多かった。


よって、冥界だけでなく神界、深海に至っては

『男神は碌なやつがいない』

という事が常識として広まっていた。


中には、まともな者もいたのだが、まだマシという程度。

そんなところに現れた男グラント。


はじめは冥界の誰しもが警戒した。

現在では、あれだけデレデレになっているアイデスさえ人一倍に警戒していたのだ。

どうせ他の男神のようになるのだろう、と


男神事情のことは冥界の女王ペルセ自身もよく知っていた。

それ故に、義息子はしっかり育てようと、様々な教養、礼儀、常識を教えようとした。


しかし、そこでうれしい誤算があった。

この誤算については、ペルセだけでなく冥界全土も知りえることではなかったのだが、

グラント自身、前世の記憶を持ってこの冥界にやってきていたのだ。

ただ、記憶の部分部分を忘れてしまっているがために、どのようにして死んだのか等は

覚えてはいなかったが、自分がどのような人格者であったのかは体が、いや精神がしっかりと覚えていた。


成長してから教えようとした礼儀、常識を初めから覚えている。

そのことに周りをひどく驚かせたが、何より驚かせたこと

それは、進んで学ぼうとしたことであった。


普通ならば、あぁ、この子は勤勉でいい子だな、で済む話なのだが、

神々の世界ではそうはいかない。

暇つぶしに戦争を起こそうとするところをみると言わずもがなだろう。


グラントは、前世で考えられなかった事象(魔法、スキル、神力)に興味津々。

好きな物は時間を忘れて学びたくなる、そんな単純なことであったのだが、


『こんなに良い男子を見たことが無い!この子が望むならどんなことでもやろう!』


結果、周りはグラントに多大な良い印象を与えてしまった。

言葉を選ばなければ、とてつもなくチョロいのだが、男神の起こした不祥事を考えると、

そうなっても致し方ないような気はする。


ただ、時間を忘れて勉学に励んでしまうことが、ペルセひいては召使たちの唯一の悩みの種だという。


ところ戻って


静かななる戦いの結果、今回はアイデスに軍配が上がり、そのまま膝の上でお菓子を食べていた。

グラントに食べさせていたメイドからお菓子を取り上げ、アイデスが食べさせている。


それをメイドが不満そうにしながらも、不承不承といった体で離れたところに控えている。


「グラント様、いかがですか?」


「すごくおいしいです!甘くてさくさくです!」


「それはようございました。それでは、このアイデスめにも食べさせていただけると・・・」


「アイデス、それ以上の不敬は許しませんよ。そんな羨ましいこと。」


「ペルセ様、本音が漏れておいでですよ。」


ペルセが無表情でありながら頬を膨らますという器用な不満顔を作っているが、

グラントは、これはすごくいじけているということが分かっているので、フォローに回る。


「母様、今度二人でゆっくりいたしましょう。そのときにでも、母様の武勇伝を聴かせていただきたく思います。」


そう聞いたペルセは、すぐに機嫌がよくなり、いつもの微笑を浮かべた。

微笑みというには、だいぶにやけてはいるが。


「そういうことでしたら、今回のところは引き下がりましょう。

今度はふ、た、り、でお話いたしましょうね。」


『ふたり』のところに語気を強めたところを見ると、アイデス分かっているな?というニュアンスが見て取れる。


「・・・それでしたら、喉が渇いたときのためにお茶をお持ちいたしますね。」


アイデスのその言でまた火花を散らす二人。

すっかりグラントに執心な冥界の最重要人物である。


「あぁ!そういえば今日は兵士の皆さんを見に行く約束がありました!」


ハッとした表情で声を上げるグラント。

兵士たちの願いもあり、時々で良いから見に来てほしいと言われていた。


「別に待たせてもよろしいのですよ?グラント様が最優先ですので。

なんでしたらほったらかしにしても誰も文句は言わないかと。」


アイデスが言うと、向かいのペルセも、その通りとうなずく。

アイデスは、グラント付きのメイドの他に冥界軍団長筆頭という肩書きもあり、中々の問題発言であった。

そんな発言も、支配者たるペルセが肯定している時点で手遅れなのであるが。


「そんなわけにはいきません!早く行きましょう!」


約束を果たすという『常識』をグラントは行動で示そうとする。

奇しくも、常識を教えようとした人物に常識を諭されるとは、皮肉なものである。

グラントは自分のあずかり知らぬところで、冥界の良心となりつつあった。


冥界軍修練場にて


男兵士も女兵士も入り混じり、鍛錬に勤しむ光景はさながら本物の戦場のよう。


神界、そして深海にも『軍』はあるのだが、その中でも冥界軍は特に武闘派が多く、

その背景には、邪魂といわれる云わば悪霊の類と戦わねばならないため、

日ごろから厳しい鍛錬に身を投じていた。


近頃になって、訓練の度合いを強めているのだが、原因は言わずもがなであろう。


「皆さん、お勤めご苦労様です!」


グラントの呼び声に訓練の手を止める一同。


「おぉ!若様!」「若!」「グラント様、よくお越しで!」


訓練を止め、グラントの周りに集まってくる兵士たち。

彼ら、彼女らも城のメイドと同じように、チョロイ組の一員である。


「コラ、これ以上寄られたらグラント様が潰れるだろう。下がれ下がれ!」


アイデスが防波堤になろうとするが、あまり効果はないようである。


「ええぃ!下がれといっているだろう!以前にもこれぐらい訓練をしていればよいものを!

グラント様が来てから、まるで手のひらを返したかのように・・・!」


「そうは言っても軍団長。張り合いの無かったところに自分たちのがんばる気力が現れたとくれば、それは致し方ないことかと思いますが。」


一人の兵士がそういうと、ぐぅ、とアイデスはうなる。

このメイド兼軍団長も同じ穴の何とやらなのである。


そうして、グラントが冥界に現れてからというもの、良い影響を冥界に及ぼしていることは誰の目から見ても明らかである。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、グラントは


『他の神には認知されていない』


ということである。

しかも、これだけ冥界に影響を与えたということは、その変化が他の領域にも知れ渡るということで・・・



神界の支配者、執務室にて


「メイディス様、急遽、お耳に入れたきことが・・・。」


「何?またどこかのろくでもない男神が問題でも起こしたの?

ほんと、いい加減にしてほしいんだけど。」


「いえ、そういうことではなく、冥界に不穏な動きが」


「・・・・不穏な動き?」


「冥界軍の修練の強度が増しており、それも神々の戦争の時に迫る勢い。

おそらく、神界、または深海に攻め入る準備をしているもの・・・と」


「・・・・・・・・・・・・ハァ!?!?」


別の領域には、変な勘違いをされてしまったようだ。

説明が長くならないように合間に会話を入れようとしたのですが、中々難しいものですね。

神の世界編、まだ少し続きます。

気長に見ていただければ

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