第三話
「てめ…何処の…何…った…」
「…子…何処の…どうや…」
「…話すか…たばりやか…」
アベルは誰かの言い争う声で意識を取り戻した
(くっ…身体が動かねえ…血が流れすぎたか…)
アベルが苦しんでいる最中にも、言い争う声は止まらない
「正直に…なくば…なるぞ…」
「ふざ…な…」
アベルの耳に金属がぶつかるような音が聴こえてきた
(何だ…仲間割れか…?)
「何で…何も…たのに…」
「最後の…だ…双子…話せ」
「黙れぇぇぇぇっ!!」
男の一際大きな声と共に駆け出す音が聴こえてきた
そして…
「なら…お前はもう必要無い」
微かな肉を断つ音と共に、何かがどさりと倒れる音がした
そして、一人の足音がアベルに向かってきた
「おい、生きてるか?」
「あ、ああ…あんたは?」
アベルの問に声の主は答えた
「シグ=ブラッド、シグでいい。アーテリー・エスカーとベイン・エスカーを保護しに来た、お前はエスカー姉弟の味方でいいのか?」
「ああ…二人の両親に頼まれたんだ…守ってやってくれって…」
「分かった、ひとまず治療を行う。応急処置になるが構わないな?」
「あぁ…頼む」
今のままでは痛みと出血でマトモに戦えない、そう考えアベルは治療を了承する
「動くなよ、出血は止められるが傷は塞ぎきれないからな」
シグがアベルの傷に手を当てると、たちどころに出血が止まり、傷を覆うように血がカサブタのように凝固した
「あんたも…治療系の〝能力者〟なのか?」
「違う、血液を操作しただけだ、もう動けるか?」
アベルはどうにか力を入れて身体を起こし、礼を言う為シグの方を向く
その目に飛び込んできたのは…
「…なぁシグ、もしかしてお前…」
そこに居たのは白い髪に紅く輝く瞳、驚く程に白い肌の15位の見た目の少年
「ああ、俺はダンピール、ハーフヴァンパイアだ」
「…どおりで強いワケだ」
一人納得したアベルは身体の状態をチェックする
「まだ激しい動きはしない方がいいぞ、血が流れすぎてる」
「…みたいだな、でも急がねえと二人が!」
アベルは歩きだそうとするが、力が上手く入らず転んでしまう
「無理をするな、姉弟が連れていかれた村の場所を教えてくれ、俺が行く」
「…分かった」
アベルはシグに村の場所と行き方を教え、そのまま近くの木を背もたれにして座り込んだ
「二人を…救ってくれ!」
「任せろ」
シグはアベルの声を背に、村へと向かって行った