第十話
「面倒な事になったな…」
〝紅蝙蝠〟越しに一連の出来事を見ていたシグはすぐさまキールの元へ向かう
「キール!緊急事態だ!起きてくれ!」
シグが大声で呼ぶとキールが目をこすりながら現れた
「んん…何ですかシグ殿…」
「悪いが村の皆を起こしてくれ、襲撃だ」
シグのその言葉にキールが目を見開く
「本当ですかそれは!?」
「ああ、ただの賊じゃないぞ、避難する必要がある」
キールは暫し考え込んだ後口を開いた
「そのお気持ちは嬉しいのですが、あくまで避難は希望する者のみにして頂きたいのです。ここは我々の故郷です、簡単に捨てる事など出来ません」
「分かった、ならいそいで皆を集めるぞ、時間がない」
「はい!」
村人たちが村の広場に全員集められキールとシグから事情説明を受ける
「…という訳だ、避難先の安全は保障する。俺としては避難して欲しい所だが…」
「このまま無抵抗で村を明け渡す訳にはいかん!だが、あくまで村に残る者は希望者のみとしたい。」
ざわざわと村人たちの間にどよめきが広がる
やがて村人の一人が口を開いた
「村長!俺は戦うぜ!」「俺もだ!みすみす故郷を捨てて逃げられるかよ!」
「そうだ!」「そうだ!」
結果、この場にいる村人全員が残留する意思を示した
シグは村の防衛の為に移動していると、リアとすれ違う
「…なぁ」
「はい?なんですか?」
「リア、お前はなんで逃げなかったんだ?」
シグの問いにリアは静かに口を開いた
「…私、昔の事、覚えてないんです。1人でいた時にジャックさんに見つけてもらって、この村でお世話になったんです。だから、この村を見捨てて逃げるなんて、私には出来ません!」
「…そう、か」
シグはリアに背を向けて歩き出す
「せめて、自分の命を第一に考えてくれ」
「…」
リアからの返事は、無かった
シグの〝紅蝙蝠〟が敵の接近を捉える
「皆!来るぞ!」
シグの声に皆が身構える
やがて、村の前に5人の黒ずくめが並んだ
「この村の村長は居るか!」
リーダーが声を上げ、それに答える為にキールが前に出る
「私が村長のキール・アライザだ!お前達は何者だ!」
「我々は帝国所属抹殺部隊デスサイズ!俺はリーダーのミッドナイトだ!」
ミッドナイトと名乗った男の言葉にシグが小さく舌打ちを打つ
「また帝国か…」
「我々の要求はただ1つ!この村の〝能力者〟と{亜人種}を全員差し出せ!そうすれば人間には危害を加えない!」
キールはミッドナイトの言葉に答える
「返答は既に決まっている…かかれぇ!」
キールの言葉を合図にデスサイズ一同目掛けて矢が降り注いだ
開戦の時だ