第一部・第二章プロローグ
ある所に、美しい銀髪を携えた少女がおりました
彼女はみんなにとても可愛がられていました
でも彼女には秘密がありました
彼女もまた、生まれ持った力があったのです
それを知った彼女の両親はその事を誰にも喋らない事、その力を絶対に使わない事を少女に約束させました
そうしてこれ迄どおりの暮らしをしていました
ですが、そんな生活は長くは続きませんでした
少女の父親が信頼している知人にこの事を相談したのです
その知人があろう事か少女の事を言いふらしたのです
知人の男は少女の父親に問い詰められこう答えました
「お前の為を思っての事なんだ」
「お前の子供が〝能力者〟なんかになる訳がない、きっと悪魔か何かが成り代わったんだ」
「お前は何も悪くない」と
父親は急いで少女の元へと向かいました
ですが、これまで良くしてくれた知り合い達が彼の行方を阻みます
「悪魔の子はすぐに捕まえる」
「そうすれば貴方の本当の子の仇も取れる」
知り合い達に抑えられ父親は身動きがとれません
「離してくれ!あの子は悪魔の子でも偽物でもない!本当の子だ!」
「可哀想に、きっと悪魔の子に騙されているんだ」
父親は抑えられ身動きをとることができません
その頃少女は知り合い達に囲まれ、そこを母親に庇われていました
「悪魔の子だ」「殺せ」「火炙りだ」
「やめてください!誤解なんです」
母親が必死に説得しますが、聞く耳を持ちません
その時、一人の男が声を上げました
「もういい、悪魔を産み落としたその女も殺してしまえ」
その言葉を皮切りに皆が二人目掛けて石を投げ始めました
「死ね」「死んでしまえ」「悪魔め」
母親は少女を庇ってその身に多くの石を受けました
やがて、一つの石が母親の頭に当たり、母親はそのまま血を流して倒れてしまいました
「捕らえろ」
少女は大人達に捕まり逃げられません
「おかあさん!」
「黙れ」「お前のせいで死んだんだ」「お前なんて」
「生まれるべきではなかったんだ」
少女が目を覚ますと、一人ぽつんと平野に倒れていました
少女は分かっていました
ここは昨日まで暮らしていた場所だと
何も無くなったのは自分のせいだと
誰もいなくなったのは自分のせいだと
母親が死んでしまったのは自分のせいだと
自分は、生まれるべきではなかったのだと
やがて少女は扉を閉ざしました
自分の記憶に、力に、心に…
どれほどの時間そうしていたのでしょうか
やがて少女の元へ一人の少年が通りかかりました
「おい!こんな所でどうしたんだ!」
「…分かりません」
「分からないって…じゃあ家は?」
「…分かりません」
少女の返答に少年は頭を抱えます
「あー?んー…じゃあよ、俺らの村に来るか?帰るところねえんだろ?」
「…分かりません」
「はぁ…」
少年は埒が明かないと、ため息をつきます
「じゃあよ、取り敢えず付いてこいよ、そんで何か思い出したらそん時どうにかすりゃいいだろ?」
「…はい」
「よっし!俺はジャックだ!名前は?」
「…リア」
「リアか、これから宜しくな!」